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力の使い方  作者: やす
三年の夏
359/474

#358~力の船に乗る!2日目、誕生日プレゼント!後編~

明日(10/17)は小袋怪獣行け!の共同体の日ですね。

なのでちょっと早く投稿しました。

時間は11時~17時までで、

11時~19時にちょっと大きな人影を羽根つき人影に進化させると竜の吐息を覚えるとか覚えないとか……

ゲッツイロチ、高個体!


『……ヒソヒソ……医者の息子?……、……法力医師の両親……、限無会長が直接?……、まぁ医者の息子ならさもありなんか……、……

「……っ…」「……ぁ、あの……コレ……っ……」

勝也が春香と目を合わせる前に、水上の紹介のお陰で客席からは遠慮のないざわめきが起こっていた。


……次女はあれで決まりだな……、だが、長女は……もう相手を?、なら”そういう”噂があっても良さそうな……、いや、今回は久しぶりに誕生日会に登場するが、あそこまで扇情……ぁいやっ豪華な衣装を着ているのならもしや……


「……」

ステージの中央に立つ春香と勝也が黙っているのを良い事に、客席のざわめきは最高潮に達するのだが、彼らの意識はステージ端に置かれた椅子に腰かけている者に自然と移る。


「……っ……」「……」

それは絢爛豪華なドレスを身に纏う秋穂だ。

彼女は服のサイズにゆとりがないらしく、少しだけ居心地が悪そうにしていた。

「……サイズ的にはピッタリなんだけど……秋穂は”お姉様たち”よりも……その……”大きい”のね……」

だが、”ゆとりがない”とは言ってもサイズ的には適正らしく、どちらかと言えば”ただ秋穂が慣れていない”だけの様だ。

「「……ふん」……」

四期奥様はその娘の秋穂が着ているドレスについて言葉を掛けたあと、そのドレスの持ち主である二月奥様と三城奥様の方に視線を送る。

「……あら?四期?それは私が貰ったけど、私の趣味とは違うからそのまま三城ちゃんにあげたドレスよ?」

四期奥様が秋穂に小さく言葉を掛けたのだが、そんな囁き声を聞き逃さなかった二月奥様は四期奥様が言った『姉様”たち”』について、”違う”と言いたげに声をかけている。


「ええ、二月姉様が”どこぞの誰かに”貰ったドレスですが、”胸のサイズが余る”と言う事で私に下さったドレスです。……まぁ、私も同じ理由で一度も着てませんが。」

「っ……あらっ?……そうだったかしら?……もうずいぶん前の事だったから忘れてたけど……でもまぁ、良かったじゃない。……”全員”が上手い具合に収まって。……でも、ついに医者の息子が候補に……羨ましいわね、春香ちゃんは……」

