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力の使い方  作者: やす
三年の夏
410/474

#409~力の被害~


「……ふぅ、、」

「ぅ……」「……」

気心の知れる中年男性二人が近づいて来て、秋穂やその周りにいるジャージ集団、清虹川の向う側等の少し離れた位置でこちらの様子を窺うジャージ集団の皆が剣呑な空気を和らげる。


『ジリッ、』

「えーと……金山さん?”これは”一体どういう事ですか?」

「はい、、」「……いやっ、違うんです!?”先生”!?俺らが言われた事をちゃんとしてたらこの女の人が”突然”現れて」「言うな!?」

「いやいや、事実は言わなきゃダメだろ?」

「いやぁー、俺らが仕事をやってりやぁー、この浴衣ちやぁー、んが俺らにやってる事をやぁー、めろやぁー、ってな感じで言ってきたんやぁー!」

矢吹教諭は再度秋穂に疑問をぶつけるが、秋穂の声に被せる様にして、彼女の隣で上体を浮かせる者や立っているジャージ男達が銘々に声をあげる。

「、、っ……」

また、そんな風に声を遮られた秋穂は”近くにいるジャージ集団の彼らが”矢吹教諭を”先生”と呼ぶ所から大体の所を察した様だ。


「えーと……まぁ、待ちなさい、君たちの言い分は後からちゃんと聞くから……まずは、金山さんの口からちゃんと最初から話して貰えますか?」

矢吹教諭は彼等の説明が”大体で”間違いない事なのだろうと分かりつつ、秋穂に説明を求めている。


「……はい、私は今日、花火を見ようと清敬高校へ行こうと歩いてました。「うん……」ですが、”彼等”を土系法力研究所の辺りで見かけて……”私は”気になったので、スグにあとを追って来たんです。「……」そしたら”彼等は”風系法力と水系法力で、、その、空気中から水分を取り出していて……私はてっきり”彼等が『東の島で”輪の国”を造ったとする者達・仮面ジャージ達の一派なのではないか?』と考えてしまって……少し暴力的な声をかけてしまって……それで”彼等”から見ると、”不振な女が声をかけて来た”と思わせてしまった様です。邪魔をして申し訳ない。”私は”君たちの仕事の邪魔をしてしまった。申し訳ない……」

秋穂は自分の”思い込みな考え”……つまりは、”根も葉もない思い込み”から、彼等を”テロ集団”と思って彼らに話しかけてしまった事を素直に詫びている。

「くっ……」

秋穂は足を揃え、見事な所作で頭を深く下げている。


自分の安直な考えから起きてしまった……いや、”起こしてしまった騒動”の責任を感じているらしく、顔は誰にも見られていないが、眉尻を結構下げていた。それを隠す為に頭を深く下げているのかもしれない……


「はんっ、コッチとしては”はいそーですか”とは言えないんですけど?」

「日和る訳にはいかない……なぜならこのままでは……」

「ふぅん、、実は俺ら……”頼まれてた程の空気”にはまだ出来てないんですけど……”コレ”でも良いんすかね?今から始めてたら、多分、、花火が始まるまでには間に合わないんすけど……」

「へんっ、”報酬が”満額出ないんなら……コチラとしては困るんだZE……」

「ほぅ?「ほ、報酬?」んっ……」

しかし、秋穂の近くにいるジャージ男達は秋穂が謝ったとして、”言いたい放題”と言う様にして口々に不満を言い募らせる。

意趣返しという訳ではないだろうが、秋穂はジャージ男達の内の最後の1人の言葉に被せる様にして彼等の言葉に食いついていた。


「えーと……ぁ、”君に”ならまぁ、言っても構わないか「っ?……」”彼等は”みんな、”虹の子”達でね。それも、高校の卒業生や在校生を中心にして、縁や所縁のある者達にお願いしていたんだ。「……虹の子たち?」うん。こう言う”お手伝いの仕事”を時折お願いして、”お駄賃”を渡してるんだよ。”お手伝い”の結果いかんによって支払われる額が変わるんだ。「……」ほら、君の所にも居ただろう?えーと、ほら女の子の……」

矢吹教諭はジャージ集団がココでやっていた事の説明を始める。また、”秋穂ならば”……いや、”金山家の人間ならば”分かるだろう口ぶりだ。

「……いえっ、分かりました……そういう事なら、、、私が”代わり”に何とかします。」

しかし、秋穂は矢吹教諭の言葉を途中で止めて”代役”を引き受けていた。


「……えーと……、、まぁ、分かってくれたのなら良いんだけど……」

矢吹教諭が言おうとしていた”女の子”とは、紛れもない”凪乃”の事だ。

かくいう凪乃も”去年”、この花火大会の日に清敬高校で”お手伝いの仕事”に参加していたのである。

……まぁ、凪乃は”高校の屋台”の方に駆り出されていて、まさか、高校の外でもこんな”お手伝い”があるとは知らなかった様子だが……


「ふぬっ!……くっ……」「っ?」「「「「「「「っ?!」」」」」」」

ソコで、一人の男か額に汗をにじませながら苦悶の声を洩らす。

突然な声にその場にいる者達は皆、驚いて声の主に注目していた。


「……ゅ、ゆえに……もう、、大丈夫か?……”これは”自分の未熟、、ゆえに、少し休憩をしたく……そうろう……」「あっ!」「あー、草山くん……」

苦悶の声のあと、そんな事を言うのは秋穂の目の前に立つ白い道着を着る男性・草山だ。

彼は素手で水の弾丸を弾いていたが……彼の右手は赤く腫れあがり、見たかぎりでは無傷とは言えない様子である……

「……あー、、多分、、骨に(ひび)でも入ってそうな感じだね……」

彼の師匠らしい高山は彼の赤くはれた手の診断を予想交じりにしている。


何という事か……秋穂の前に割って入り込み、壁になった草山は怪我を負ってしまっている。

……彼が怪我を負っていなければ、まだ何とか”被害なし”でこの騒動を収められていたかもしれないが……

もう既に”後戻り”出来ない事態にまで発展してしまっていた。


「……」

ちなみに、草山が素手で打ち消した”水の弾丸”を放ったジャージ男子は幾分か冷静に事態の推移を見守っている。


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