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力の使い方  作者: やす
三年の夏
400/474

#399~力が返ってくるのは弱点?~


「…………でっ?!……あんた今清虹カードは持ってるの?「いやっ……いまは」あーそうですか!……無いって言うなら”顔写真”で記録させて貰いますけどそれで良いんですね?……言っておきますけど”カードが無いって言う方”が記録は長く残りますよ?……まぁ、何か理由があったって言うのならその話を聞いてからどうするか考えますけど?」

「いっ、いやぁ……あのぅ、そのぅ、、男の人達が……」

プールサイドにはビーチチェアが設置されている。”その上”で黒のビキニ水着姿な飯吹は正座をしていた。

そんな飯吹へ大声を出すのはこのプールに配属されている”監視員”で、その”監視員”は歳が40歳以上な見た目の男性だ。

その監視員は、さきほど飯吹がプールサイドから小学生の低学年ぐらいな女の子をプールに投げ入れた事を怒っている。


「ぶーぶー……”鏡”は泳げるし、悪いのは”あっち”だし……」「いやっ!?朝子ちょっとタンマ……」

しかし監視員が飯吹を怒るのはマトハズレだとして、飯吹の隣にいる青色水着を着る朝子が不平の声を洩らすのだが、飯吹は朝子の言葉を止めようとしていた。

「ん?キョウ?って……あぁ、あの投げられた女の子だね?君はお友達かい?ん?……”あっち”って何の事?」

飯吹を見つめていた監視員は、朝子の言葉を聞いて、状況の把握に努めようとしている。


「まぁ、ともかく……この”遊泳プール”は人工の波がいつも作られてて、泳げる子でも溺れちゃう事もあるし……”溺れる”まではしないでもウォータースライダーから出てきた人とぶつかったりして、歯が折れちゃったりする子もいるんだからさ!……プールに来てふざけるにしても、何が危険で、どうなるかぐらいはちょっとは考えなさいよ?!「はい……すみません……」じゃあ特に理由もないって事みたいだし、”危険行為をしたとして、貴女に”イエローカード”を提示します。「うっ!」一定期間以内の間、次にココや学校関連施設で”危険行為”を働いたらレッドカードを提示します。そしたら”ここ”や市の施設でサービスの利用を制限されますからね!」

ブーメランタイプな水着を身に着けている監視員は、彼の腰・水着パンツの側面に指を入れて、若干小さ目な黄色いカードを提示する。

また、彼の”イエローカード”を持つ手とは反対の手には携帯端末が握られていて、今度はそちらに目を向けていた。


市や清敬学校の敷地で、”犯罪”とは言えない程度の逸脱行為を働く”大人”にペナルティを科す施策がある。

「ほら、一応聞きますけど、、名前は?「飯吹金子と申します……」はいはい……」

監視員の男性は携帯端末を操作してカメラを起動し、目の前のちょっと高い位置で正座する飯吹と、彼が手に持つ”イエローカード”を合わせて一枚の写真を撮るつもりのようだ。


