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力の使い方  作者: やす
三年の夏
391/474

#390~力は見てない?~



『プォ!』……ジョボジョボ……ジョロジョロ……

(スター)(フラワー)風台店の一角では、そこに集まった者達が天を見上げている。

時間は既に夕飯頃だが、ソコにいる箸を構える者達は目に見える限りでは減っていた。

「「「……っ……」」」

時折そうめんが流れる七つのレーンにはそれぞれ人がいるが、全てのレーンで最大数の八人ではなくなっている。

とは言え、『夕飯としてそうめんを食べたい!』と訪れている者も少しばかりいて、昼からずっと参加している者はいなかった。


……ジョボジョボ……ジョロジョロ……

「ほっ!」『チャポ』『ポチャン』『ジュルジュルジュルジュル!』「……っ、うむうむうむ…………っ、うん、旨いっ!……でも流石に飽きてきたなーーー……はぁ……」

いや、やっぱり飯吹は休むことなくそうめんを(すす)り続けている。

と言うより、昼からずっとの約六時間をフルで食べ続けているのは彼女だけだ。


「……っぷぅ!」

人目も(はばか)らずにゲップをする飯吹のお腹は目に見える程に膨れ上がり、彼女を最近見ていなかった者なら彼女が”妊婦”であると間違えそうな状態であった。

「ぅ……流石に食べ過ぎたな……」

彼女は自身のお腹を見下ろして、大きな山が”三つ”身体の前面に出来上がっているのを気にしている。

「……っ……ぁ!?、っ゛……駄目だコレ……まずぃ……」

かなりお腹が膨れているのが気になり、お腹を引っ込ませようと試みた飯吹だが、”それを”する事で口から何か出てきてはイケナイ空気と音が漏れ出てきて咄嗟に口を手で抑えている。

『ザワザワ……、……大丈夫か?あの人……、……食いすぎじゃね?……、馬鹿な事をするから……、ん?あの顔どっかで……」

フードコートの隣の空間は仕切りで区切られているが、その仕切りは簡単に越えられる程度の高さしかなく、スタフラに訪れている人々はその”空間でそうめんを食べ続ける者達”を見て口々に好き勝手な事を言ってざわついていた。


もう既にここの奥にある”待合所”で胃を休めていた者もほとんどが帰宅していて、”そうめんを食べ続ける者達”は片手で簡単に数えられる程しか残っていなかった。



「へぇ……あれが”流しそうめん”?初めて見た……「お?!”流しそうめん”?……そういえばやった事は無かったね?……どうする?試しに晩御飯としてやってみる?今日もパパ遅いだろうし?!」いや、いいよ、別に……」

そんなスタフラ風台店の一角で行われている”イベント”を見て、二言三言の話しをする母娘(おやこ)がいた。


「えー?どうせならやってみなよー?案外面白いかもよ?「……ええ?……ママがやってみなよ……」え?茉奈はやらないのに、ママ一人でやれって言うの?」

「……うん。」「えー?ひっどーい、茉奈はママ一人で”あっちに”行けって?「うん。」え?……じゃあママもいいよ……」

その母娘は”流しそうめん”を”物見湯残的なモノ”として捉えていた。

しかし、娘の方はあまり気乗りせず、むしろ母親の方が”やってみたい!”と言う気持ちを顔に張り付けて話している。

その母親は娘を相手にしているとは言え、娘よりも子供っぽい物言いをしていた。


「っ?ぁ、女の人もやってるんだ……っ、パパは?今日いつ帰って来るの?」「……知らなーい、特に聞いてないから……いつもと同じぐらいなんじゃない?」

その娘は、レーンの一つに女性がいるのを発見すると、今日は父親が仕事から帰る時間を確認している。

だが、母親は娘に振られたからか、適当な感じに言葉を返していた。


「……んっ?あれは……もしかして……」『プォ!』……ジョボジョボ……ジョロジョロ……『チャポ』『ポチャン』『ジュルジュルジュルジュル!』「……っ、うむうむうむ…………」

「……っ?!すごっ!?……あれ?……いや、ママ!”あの女”の人見てみてよ?」「こらっ、茉奈、あんまりそういう事を……あっ!?」「……あっ?!」

飯吹がフードコート横を通る者に視線を向ける。何かに気付いたらしい。

彼女は決まって流れてくるそうめんの流れ等を全て理解しているらしく、”流れてくるそうめん”を一切見ずとも箸で掴み、麺つゆに浸してから啜ると言う、常人離れの所業を行っている。


母娘の内のまだ幼いと言えるだろう娘は飯吹の離れ業を見て驚くも、飯吹をどこかで見た事がある者だと言い、その母親は娘が本人を前にしてそうめんを啜る女性を(はや)し立てるように注視するのを叱るのだが……

いやいや、その母親はそうめんを啜る唯一の女性をしっかりと見ていなかったようだ。その母親は遅れて飯吹を視認して驚きの声をあげる。

また、飯吹もその母親を見つけて異口同音に驚きの声をあげていた。


「ええっと……なんだっけ……ええっと……め、、めー、、めー、、、、芽衣(めい)さん!」

「えっ、ええ、、、飯吹さんも……お元気なようで……」

飯吹がなんとかして名前を言い当てる女性は斉木芽衣(めい)、10年程前に警察を寿退署した女性だった。


娘はその斉木芽衣の娘で、勝也達と同じクラスの斉木茉奈だ。

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