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力の使い方  作者: やす
三年の夏
403/474

#402~船?をとめるのは力~

#398~力をとめるのは誰ね?~のBパート的お話し……とはどう考えても違いますよね……

誰ね?

Whoフーね?

フーね?

船?


「ブォォォ……」

「カンカン……」

大きな船が一つ、”とある島”に訪れる。


その島は”へ島”、六ツ子島の第六の島である。


『ガヤガヤ……

”六ツ子島”の様子は様変わりし、およそ二か月前の”無人島状態”から比べると、かなり”人が住まう島”へと変貌していた。

……あぁ……

”へ島”の南西側には港が置かれ、六ツ子島の外から訪れる人の玄関的役割があるようだ。

”へ島”の中心から北東には北と東をつなぐ通路があり、コンビニや高層ホテルがいくつか建ち並んでいる。

……っ、……』

通路は隣の”イ島”と”ホ島”へ行ける結構な広さの海上通路が存在していて、人の行き来等は自由な様子が見て取れていた。


『ブォ!』

この島を占領して大体ふた月程度経った今日、”六ツ子島”改め”輪の国”には初めて正式な船が停泊する。



『カチャン!』

『バッ』

”へ島”の港にある船着き場で、人の行き来ができる通路を隔てる扉の施錠が開かれる。


「「ソコウヨッ、ヘトゥー!」」

港の職員らしい恰好をしている男性が、今しがた開いた通路の港側でよくわからない言葉を発して船から降りてくる者達を出迎えている。

「そ、”そこうよ”?……え?……何語?日本語じゃ?」

船の奥から顔を出してきた中年男性が、職員らしい男性の言葉を聞いて、足をとめてしまっている。

「あっ、いえっ、”島へようこそ”と申し上げました。この”へ島”限定のお出迎えの言葉です。お気になさらず。」「えっ?あっ、はいっ……」

ワイシャツにスラックス姿の職員然とした男性は始めに発した言葉を説明して船から出て来た中年男性の誘導をし始めていた。

バックパックを背負い、幾分か軽装な中年男性は気を取り直すようにして歩き出す。


「っ……」「ソコウヨッ、ヘトゥー!どうぞお次のかたーこちらへお越しくださーい!我々”輪の国”は最初に観光へ訪れた勇気ある皆様を歓迎致します。」

夏の恰好な職員らしい男性は船の中に向けて声を出し、いまだ顔を出そうとしない乗客達に目を向けて歓迎の言葉も向けている。

「……っ……」

対して船の中にいる乗客は他の者を牽制するようにして動けていない。


「……本当に大丈夫なのか?……」

「皆さんの身の安全は保障いたします。また、勇気ある皆さんにお礼として、滞在中の飲食やホテルの料金はその殆どを頂きません!皆さんの身の安全は我々の命を懸けてでもお守り致します。どうぞ”輪の国”へお越しください。」

港の発着場で大声を出すその男性はどうやら、太平洋上に浮かぶ”六ツ子島”でふた月程前に防人部隊が建国した”輪の国”の者らしい。

その男性は30歳程度の見た目をしている。声や肌の艶等、顔色はとても良いように見えていた。

「……よしっ……」

船の乗客に声を向けつつ柔和な笑みを浮かべる職員らしい男性は、とても小さな島ですでにふた月ほど生活していたようには見えない身なりをしている。顔の血色も良い。



「……んっ?!」

先陣を切って”へ島”の港に降りた中年男性はすでに港を出ていこうとしている。


「……行くぞ……」

いまだ船内の出入り口内・暗がりで外を伺う者達が息を飲んでポツポツと歩き出すのに時間はそうかからなかった。




”輪の国”を造ったとされる”防人部隊”は

清虹市周辺の海域から出現した大きなメガフロート然とする構造物を移動させて太平洋の沖に出発した。

そのメガフロート然とした船は特に届け出があった物ではないし、同時期に動画共有サイトに挙げられた動画から”日本国民の安定を揺るがしかねない”として、海上自衛隊等が拿捕しようとするも、主に海上自衛隊の護衛艦の”整備不良”が原因で彼らの身柄拘束は出来ずじまいで逃してしまっている。

その後日本政府は彼等を”テロ組織”として認定していたが、コレと言って損害はなく、むしろ彼らが提供する海鮮資源や法力に反応する鉱物資源は無視する事が出来ずに資源の交換を契機に交流が始まっていた。

それも、早いうちに交流をする国や地域、はたまた個人は”無償提供等をしてくれる”と言う”客引き”を行っていて、主に日本にある企業や団体等は優先的に声をかけられていた。


軍事的な衝突も思ったよりは起こっておらず、現状で”輪の国”がすぐに戦禍に見舞われる事も無いだろう。

もしも”輪の国”が多くの国や地域で認められれば、日本語を母国語とする日本以外で初めての国が造られる事になる。

その事実や”輪の国”での豊富な資源を夢見て、内心は”移住してみても良いな”と少しでも思う日本人は潜在的にだが意外と多い。


”輪の国”の六ツ子島は、六つの島を領地としているが、それぞれで特色を持って開発が進められている。


・イ島は島全体を一つの建物で占有していて、着々と階層を上に増やしている。

”輪の国”の国民全員が暮らす共同住宅で、床や天井・壁……そのどれもが取り外し出来る造りになっていて、多少の衝撃を受けても建物が崩壊しないような材質を使って設計されているそうだ。

壁を増やしたり外したりも簡単に出来るらしく、骨組み等は構造力学等の計算がされている。

建物の名前は無いが、建物込みで”イ島”と呼ばれているらしい。


・ロ島は島全体に道が造られているが、今あるのは道と小さな店舗ぐらいで、これから増やしていくらしい。

ただし、島はある程度の高低差があるので、道の全てを一望出来る事はないらしく、下手に足を踏み入れると道に迷うそうだ。


・ハ島は建物や畑が造られていて、外周部の北側は砂浜になっている。道もちゃんと作り込まれてはいるが、まだまだ開発が出来る状態になっている。


・二島は一見すると特に何もない岩肌が目立つ島だが、一応は小さいがいくつか建物がある。

一見すると六つの島の中では一番開発がされていない島だ。


・ホ島は建物や畑、牧場等があり、この島々の食料のほぼ全てをココで生産するそうだ。

防人部隊の者達が持ち込んできた動物や植物がいるらしく、二か月程前にこの島が開発されたわりに既に農作物や家畜がある程度の大きさになっている。


・へ島は上にも挙げたように港と訪れた者が利用するホテルとそこに住まう者が利用する飲食店や簡単な買い物が出来るお店が建ち並んでいる。


…………

……


この島々を防人部隊の者達が占拠した頃、日本政府は彼らをテロ集団としたが、海流的に見ても日本の水産資源に影響を与える事もなく、また日本の領土とは言えない島々を占拠している彼らを”どうにかする手段が日本にはない”事もあり、特に何かするでも起こる事もなかった。

むしろ法力に反応する鉱物を拠出してくれると言う事で、半場彼らを黙認する形で静観していたのだ。

日本に利する形で”軍事活動をする”と言うのも当初は日本を批判する国もあったが、六ツ子島と言う、周りに身を隠す遮蔽物がない立地もあって、その国は六ツ子島を占拠する彼らにどうする事も出来ずにいる。

一応は今の所彼らの”軍事活動”は予定も含めて発表されていない。



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