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力の使い方  作者: やす
三年の夏
374/474

#373~力の船に乗る!4日目、終了、下船編~



『ギュルギュル……『ブゥゥゥゥン……』グザバァン……ザバァン……』

東西に長い半島の清虹市、その東に広がる海には一つの客船が訪れている。

清虹市の中でも東に位置する地域は水藻と呼ばれ、清虹市内では唯一、船を停泊させる事が出来る港が所在する。


『ブゥンブゥンブゥン……』

その水藻港には灯台があり、その頂上に置かれているライトが点灯していた。また、そのライトの上に取り付けられているスピーカーからは特殊な音が鳴り響いている。

『……ググッ、グググッ……』

金山家が所有している豪華客船・”セブンスハッピーとレジャーシップ”は針の穴に糸を通すが如く、船首を横に向けて止まると停泊させる場所に向けて後ろ向きで進み始める。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


『……ガヤガヤ……

布袋損ベッドルーム内のエレベーターで行ける一番下の空間・フロントには人が集められている。


「……では皆さま、クルーズは当初の予定を変えてコレで終了とさせて頂きます。……最後は駆け足となってしまいましたが……皆様のこれからのご多幸を願っております。金山家の皆様に変わりまして私、水上からお別れの言葉を申し上げさせて頂きます。」

……ガヤガヤ……

そのフロント内には水上が1人、そこに集められている者達へ言葉を向けていた。

「……」

今日は特に、彼女のおでこも眼鏡も光ってはいない……何故なのか……


ともかく今の状況として、布袋損ベッドルームは11階まであり11階~7階までに置かれている部屋の奇数番号な部屋に案内された者達がフロントに集められている。

……ガヤガヤ……

「「「「……」」」」

その空間には30人程集められているが、その中に勝也達の姿があった。


「皆様が集められていた金貨ですが、そちらの金貨交換所に金貨で交換した道具を含め、全て置いて行ってくださいませ。この船に忘れ物をされた場合はゴルドラファミリーにまでご連絡ください。この船で発見出来た物についてはご自宅か、ご要望の場所にお届け致します。」

布袋損ベッドルームの1階にあるフロント横には待合スペースがあり、ソコには売店……ではなく、金貨交換所がある。だがソコには、金貨で交換できる物は何も並べられておらず、その場を管理する者もいない。

その代わりに『金貨返却場所』と印字されている看板が置かれ、金貨等を置くスペースが大きく用意されていた。


『ガチャン!』『ゴゴゴゴッ……』

「「「「っ!」」」」

しばらくすると、勝也達の耳には何か金属が噛み合ったらしい音と、何かが動いている様な音が聞こえてくる。


『ピンポンパンポーン、皆さま、当船は水藻港に到着致しました。布袋損ベッドルームの上の階を使われている方から下船して頂きます。忘れ物にはお気を付け頂き、足元に注意を払いながら下船する準備をなさってください。船を降りる方は順番にゴルドラファミリーの者が案内致します。今しばらくお待ちください。この度は素敵なクルーズにご協力頂いて誠にありがとうございました。』

誰かは分からない女性の声の船内放送が勝也達の上から聞こえてくる。

状況を察するに、どうやら勝也達は早くに下船出来る一団らしい。

……ガヤガヤ……

「……」

勝也が周りに視線を向けると、今思えば和服やタキシードもしくはスーツを着ている者がそれなりに多く、フォーマルな恰好をしている者達ばかりだった。

もしかすると、勝也達が寝起きする部屋を決める際にこの船の船長であるミスト・アルケ・板金が受付をしていたのも、そういう所謂(いわゆる)Vipな人達向けて船長直々に高層階を案内していたのかもしれない。

