表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
力の使い方  作者: やす
三年の夏
386/474

#385~力のうつわ~


『……ドタドタドタ……』「「ぁぁぁぁい!……」」「よしっ、今日は水藻にあるプールで泳ぐぞぉぉぉ!」「「「「……わぁぁぁぃ!……」」」」

「……」

清虹市には集合住宅施設がある程度まんべんなく・数多く存在している。

その集合住宅施設は主に三種類あった。


『……』

一つはマンションやアパート等、社会人や大学生等の一人で住む様なワンルームだけでなく、家族が住む様な広さといくつかの間取りがある空間の集合住宅だ。


『……ぉーい!今暇ぁ?「ぁあぁぁあ?……「うるさいっ!」……」」

そしてもう一つは小・中・高・専門・大学生等の親元を離れて清虹市にある学校へ通う、それぞれの学校単位でいくつかに分けて集められている学生が共同生活を送る学生寮である。


「……ぁぁぁぁぁっぁっぁぁぁぁああああ!「はっはっはっはっはっ!今日は何食べたいんだぁ?!……」プールのみずぅぅ!」「……はっはっはっ!?」

そして最後の一つは小学生や中学生・高校生の中でも、身寄りのない子供や訳あって親元を離れて生活する児童養護施設であった。



先の二つは清虹市外のどこでも散見出来るモノで、最後の一つも大きな地域等でなら数件でも見られるモノだ。

だがしかし、清虹市では最後の一つが割合的に割と多く存在している。


それはひとえに”この地の成り立ち”に起因しているだろう。

また、そういった施設は主に教会や 慈善事業団体等 もしくはその地域が運営をしている事が多い。

だが清虹市ではさらにそれらに加えて”セブンリバー銀行”と、”ゴルドラグループ”が運営と出資をしている施設があるのだ。


”ゴルドラグループ”の施設は特に

”ゴルドラハウス”と呼ばれ、

”セブンリバー銀行”と他の団体の施設、また時には”ゴルドラハウス”も含めて

”虹の家”と呼ばれている。


つまり、清虹市にある児童養護施設は大雑把に全て『虹の家』と呼ばれ、その中でも”ゴルドラグループ”が出資・運営する施設だけは『ゴルドラハウス』と呼ばれていた。


言うなれば”セブンリバー銀行”と”ゴルドラグループ”で児童養護施設を造り合っている形になっているが、実際はこの二つにそれほどの違いや互いに険悪な関係が一切ない。

どちらも”必要とされている”から造り合っていて、むしろこの二つは施設間で交流したり、互いに必要に応じて助け合ったりもしている。

まぁ、互いに能力がある子供を自分たちの企業に引き抜き……いや、斡旋したりしていて、運営母体同士は間違いなく互いに思う所はあるのだろうが……


そんな”虹の家”の先駆け的存在・一つ目の『虹の家』は、意外な事に”現場の者・子供たちの世話を買って出た成人女性”が”セブンリバー銀行”に話しを持ちかけて造られたモノだった。


その”成人女性”名前は猿野(さるの)(きさき)、今は清虹市にいくつかの施設を持っている資産家で、フリーアナウンサーの猿野由美の実の母親でもあった。

そして、今の清虹市の市長を務める金山賢人達の育ての親・”おばさん”である。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


『ガサッ……』

「……よっこいしょっと、、、、、はぁ、、あれ?ココに前置いてた”お菓子”は?あと、、お茶頂戴?」

「ごめんごめん、妃さん……”あのお菓子”は片付けたんだ。お茶は……」「分かりましたよ。部屋から取ってくるんで……「あっ、、熱いヤツね!、、あと、冷たいお水も!」解ってます。」

”7カラ11カイ”の四階、ソコにある共同スペース・通称”俺たちの秘密基地”に妃さんは靴を脱いで上がり込む。

彼女はソコに以前はあったらしいお菓子をソコにいる者へ要求して、あまつさえお茶を所望した。

もうここを立ち退いた賢人はソコにお菓子が無い事を謝り、お茶については彼の向かいに座る者に目配せを送る。

その目配せをちゃんと受け取った樹癒は立ち上がり、自身が借りている部屋に動き出すが、妃さんは”お茶”について譲れない部分があるらしい。その温度と、その温度を自分で調整する為の水まで注文を付けていた。


「はぁ……」

そんな要求に対して従順に動く樹癒である。彼は妃さんの傍若無人さに辟易しながらも、”俺たちの秘密基地”手前に置いていた靴を履いて、自分の部屋に向けて歩いて行くのだった。



「えーと……妃さん、今日は何かありましたか?」

「はっ?”何か”?、、、よく言うよアンタは!?、、、、心当たりが多すぎるでしょうにっ?!、、、金山家の”嬢ちゃん”と勝手に結婚して?!、、今度は勝手に市長を辞めて!?、、、最後は勝手に”ココ”を出ていってるじゃないっ?!」

賢人は自分の部屋に樹癒が向かったのを見届けたあと、彼らの世話をしてくれた女性に含み笑いを見せると、今日ココに訪れた用件を聞いている。

だが彼女は、多少恨みがましく大分昔の賢人から順に彼のした”勝手な”事を引き合いに出して、その言い草に恨み言を唱えていた。


『”四期奥様と結婚した事』の次に『市長を辞めた事』を挙げているが……その間は軽く20年以上の時間が経っている。

賢人としては『その間も結構勝手な事をしたんですけどね……』と思うのだが、彼は”勇気”と藪を突く”蛮勇”の違いを見極められる男なのだ。いや、彼女は”猿の”方なのかもしれないが……決して口に出すのを(はばか)った訳ではない。


「まぁ、、、もう良いけど、、、、で?そろそろ三階と四階の次の”代表”は誰よ?『ん?”代表”?ですか?……』アンタが出ていったあとの”ココ”での後釜だよ!?」「……あぁ、”フロアマスター”ですか……」

しかし彼女は案外呆気なく用件を述べる。

彼女はこの一人用ワンルーム賃貸住宅の4階・3階の貸事務所管理の代表をしていた賢人がココ・”7カラ11カイ”を去ると言う事で、次の管理者を賢人に決めさせようとしているのだった。

だが賢人は”四階の管理・代表”を特に”フロアマスター”と勝手に呼称している。


「うん?フロア?、、、まぁ、、早く言いなさいよ?、、、どうせ”雄二”なんでしょ?アンタが言えば”あの子”らは反対しないわよ。」

どうやら妃さんは四階と三階の管理等をすべて彼等……と言うか、賢人に任せているらしい。まぁ、賢人が他の者に管理等を割り振ったりしているが、オーナーの彼女へは賢人が纏めて報告しているのだ。

しかし、彼女は誰にあとを任せるのか、確信していた。

賢人と”最初から一緒に”彼女をここまで導いた”平岩雄二”だと思っている。


「……いやっ、それなんですけど……樹癒に任せようと思ってます。」

「あら?樹癒に?『ガァ……』『ガチャ……』「はっ?」まぁ、別に誰でも良いんだけど、、、」

しかし、賢人は平岩ではなく、

経済的に難しいだろう”虹の子”と言えども、弁護士試験をクリアして弁護士になるが、もうその弁護士に見切りを付けている沼岡樹癒を指名する。


彼は賢人の言葉を聞き、驚いている妃さんの言葉の途中で、駄菓子の詰め合わせと急須の”お茶セット”をお盆の上に乗せて持って来て現れていた。

どうやら”それも”話しが違う”らしい……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