#3~力の事象~
行間を少し付けました。
「はっきり言っておくぞ!」「何?」
勝也は下校時に隣を歩く女子生徒に釘を刺す。返す言葉は鋭い。
「俺はお前の召し使いでも!お世話係りでも無いの!俺の力は困った時だけ!医者か、それに近い人の指示が有ったら法力を使って良いって認められているわけ!!」
勝也の弱冠声量を抑えた叱責に春香はこう返す。
「分かってるわよ……『救急医師補助師』の資格でしょ?法力医師関係者の法力無免許者が持つ……そういえば勝也のお父さんとお母さんは最近いつ帰ってきたの?」
春香の返しは効果絶大で赤い顔の勝也は冷や水を掛けられたように青ざめる。
「いや、昨日は……ちゃんと帰ってきたよ……」
「ふーん?いつ?」
「……夜の11時だけど…」
「それは昨日とは言えないよ?ほとんど今日じゃない!!」
「……仕方ないだろ!!法力医師は沢山の人を救えるんだから!!子供の俺が良いのなら良いの!!」
「あのねぇ……いや、確かに救える命の数を出されたら『間違ってる』とは言えないけど、それ育児放棄って言えるんじゃないの?厘ちゃんだって……」
「あーーもうこの話は終り。良いったら良いの!!」
勝也の両親は法力免許を持つ医師である。その力の有用性は凄まじく、特に水系、土系の法力はそのまま患者の生存率を高める。
国は法力医師の育成に力を注いでいるが、その難しさと生まれ持っての法力総量が物を言う現段階では日本に法力医師は数十人というレベルである。
その人数を当面の補充、災害時の医療現場維持の打開策として勝也のような法力専門の補助師資格が発足された。実際は補助師の質にバラツキがあり、『無いよりはマシ』と言う感が拭えない。
「で?今朝の秋穂お姉様の誘いはどうするの?」
「へ?誘い?……ってご馳走か……そっか、家の内情はバレバレか……」
「あったり前じゃない!あんたが近所のスーパーに毎日顔出して、近くの病院を調べたら、あんたのお母さんが毎日何処かで活躍してんだもん!」
春香は少しヤケクソ気味に続ける。
「厘ちゃんはあんまり見かけないけど!そんな感じを少しも見せないあんたの姿を毎日見てれば少しはし、ぱ………」
春香は口ごもりながら顔を真っ赤にさせる。ようやく言葉を出せば…
………
「『厘ちゃんどうしたのかな?』って心配になるじゃない!!」
………
「何でお前が家の内情をそこまで知ってるのか逆に心配になるわ!!」
勝也が黙っているかと思えばこう言い続ける。
「まぁ、厘と最近……話が出来ていないから良い契機になれば良いけど……てか、厘も良いんだよな?ご馳走って……」
勝也が最近抱える懸案事項を聞き、満面の笑みを持って春香は答える。
「当たり前じゃない!!むしろ厘ちゃんをお留守番にさせたら私達があんたの家の厘ちゃんをもてなしに行くわよ!!あんたを家に置いて!」
さんざんな会話に毒気を抜ききられ、疲れたように勝也はこぼす。
「金山お嬢様の相手は大変だな…普通、病院に確認とか出来ない事なのに……」
ひとまずは勝也の家を目指す二人。