「……」「……「?」」「……はぁ……」

勝也は今の状況を説明されてはいないが、”今の状況を見て”そんな事を考えていた。すると程なくして、そこに集まっている者達が動き出す。


『……ジャラジャラ……』『ドンッ、』『『ジャラジャラ……』』

布袋損ベッドルームのフロント横の空間にある金貨交換所に向けて、勝也達を含む下船する者達が列を作り、集めていた金貨を銘々(めいめい)に置き始める。


『フォン、ゴッ、ガッ、チャリン!』

「そういえば……夕お義姉さんは金貨何枚になってたんですか?」

数人がこの空間から出始めるころ、金貨交換所に作られたスペース手前には金貨が置けなくなり、金貨交換所の奥へ金貨を投げ入れる者が出始める。

そんな時に澄玲はふと気になった様にして隣の義姉に疑問を向けた。


「……いやぁ……それが……わかんないんだよねぇ……まぁ……金貨は増えてたのは間違いないんだけど……市長さんも同じぐらい増やしてたと思うから……多分一番にはなってないハズ……まぁ、今となってはそれも意味ないんだけどね……とほほ……」

しかし、夕お姉さんは嫌な事を思い出す様にして澄玲の疑問に答える。

まだ普通の航海をしていた3日目の夜、金山賢人市長が金貨1050枚で一番多く金貨を持っていたのに対し、その時夕お姉さんは金貨1040枚を持っていて、僅差で負けていた。

大黒カジノではルーレットやブラックジャック等、その気になって運が良ければ何十枚と金貨が稼げるハズだ。

だが、夕お姉さんによると、その大黒カジノには当の金山賢人市長がいたらしく、夕お姉さんの見ていた限りでは彼よりも金貨を増やせていなかった様だ。


だがそれも四日目……つまりは今日の未明頃、死んでいたハズの本郷郷史なる防人部隊で隊長を務めていた?者が何らかの手段で復活、()しくはなりすまし、日本全域に向けて仲間を(つの)りつつ太平洋にある島で今度は”国を造る”とインターネットの動画サイトで生中継で宣言したらしい。

彼女等が今も乗っている船・”セブンスハッピーとレジャーシップ”は全ての運航と行事を中止して、水藻港に戻ってきている。

この船で行われていた”宝探し”も例外なく中止され、金貨を一番多く集めた者に送られるハズの賞品・”金山家が建造し、ゴルドラファミリーが運営する施設の人事任命権”も全てなかった事にされていた。


先程、水藻近くの海域まで全速力で運行してきた”セブンスハッピーとレジャーシップ”は水藻港停泊の準備段階でその状況を船内にアナウンスしていた。

動画サイトには澄玲もスマートフォンでアクセスして、(くだん)の声明を視聴している。

また、この一連の騒動はインターネットを中心にしてかなり騒がれていて、朝のテレビ番組等でも報道され始めている状況だ。

それを考えると未明頃から予定をかなぐり捨てて、ココ水藻港まで戻って来たのは”流石!金山家!”と言えるだろう。

もたもたしていれば、どうやって”その連中”が太平洋まで移動するかは不明だが、海上封鎖なりの為に海上自衛隊等が出動するハズだ。


『……ブゥゥゥン!』ガヤガヤッ、……』

いや、もしかしたらもう既に”そういう”船が水藻港周辺に展開しているかもしれない。

”セブンスハッピーとレジャーシップ”の外・海の方から……遠い所からだろう、どこかの船の汽笛が鳴っている。


『……ゴゴッ!』

「皆様、船を降りる準備が出来ました。特に天気が悪くなる予報も出ていませんが……お早目のお帰りをおすすめ致します。皆さまから預かった金銭や貴重品等、お預かりした物は船に乗り込む際に手続きされた受付にご用意しております。そちらでお荷物等を受け取ったあとはお気を付けてお帰りください。それでは、皆さま今回はありがとうございました。又の機会にお会いしましょう。」『ググッ……』

水上はフロントの奥からこの場にいる者達へ言葉を掛ける。

布袋損ベッドルームの外にはゴルドラファミリーの茶色いエプロンドレスを身に纏う者がいて、下船する階段と橋に繋がる道を案内する様にして立っていた。



『ガンッ、ガンッ……』

勝也達は水藻港に備え付けられている橋を渡って下船する。

その橋を渡った先には、預けている荷物を返却する受付が置かれている。

『ブブブッ……』

「すみませーんっ!」

そして、大きな車が奥の方の立体駐車場横に停められている。

その大きな車にはテレビ局のマークがデカデカと張られていて、リポーターらしき女性がマイクを片手に持って待ち構えていた。

「えっ?」

先頭を歩く夕お姉さんは思ってもいなかったのか、そのリポーターらしい女性の声に返事をしてしまっている。


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