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力の使い方  作者: やす
三年の夏
388/474

#387~力は1人~


『……ミーン、ミーン、ミーン……』


「……はぁ……」


夏であるっ!

この日の清虹市では例年の夏の日の平均以上の気温を記録しており、日差しが強い日中の今に太陽の陽の照らす所を歩こうモノならすぐに汗だくになってしまう環境だった。

『あぁぁぁ!』「……ちょっ、待ちなさいっ!」

世間では子供達やら学生達が夏休みに入って幾分か経ち、大人達も職種によっては会社の夏季長期休暇が実施されている頃合いである。


そんな夏の真っ只中な清虹市だが、市内にあるお店やレジャー施設等は市内の客を呼び込むだけに留まらず 市外からも客を呼び込む”催し”を行っていたりと、各企業が様々な”企画”を行っていた。


『……ミーン、ミーン、ミーン……』


「……はぁ……」

そんな景気もどこ吹く風な”ため息”を吐きながら歩く女性が今いる場所は、

清虹市の中でも一・二を争える程な規模の住宅街が広がり、特に駅の近くでは飲食店や販売店・各種サービスを提供する店が多数営業をしている地域の”風台”だ。

「……」

そんな地域の中で唯一”風台”の名を関する駅から一人の女性が歩いてやって来たのは、駅から十数分程歩いた所にある総合スーパーマーケットの”スラフラ風台本店”である。



『ガァ――ッ』

『……ガヤガヤ……』『……ガチャガチャ……』『お集りのお客さま……もう間もなくスタフラが今日行うイベント、”店の中を流れるアレは何だ?音楽か?人か?星か?花か?いや、そうめんだ!”を開催致します。イベント時間はもう間もなくの、お昼から最長で今日の閉店までのイベントです。店内のフードコート横に用意した空間で”流しそうめん”をイベントに参加される皆様で食べて頂くイベントです。参加費はお食事された量に関係なく、お1人様2000円を頂く予定ですが、当店が用意しているそうめんの在庫が閉店までに無くなり、その時まで参加されていた方は特別に参加費を免除いたします。イベント途中で”イベント会場”から退出される時に”参加費の2000円をお支払い頂きますので参加費を用意してから参加して頂きます。十分な量の”そうめん”をご用意しておりますので参加費は基本的にお支払いして頂く気持ちでご参加ください。”麺つゆ”と”箸”を店内イートインスペースでお貸ししていますので、参加される方は……』

「……んっ?」

スタフラ風台店に訪れた女性・飯吹はその店の自動ドアが開いた所で人の雑踏や、どこからともなく聞こえる物音、そして店の中に響き渡る店内アナウンスを聞きつける。


どうやら今これから始まるイベントは、参加する全員で、『スタフラ風台店の用意する”そうめん”を食らいつくせるか否か?』という事らしい。

『皆で全て食べきれば参加費は無料だが、閉店までに食べきれなければ参加した者全員がそれぞれイベント参加費の2000円を支払う』と言う事だそうだ。

有体に言えば『スタフラVS客』の”食べきれない程そうめんを用意しているか、それとも客がそうめんを食べきれるか?のフードバトルイベント”の様なモノだ。


「そうめんだぁぁ!俺やるぅぅぅぅ!「俺もぉぉぉ!「”そうめん”なんてお前らそんなに食べれないだろ!いい加減にしなさいっ!……」ぶー、ぶー!」」

「あら?でも、皆が参加して食べきれば実質タダなんでしょう?」「……むぅ、しかしな……”そうめん”をお腹いっぱい食べられたとしても、それに2000円……三人で6000円も払う事になったら高いだろ?「あら?私と子供達の三人で食べるって事?」お前……」

店内の出入り口近くで3・40台ぐらいの歳の男性と、顔がどこか似ている小学校の中高学年ぐらいの兄弟が大きな声で話をしていて、これまた30歳ぐらいの子供達の面影のある女性がその父親らしい男性に声をかけていた。

話しを聞く限りでは彼ら彼女らは家族で、3・40台の父と母、そして小学生の長男次男、な四人家族なのだろう。


「そうめんに2000円か……」

飯吹はそんな、見た目からしてまず間違いなく血の通っているだろう息子二人の”四人家族”を見つめてからこの状況を察していた。


このイベントは上手く出来ている。

恐らくは廃棄予定の余った大量のそうめんをイベント参加者に食べさせて、あわよくば参加費を貰い、たとえ完食されたとしても元々廃棄予定のそうめんを食べられるだけなので実質”麺つゆ”とイベント会場の用意だけで”人集め”を行っているのだ。

つまり、どういう結果に転んでも”スタフラ”にダメージは大してなく、”そうめん”をタダで食べる事が出来た者は得した気分になるイベントだ。


「……外は熱いし……今日のお昼ご飯は”そうめん”でも全然良いな……」

……とは言っても実際の所は分からないが……お腹を空かせていて、少しだけ羨ましい一家を見てセンチメンタルな飯吹には”渡りに船”で……いや、”暑い日に流しそうめん”であった。



『……ガヤガヤ……』


「……」

飯吹はスタフラ風台店の中にあるイートインスペースに出来ている列に並んでいた。

彼女は1人で列に並んでいるが、周りは家族連ればかりである。


『チョロチョロチョロ……』

イートインスペースの横は、本来ソコは”家電製品売り場”なのだが、展示されている白物家電等が撤去されて大きなスペースが用意されている。

そしてソコには天井からとぐろを巻く様にしていくつかプラスチック製な”レーン”が置かれていた。

その”レーン”には既に水が流れていて、その”レーン”の終点には金網製のざるが置かれ、流れる水は店に元からあったらしい排水口に流れている。


「……」

飯吹は普段床に隠されているのだろう排水口がむき出しにされて、今も水が流されている風景を見ると口を閉ざしながらも感心している。

『……ガヤガヤ、……ガヤガヤ、……ガヤガヤ……』

飯吹が並んでいる列は順調に進んでいた。


「あっ!?飯吹さんっ!?来てくれたのっ?!」「……ぁ、うん……」

ソコで、飯吹に声をかける者がいた。

勿論それは彼女をココまで呼んだ張本人である。


この”(スター)(フラワー)風台本店”の店長を務める敏腕男性の立花飛鳥、彼の妻にしてその”スタフラ風台店”でサークル活動を行う女性の立花喜乃その人だ。

彼女はあろうことか、飯吹も並ぶ者達に対応する受付業務を行っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


とある日のニュース番組では……

『……えー、次のニュースです。先日のインターネット上で”呼びかけ”を行い、清虹市の東にある諸島を占拠していると見られる集団を日本政府は”テロ組織”として認定しました。元よりこの集団は日本から資材等を不当に持ち出して出国し、海上自衛隊の要請を無視して逃走していましたが、彼等への日本政府としての立場を表明する”初の声明”です。また、インターネットで配信されていた動画に出演していた”男性”も、”防人部隊”の関連資料等を確認したところ、『”本郷郷史”本人である可能性が極めて高い』という結果が報告されています。『本郷郷史は”国際連合の組織”に明け渡されて処刑されている』とされていましたが、遺体の行方等の事実確認等を当時の執行官に確認している最中です。』


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