偽名を言われてもその確かめようはないが、飯吹に自己申告で名前を言わせている。

”清虹カード”には本人確認の写真が保存されていて、その写真データは市のサーバーでも保管されている。

つまり、顔の写真だけでも清虹市に住む者なら身元の特定が出来るようになっているのだ。

一応は市の職員等がそれら個人データの悪用は出来ないシステムが取れられている。


「えーと、”飯吹金子さんは女児をプールに投げ入れる危険行為を働いた”ので、イエローカードを一枚提示と……」

「あっ、あのーすみません飯吹さん……”コレ”……」

ついに飯吹の写真が監視員に撮られてしまうところ、ビーチチェア上で正座をする者に救いの手が差し伸べられる。


「ん?……」

それは今も両手にコップを持っている斉田だ。

『……”こっち”は自分が持っておいた方がいいですかね?』「あっ……ぅ……ぅん……ありがとう」

今日も今日とて彼は飲み物を運んでいて、カラフルな液体がなみなみと入れられているコップを両手にそれぞれ持っている。

ちなみに飯吹が先ほどまで飲んでいたジュースと同じ飲み物だが、彼が今持ってきたコップにはストローが刺さっていた。


「じゃ、じゃあ……”こっちのジュース”は俺……の方で、”朝子ちゃん”に渡しておきます……」

斉田は右手で持っているコップを飯吹に渡している。

また、左手ではコップの他に、虹色に光るカードを持っていた。


「……貴方達はこの人と一緒に来た人ですか?」

斉田は左手に持つ”こっちのジュース”と”虹色に光るカードの清虹カード”を監視員の男性からは見えないようにしている。

監視員の男性は斉田にも話を聞こうとしているのかもしれないが……


「あぁ、はい……何か今”逃げてった”男の人が五人いましたけど……そっちの話は聞かなくていいんですか?」

「ん?逃げて?とは?……」

斉田は絶妙な言い回しで監視員の注意を引き付ける。

監視員の男性は斉田の言葉を聞き、彼の視線を追ってプールの出入り口に視線を向けつつ斉田に話しを聞こうとしていた。


「……あの、俺”見てました”けど……さっきココから出ていった男の人達が彼女をお昼ご飯に誘ってて……つまり、その人らは”ナンパ”してたんですよ。」「んっ?ナンパ?」

斉田の言葉を引き継いで監視員に報告するのは、いつもとは違って言葉少なな甲花である。

しかし、彼は少しだけ”嘘を”吐いている。いや、嘘とは言えない程度の事なのだが……


「ほら朝子ちゃん、カナちゃんが買ってくれたジュースだよ「はーい!」ちょっとコッチで飲んでようか……」

斉田は手に持っている飯吹の清虹カードを隠しながら、ジュースを朝子に渡してそれとなく移動する。


「ええ。男五人で……結構危ない雰囲気の人だったから……あの子が怖がっちゃって……それに気づいた飯吹さんが咄嗟にプールへ逃がしたんです。……”全部見てたんで”間違いないです。今からでもその人らを追って話を聞けば分かりますよ。あの感じだと早く追わないと逃げられちゃいますけど……」

「……ま、まぁ……確かに……小さい女の子にしてみれば、知らない男性五人に囲まれたら怖いでしょうけど……」

甲花はプールをひと目見て、ついでに離れていくもう一人を見てから飯吹が鏡をプールに投げた事情を説明した。


「……で?さっさと追わないと逃げられちゃうよ?それでも良いの?」

そんな”彼らの”連携プレイを見ていた女性が監視員に言葉を掛ける。

「げっ!?妃さん!?……」

監視員の男性は妃さんを見つけると、冷や汗を浮かべる様にして驚きの声をあげるのだが……

彼はどうやら猿野妃とは旧知の仲……と言うか、彼女の周到さ等をちゃんと理解しているのだ。

「ふーん、自分はプールサイドで逸脱行為を働いてた男達をみすみす逃がしておいて、別に悪くもない女を捕まえて問答無用に写真を撮って……アンタもイイ身分になったモンだね?」「……いっ、いやっ……そのっ!……そういう事情があったのなら、、勿論イエローカードは取り下げますけど……いやっ!写真も別に変な事に使われる訳ないですし……」

妃さんは監視員の行いを批難している。

彼としては間違っても飯吹の写真を撮りたくてカメラを向けていた訳ではないが、体裁的には監視員の方が不利な状況だ。


『ジャバッ!』「カナちゃーん!!すごーい!?もう一回”この前みたい”に鏡を投げて~」

「……えっ?”この前”って?」「鏡!待ちなさいっ!貴女はまたお母さんの言いつけを破って!なんて事をしてるのっ!?」

監視員の男性が言葉に詰まっていたところ、遂にプールから返ってくる者がいる。

男性の言葉に被せる様にしてその”プールから返ってきた”少女を叱り飛ばす女性もいた。


「ほら、歳は三十ぐらいで語尾に”っす”って付ける男五人だよ。さっさと追いなさいよ?……本当にアンタは昔から愚図だね?」

そして逃げた男の特徴を言いつつ、監視員の男性を愚図呼ばわりするのは妃さんである。

そんな事を言われてしまった監視員は『っく……もしもし?今そっちから更衣室に向かって男性五人を……』と携帯端末の通信でどこかへ連絡しながら、足早にプールの出口に向けて走り始めている。


