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力の使い方  作者: やす
三年の夏
406/474

#405~力の邂逅?~



『ガチャガチャ……』「っ、、」

秋穂や春香達が道を歩いていると、彼女達の後ろから何かがカチ合う様な音が小さく鳴った。

「……風間さん、牛乳のポーチ、私が持とうか?「、、いっ、いえっ!大丈夫です。お騒がせして申し訳ありません。」いや、騒がしい事なんて勿論ないよ。手が疲れたら言ってくれれば持つのを手伝うから。」

秋穂達は全員が顔を向けてその音源を見るが、音源に一番近い者に声をかけたのは秋穂だけだった。

しかし、音源に一番近い者である凪乃は秋穂の申し出を断り、皆の気を引いてしまった事を謝るも、秋穂は優しく言って聞かせる様にしてから顔を前に向ける。


『ザッ、ザッ、……


「んっ?あれは……」

秋穂は”凪乃が持ってくれている皆の飲み物を代わりに持つよ”と言うも、一度断られたぐらいでそれほどしつこく言わなかったのには理由がある。

凪乃が一度”こう”なってしまうと、秋穂が何と言っても、”猿の銭湯”から借りてきた牛乳瓶が8本も入っている見た目よりも大分重いポーチを持たせてくれる事は無いだろう。

また、秋穂は顔を前に向けた所で、何やら気になる物を視界の端に見つけていた。


……ダダダダッ……


「……風間さん。」

前に向けた視界に一瞬でも無視出来ないモノ達を捉えた秋穂は声の性質を変えて凪乃に囁きかける。

「はいっ、なんでしょう?」

凪乃は、秋穂の声がこれまでとはまた違った性質の声音なのを理解して”今度こそは勘違えない様に!”と返事をするのだが……


「申し訳ないんだけど……ちょっと”お手洗い”に行きたくなってしまってね。”君たちだけ”で先に高校へ行っててくれないかい?」

「っ、、、一応、、、清敬でもお手洗いを使えると思いますが「いやいや、申し訳ないけど……実はそろそろ我慢の限界なんだ」っ!?……なっ、ならっ……私もご一緒しますので……」

なんと、秋穂はもよおしてしまったらしい。

凪乃は顔を瞬時に赤らめつつ同行を(こいねが)うのだが……

「いやいや、それじゃあ清敬に行くのが春香達”だけ”になってしまうよ。私を待っていたら時間も遅くなって良い場所も取られてしまうし……だから私としては、”風間さん”が春香達の面倒を見ていて欲しいんだ。」

……秋穂からは”春香達の護衛をするように”と言い渡されてしまう。


今土旗商店街から清敬高校に向かう途中でだと、秋穂や春香の身を守る事が出来る者は凪乃一人しかおらず、金山家の娘である二人が一時でも離れてしまうこんな状況ならば、凪乃としては”春香に付く”以外の選択肢はありえない。

と言うより、秋穂は凪乃よりも法力や戦闘力が上だ。

実際に有事の際に二人は”守り・守られる”と言うよりも、”肩を並べて悪漢を倒してきた”ので、凪乃が秋穂との同行を執着するのは個人的な趣向に他ならない。

さらに春香はついこの前まで数週間程度でも誘拐されてしまっていた身の上だ。


本来ならば今日みたいなイベント時なら、凪乃の父親である風間景が二人の護衛に出張ってくるシチュエーションだろう。だが、残念ながら景は四期奥様と賢人市長夫妻に張り付いている。

金山夫妻の二人は今現在安全な金山邸にいるが、そんな”セキュリティバッチリの家にいる”だけでは景が四期奥様の身の安全を守らない理由にはならないだろう。

そう、”春香や秋穂”の身の安全は、今日この屋外に限って言えば凪乃に任されているのだ。しかし凪乃個人としては困った事に、秋穂は凪乃よりも数段強い。

「……分かり、ました。……ですが、何かあれば秋穂お嬢様が対応される前に、”必ず”私に一報を下さい。「うん。勿論。」では……お気を付けて。」

「うん、ささっと”終わらせたら”すぐ”そっちに”行くからね。」


こうして秋穂は、清虹市を一応は分断する清虹川が水路として整備され始める地点で東に単身走り出して行った。

彼女等が土旗商店街から清敬高校に行く途中の大体で中間地点での出来事である。


ちなみに、清虹川は清瀬小学校の西にある清虹自然公園を通ったあと、地中に隠れるようにして地表からは川面が見えなくなるが、土旗商店街から清敬高校方面に20分程度歩いた地点で川の水が地表に姿を現す様に地域開発されている。

