#367~力の船に乗る!3日目、夕ショック!編~
厘:420枚(弁財・-1枚)(偉業・+15枚)
澄玲:126枚(毘沙門・-1枚)
夕;1040枚(大黒・+20枚)
勝也:119枚(毘沙門・-1枚)
『ガヤガヤ……
”セブンスハッピーとレジャーシップ”は太平洋沖で停止している。
……ガヤガヤ……
場所は”寿老人ホール”と呼ばれる、劇場の様な・映画館の様な 造りの多目的ホールだ。
「……」「……」「ふふん!……」「……」
その寿老人ホールのステージを見て客席中段右端に雨田姓の者達が横並びで座っていた。
今回は客席の中側から『……空席、勝也、厘、夕、澄玲』の順だ。
「あぁ……」
勝也の左隣は空席だが、その左側の席には初老頃の男性が座っている。
「前を失礼します。どうも…………尾帝さん、、ソコで良かったですか?……一応、”前の方”で端の席が空いてましたけど……「いや、私はココでも良いよ?」そうですか。では失礼して……勝也君、座るよ?」「ぁ、はい……」
すると澄玲達の前を通って勝也の隣の空席に座る男性がいた。
歳は四十頃の皺ひとつない茶色いスーツを着るイケメン男性だ。
彼は勝也達に付いて回る様にして今日一日を過ごしている。
別にそういう約束をしていないし、そんな事を話してもいないのだが……恐らくは賢人が勝也達について回っている状況だ。
『ビーィ!』……ガヤガヤ、『ガァン』……
『…………皆さま、この度はお集り頂いてありがとうございます。』
暗くなっていたステージは小さな警告音のあと、ステージ上部に置かれているライトが突然点灯される。
”寿老人ホール”に集まっている者達はステージ上に立つ女性に注目して自然と会話を止めていた。
……、ビアノ?……、まさか……、』
客席の一部からはステージに置かれている物に注目する者達がいる。
そう、ステージには大きなピアノが1つ置かれていた。
ちなみにビアノを弾く者が座るであろう席には誰もいない。
水上がステージの手前側に立ってはいるが、ステージにいる者は他にいなかった。
彼女は手に持つマイクに向かって言葉を吹きかける。
『明日の夜にはこの船・”セブンスハッピーとレジャーシップ”は水藻港から海外のドックに戻ります。明日の夕方には皆様がお帰りになられている予定です。』
この航海は三泊四日の船旅だ。一応は三日・72時間分以上は飲み食いして遊べる予定のモノである。
水上達ゴルドラファミリーの者達は四日間休みなくフルに働いている様なモノなのだが……
『では、ココで、下船時に一番多くの金貨を保有している方に渡す賞品を発表致します。』
「「「「「「「……んっ……」」」」」」」
遂にこのクルーズで執り行われている宝探しゲーム・『金貨集め』の賞品を発表するらしい。
「今後、金山家のグルーブ企業が設立し、我々”ゴルドラファミリー”が運営を行う1つの施設での”人事任命権”を、問題が起こらない限り、半永久的に一部お譲り致します。」
「「「「「「「……なっ!」」」」」」」『ヒソヒソ……
水上の言葉を聞いた”寿老人ホール”に集まる者達は皆一様にざわつき始める。
「えっ?ど、どういう事?」「っ?人事任命権って……た、多分……」
夕お姉さんは水上の言葉の意味が分からずに隣の澄玲に説明を求めていた。しかし、澄玲も咄嗟に説明出来ずにいる。
……ヒソヒソ……、……どういう事なの?……
「もう少し簡単に説明致します。簡単に申し上げますと、金山家が作る建物で、我々ゴルドラファミリーが運営する施設の”雇われ所長”又は、”雇われ店長”相当の身分になれる権利です。……勿論ですが、皆様のお仕事や事業もあるでしょうから、運営に関わって頂く必要はございません。もしも店長業等に興味があって、転職や副業をされる場合でも、働ける場合の三年間はゴルドラファミリーの職務規定の最低賃金を受け取って頂けます。また、これは条件さえあえば、施設の種類と人事任命権の開始時期は制限されません。」
『……んっ……』
金山家はスケールがデカかった。
この船で集められる金貨を一番多く集めた者は、”これから作られるゴルドラグループの施設の長になれる権利”をくれるらしい。
しかも、”費用は全て金山家持ち”だと言う。まぁ、事業者ではないので”店や施設をくれる”と言う事まではないらしいが……
さらに三年間はゴルドラファミリーの一員として、給料も支払ってくれるそうだ。
『それ以降は業績によって判断される』と言う事なのだろう。
「んっ……」
正に、”金持ちの道楽”的なゲームの賞品だった。
人の人生を変えてしまう程のモノである。
「それでは今現在で我々が把握している、一番金貨を持っている方を発表致します。金貨の枚数もここで発表させて頂きます。」
水上は客席にいる者達が商品の凄さを理解する暇を与えずに”宝探しゲームの途中結果”の発表を始める。
「金貨を1050枚保有する、金山賢人さんです。春香お嬢様の父親で、今現在も清虹市の市長をされている方です。何も問題が起こらなければ明日の夕方頃、この船が水藻港に到着するまで金貨を増やすチャンスがございますので、どうぞ皆さま、より熱意をもって、残りの時間は金貨獲得を頑張ってくださいませ。」
「……っ!」「「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」」
水上の発表に寿老人ホールに集まっている者達は息を飲む。
「くっ……」「ぁ……」「「……」」
しかし、雨田姓の者達は周りの者達とは少し違う反応を見せていた。
夕お姉さんは今現在、金貨を1040枚保有していて、一番多く金貨を持っているされている賢人と10枚差だ。
「……ははっ、参ったなぁ……」
そんな事を言う賢人と僅差の枚数である。
それだけ金貨を持っている様子が見られない事から、恐らくは多くの金貨を”布袋損ルーム”の下の方の階にある彼の1人部屋に置いてきているのだろう。
「それではこれより、世界的にも有名な演奏集団から声をかけられるも、ピアノ界の混乱を防ぐ為にピアノ等の楽器から距離を置いている春香お嬢様が、皆様にお礼として一曲演奏されます。皆様ご清聴ください。」
「「「「「……」」」」」
『ガッ……』
この空間に集まっている者達が賢人に注目している中、水上は大仰にも、今日最後の一大イベントととして春香の”ピアノ演奏”を案内した。
水上は自身の後ろに置かれているピアノに意識を向ける。
ソコにはいつの間にか春香が現れていて、ピアノの椅子に腰かけて鍵盤にその小さな指を這わせていた。
『バンバンバンバンバーン、バンバンバンバンバーン』『ピッ』
「んっ、」『ピッ』
『バンバンバンバンバーン、バンバンバンバンバーン、バンバンバンバンバーン、バンバンバンバンバーン……
『ピロリーンピロリーン、ピッロピロピロリン、…………………………
春香は最初に同じフレーズの音を奏でると、それをピアノの機能で繰り返し再生させる。
それに合わせる様にして鍵盤を触る事で、1つの曲を奏で始める。
「「「……?……」」「っ!嵐の唄だ……」「おっ?」あ、嵐?え?グループの?」
勝也達は誰一人として、春香の奏でる曲名が分からなかったが、厘だけはその曲名を口ずさむ。賢人は感心した様な声をあげるが、勝也達はより疑問を深くする……
中々に中毒性のある曲だ。
「……」
そんな勝也達をよそに、夕お姉さんは1人、口を開けずにその心を浮足立たせる音色に耳を傾ける……