「五郎!「にゃ……」アンタは昔ココでアルバイトをしてたね?「……ぅ、ぅん……」なら代わりが来るまで監視員の真似ゴトでもしてな?」「……にゃあ、、」

妃さんはいろいろと気を回せる女性だ。

どうやら三夜は昔、この総合体育館のプールで働いていたらしい。


「ほーら……鏡の分のジュースだよ~」「えぇー!?」

どうやら飯吹達は今日、昼食を食べるのが少しだけ遅くなるようだ。





「「「「「「……」」」」」」

『ピュ……』

場所は変わり、そろそろお昼ご飯時である。


『……テイクユアマークス……』

飯吹達は場所を少し変えている。

それまで彼女達がいた遊戯プールとは違い、水面は静かで泳ぐコースを隔てるコースラインが五本ある競技用25mプールだ。

そのプールではスタート台が設置されていて、泳ぐ者がプールの水にずっと浸かっている事はあまりない。


『……プッ!』

これから泳ぐ者がスタート台に立ったり、プールの中で端に浮かぶと、自動的にスタートの合図が鳴り響くように設計されている。


『『『『『『バッチャンッ!』』』』』』

今、そのプールに飛び込んで泳ぎ始めたのは全員が一緒にココへ訪れている者達だ……


第一のコース・飯吹金子

第二のコース・立花喜乃

第三のコース・斉田三矢

第四のコース・甲花甲六

第五のコース・三夜五郎

第六のコース・猿野由美


『……ジャバ!ジャバ!「っぷぉ」ジャバ!「っぷぉ」ジャバ!ジャバ!「っぷぉ」ジャバ!、バシャ!「っぷぉ」バシャ!……』

『……チャポン、ジャバッ……チャポン、ジャバッ……チャポン、ジャバッ……チャポン、ジャバッ……』

『……ジャバッ、ジョボッ、ジャバッ、ジョボッ、ジャバッ、ジョボッ、ジャバッ、ジョボッ……』

『……ジャボジャボ、ゴッ、ジャボジャボジャボジャボ……ゴッ、ジャバ……ゴッ、ジャバ……』

『……ジャボジャボ……ジャボジャボ……ジャボジャボ……ジャボジャボ……ジャボジャボ……』

『……ジャボン、ジャバン……ジャボン、ジャバン……ジャボン、ジャバン……ジャボン、ジャバン……』


……と言う感じに、それぞれがそれぞれの速さでコースを泳ぎ進めている。



「……」「お母さん速ーい!」「本当だね?由美となかなかいい勝負してるじゃない?」

プールで泳ぐ六人を見るのは、つなギーズと妃さんの三人である。

その三人は傍から見ると、お祖母ちゃんとその孫達に見えるだろう。


「……”みゃごろ”が一番速いかも?!」「確かに……あれっ?でもカナちゃん……大丈夫かな?あれ……」「んっ!?確かに……傍から見てると溺れてるようにしか見えないね……」


彼女達は三夜と喜乃、猿野アナの三人の誰かが一番になるだろう事を予想するのだが……意外な事に飯吹は盛大に水を『バシャバシャ』してる割にあまり進んでおらず、息継ぎもいっぱいいっぱいな様子を見抜いていた。


……まぁ、飯吹は水の抵抗が一番あるだろう事を鑑みて、溺れる心配はすれど 以降はそれほど話題には挙げないのだった。

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