妹の三城奥様は二月奥様の言葉を返し、当の経緯を暴露された二月奥様は取り繕う様にして誤魔化して本当に思っている真実を織り交ぜて言葉を結んでいる。


「はぁ……」

そんな姉たちの諍いをしり目にして、四期奥様は人知れずため息を吐くと、ステージ中央に立つ幼い二人を見つめた。



「ぁ、ぁの……こっ……これ……」

これは当たり前な事だが、勝也は100人程の大人達が向ける無遠慮な視線の前で、大きな声を出せるほど肝が据わった者ではない。

多少ぎこちなくカタコトになりながら、持参したプレゼントを服のポケットから取り出す。

ズボンのポケットから取り出したのは……


「っ?……かみ……どめ?……えっ?イチゴ?……」

そう、イチゴを模した透明なガラスチックな物がピョンと出っ張っている小さなクリップ式の髪留めだ。


「……ぁ、ぁと……これも……」

続いて出されるのはヘアゴムだ。髪を纏めるゴム製のリングである。

ただし、これにはキウイを模した透明なガラスチックな物がゴムを結んだ所にかぶさっている。

「……んっ?……」


「……そっ、それと……」

勝也はさらにポケットをまさぐって、今度は棒の様なモノ……”かんざし”を取り出す。(かんざし)だ。

また、これにはりんごを模した透明なガラスチックな物が棒の先端にくっ付いている。


「……他は?」「……っ……『ピラッ』……これで最後……」

そして最後は春香が催促をしだす。……勝也が最後に取り出すのは……

「んっ?カード?あれ?」「……ぃゃ、ぁの……しっ、しおり……」

最後はオレンジ色の、透明で少し長く薄い(しおり)だ。本を読むも途中で本を閉じる際に挟む物だ。

だが、これには果物を模した物が取り付けられていない。しかし、橙色の透明な品である。



「……っ……はっ、はいっ、結構遅れてるけど……まぁ、誕生日……おめでとう。」

『ッ……ジャラ……』

勝也が数歩だけ春香に近づき、勝也のその小さな手にある細々(こまごま)としたモノが、またさらに小さい春香の手に落とされる。

「……ぅ、うん……ありがと……」

春香はその衣装を着ている状況で勝也に近づかれたのも手伝い、若干頬を染めて自身の手に置かれた物を見つめてお礼を述べた。


「……あれ?……なんか……臭い?……」

自身の手に置かれた物を見つめる春香だが、ソコで何かに気付く。

「むっ……”臭い”って言うなよ……これは、それぞれに果物の”香り”が刷り込ませてあるの。」「……えっ?……あっ、ごめんなさい……」

勝也がプレゼントした細々としたモノ。それらにはそれぞれ全てで特定の果物の香りが織り込まれているらしい。

「一応……少しだけ水が付けば、付いた水が蒸発すると”香り”が復活するんだけど……まぁ、”香り”が復活するのも持って100回位で、そのあとは”香り”が消えちゃうけど……栞は虫よけもするみたいだし、匂い移りも多分……いや、そんなに濡らさなきゃしないはず……」

「……うん。大事にするね。」


どうやら勝也はフルーツを煮詰め、それに薬品を混ぜて乾燥させる、”香料作り”が出来る様になっているらしい。

実はこれは、春香が幾度か勝也にさせた給食で出たフルーツのドライフルーツ作りに端を発している。

彼は水系法力による果物を乾燥させる事を機に、その方面の勉強をしていた様だ。

その知識を駆使して彼なりに工夫をして、果物の香りが発生する物体を作り出した様だ。


――――――シィン――――――

春香はそれなりに喜んでいるが、ステージを見る客席では二人の話声が聞けず、ステージ中心で勝也と春香が何かを渡し、『ボソボソ』と何かの話していた事しか知りえない。


『はい。どうやら雨田勝也様は、春香お嬢様に春の果物が香る、小物数点をプレゼントされた様です。春香お嬢様もお喜びあそばれています。雨田勝也様、ありがとうございました。』

……おぉ、春香お嬢様だから春の香り……、……ふぅん……、ぅ、これも……、ふっ……、ぇ?……、

勝也達がステージ上で自分たちの世界に入っているのを見届けた水上は春香の誕生日会を進行させるために状況を説明した。

客席にいる者達は口々に勝也の評価を下している。


「……はぁ……」

勝也は人知れず口から息を吐きだして、衆人環視のステージを、前者の厘と同じ様にして降りていく。



『……では次の方ですが……春香お嬢様のご学友の……えー、関係者……ぃぇ、親族の方です。では、お願い致します。』

「春香ちゃん!おたんじょうびぃーおめでとう!!それと、豪華な船に招待してくれてありがとうね!これっ、……誕生日プレゼントのぉー……写真立てですっ!」

「あっ!りっ……くっ、コレがっ!”一番嬉しい”プレゼントですっ!!」

『えー……春香お嬢様から”一番嬉しい”コメントがありました。偉業として、金貨千枚を……』


「……えっ?」

勝也の次の人物が渡したプレゼントは一見すると何の変哲もない写真立てだ。

だが、その写真立てには厘のさらに小さな頃の写真が入れられていて、その写真の周りにはもっと小さな厘が切り抜かれて張られている。

まさに、『厘尽くしな写真立て』だ。

春香は一にも二にもなく、即座に喜んでいる。

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