今現在の清虹川が地表に出てきたところからは人工的に作られた河川で、川の氾濫等は清虹市が今の形になってから今まで記録されていない。

この清虹川の途中から人工的な水路へと変貌させた工事を手掛けたのは、言わずと知れた金山家の企業・ゴールドラッシュだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


「っく……」

秋穂は走っていた。

茶色い浴衣に身を包むも運動靴を履いて来た彼女だが、普段とは違って身体の所々の布が揺れたり着擦れる事に慣れない様子だ。

「……そろそろ行かないとまずいな……」

彼女は決して”お手洗い”に行くのを我慢している訳ではない。

「……まぁ、こっちで助かったけど……」

彼女は土旗商店街から清敬高校に行く途中、おおよそ土系法力研究所近くで”とある集団”を視界に収めて彼らを単身であとをつける様に追ってきている。

「……あのジャージって……あの集団だよな?……」

彼女はこれから清敬高校で、南の空に打ち上げられる花火を見るのに移動していた所、同じ柄のジャージを着る集団を見かけて追ってきていた。

彼女は”後顧の憂い”として気になっていた”仮面ジャージ集団”を駆逐せんとしているのだ。


これ以上”奴ら”に好き勝手をさせるわけにはいかないのである。

「……まぁ、”高校”近くだったから、まだ良いが……」

既に辺りは暗くなり、追っている集団が着ているジャージの色や顔まではしっかり確認出来ていない。

さらに言うと、秋穂が現状でマトモに使える法力は”土系法力のみ”だ。


……それを含めても幸いな事に、秋穂が追う”ジャージ集団”は清敬高校の東がわ通路を通って正門の北を通り過ぎ、清敬高校の東にある道路から南にある通路を経由して、高校の西・水路化している清虹川にまで来ている。

もう既に秋穂は清敬高校の南通路を通り過ぎて”彼等”が集まっている場所まで移動して来ていた。

いざ彼らと戦闘状態になったら相手の武器を奪ったりすればいいし、武器の無いジャージ集団相手ならそうそう簡単にやられはしないだろう。

また、少し戻れば”土場”も清敬高校敷地に沢山ある。

いざと言う時は秋穂も色々と応援を呼べるだろう。


「んっ?」

「「「「「「「……(ウィンド)生成(ジェネレーション)!」」」」」」」『ブォォォ……』

「”風を吹かせた?”何を始めるんだ?……」

秋穂がジャージ集団から少しだけ離れた位置で彼らの様子を伺っていると、遂にその”ジャージ集団の一部”が風系法力を発現させる。

「「「「(ウォーター)生成(ジェネレーション)!!」」」」

『『『『ジャボジャバジョボ……』』』』

「……空気中の水分を集めて川に流してる?」

また、先の風系法力を発現させなかった残りのジャージ集団が、今度は空気から水を生成させ始めていて、清虹川の水路にその水を流し込んでいた。

「……なんでそんな事を?」

今夜、彼らがやっている事は全くもって危険な事ではなく、法力の規模や法力を発現する人数から考えて、間違っても事故や危険な事は起こらない事象だ。

この程度の事ならば……

「もしかして……ここらの湿度を調整しているって言うのか?」

……そう、この地一帯の湿度を下げる慈善事業の様な行いをジャージ集団はしているのだ。

それも湿度が下がるのはこの一帯だけで、数時間もすれば回りと同じ様にある程度高い湿度に戻ってしまうだろう。


「うん、、ジメっとした空気だったのが……風が肌を()ますように心地いい空気に変わっていく……」

実感として秋穂は、川のすぐ横と言う事もあるが、体感温度等も関心する様にして心地よい空気に変わっていく。

「……まさか、心を入れ替えたとでも?……それとも、”これまで”とは状況が違ったりするのか?」

まぁ、彼等”仮面ジャージ集団”は”防人部隊”の人間だったのだろう。彼らは海を東に越えた所で国を作っているハズなので、”その国”にまで行かなかった面子は”清虹市の人々に良い事をする慈善事業団体”にでも変わったのだろうか?……それならば秋穂が一人、ここまで出向く必要などなかったのかもしれないのだが……



「君たち!!そこで何をやっているんだ?」「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」

そんな事まで考えた秋穂は思い切って大声をだす。

高校のすぐ横を通る清虹川(ここでは水路状態)の向こう側とコチラ側に集まっているジャージ集団に接触を試みるのであった。

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