#350~力の船に乗る!1日目、後編~
「では、最初にスープを……これは”夕さま”の頼んだ料理ですね。『ゴトッ』「ぁ、うん。ありがとう……」熱いのでお気を付けください。では次ですが……ホットミルクとハムエッグバタートーストです……これは”澄玲さま”が頼んだモノですね。『ゴトッ』『ガッ』「……ぅん?……あっ、ありがとう……」ナイフとフォークをお使いください。そしてこのおにぎり三点セットは……”勝也さま”の頼んだ料理となります。お水もお持ちしました。『ッ……』おにぎりの具はこちらから鮭、梅、昆布です。『コッ……』「ぁ、ありがとうございます。」皿代わりの葉は手拭きにもお使いください。それではどうぞお召しあがりを。”おかわり”の際はテーブル端のタッチパネルを触って私共にお言いつけください。他の料理をお食べになる際はタッチパネルを操作してもう一度注文をして頂きます。「ぁ、はい「「……」」」では厘様も注文をして頂ければすぐに運んで参ります。それでは失礼します。」
凪乃は持ってきたお盆に載せられている料理を全てテーブルに置く。淡々と事を進める彼女は最後に頭を軽く下げてから歩き出してしまった。
勝也達の呼び方から動きの所作、表情の全てが”気軽に声をかけられない仕事モード”になっている。
「ぁ、食事は一緒に出来ない……のね……」
凪乃はもう既に澄玲達の着いているテーブル・ひいては彼女等がいる”恵比寿レストラン”の空間から立ち去ってしまった。
当たり前の事かもしれないが、”雨田家の中”とは状況が違うのだろう。
別に冷たい対応な訳でも、素っ気ない対応をされている訳でもないが……満足に話しも出来そうにない。
「……じゃあしょうがないし……食べましょう。……って、厘は注文は……まだ?」
澄玲が見ると未だに厘は『ぅぅん……』と悩みながらテーブルの中ほどに視線を送り続けている。
「……ぁ!これだ!『ペシッ!』ふふん!」
厘は注文できる料理を一つ一つ吟味しながらテーブル端のタッチパネルを触っていたが……厘はそこに”何か”を発見して、勢いよくタッチパネルの”注文マーク”をタッチする。
「ぇーと……何を頼んだの?厘?」
実を言うと、ここでは料理を頼んでも、周りの者はソレが届くまで教えてもらえなければ知る事ができない。また、頼める料理は一覧になっている訳ではなく、何を頼めるのか全体的に言って少し分かりづらいシステムを敢えて採用しているらしい。
澄玲や夕お姉さん、勝也が料理を注文した速さから考えると『全ての料理を見て、その中から選んで頼んだ』と言うよりも『特に料理を吟味して選ばず、目についた料理をひとまず頼んだ』感がある。
まぁ、彼女等・彼等が朝食に頼んだ料理
夕:具だくさんの暖か洋風スープ
澄玲:ハム肉と玉子・バターを載せて色が少し付くぐらい焼いた大きめな食パン×2
勝也:清田校長と同じおにぎり三点セット(但し清田校長はそれに+生サラダ)
は、朝食として見ればそれほどおかしくはないだろう。
「……料理をお持ちしました。ふわっふわっなパンケーキです。『ゴトッ』そしてこれは私からのご提案ですが、ホットココアミルクコーヒーです。『ッ……』それとも”お飲み物”はいりませんか?いらなければお下げします。」
そこで凪乃がまたも訪れる。
彼女はパンケーキ……つまりはホットケーキを厘の目の間に配膳すると、注文にはなかったのであろうホットな”ココアミルク”なのか”ミルクコーヒー”なのか分からない液体が注がれているマグカップをワンテンポ遅れて配膳していた。
「……っ、ありがとう!じゃあナギノンもソコでご飯ね!」
厘はまたも親指を立てて、このテーブルに着いている者と同じ様にして凪乃へ配膳についてのお礼の言葉を送る。また、厘は凪乃もこのテーブルに着いて朝食を摂る様に通告していた。
「かしこまりました。」「ふむ……やはり……」「うん……って、厘?!朝食にホットケーキなんて頼んだの?」「「……」」
厘と同じテーブルにいる者達は厘の頼んだ朝食に反応を示す。
清田校長は何故か得心した様に反応していて、澄玲は”それって朝食になるの?お菓子なんじゃ?”と疑問を募らせ、勝也と夕お姉さんは……恐らくだが、澄玲と同系統な印象を抱きつつも、あえての無反応を返している。
雨田家は……いや、この場合で言うと、澄玲は朝食をしっかりと摂るし、常日頃から子供達にも朝はしっかり摂らせる様にしている。
専ら白米等の穀物か、食パンなどのパン類を主食にして、魚、時にはお肉を主菜として食べさせているのだ。
なので澄玲の考える朝食として疑問を抱かないのは”勝也”と”清田校長”ぐらいなモノと言えるだろう。また、今回ここでの澄玲自身の朝食・バタートーストはパンが結構な大きさな事と、それに載せられている具が結構あると言う事で、ギリギリ良しとしているらしい。
つまり、夕お義姉さんの具だくさんであっても”スープだけ”や、厘の様にパンケーキなだけの朝ごはんに内心は良しとしていない。
三食しっかり取れないとしても、『夜寝る時意外はあまり空腹時を作らない様に!』と澄玲は思っている。
朝の食事を抜く事で、昼まで空腹を我慢しなくてはならなかったり、その間のパフォーマンスが低下すると言う以外でも”空腹”には様々な欠点がある。
例えば一食の食事で得るエネルギーを無駄に溜めてしまう様になったり、身体の 体内時計の様なモノ・時間 を狂わせてしまったり……あまりにも空腹になりすぎて一食を過剰に摂ろうとしたり……
一日の中でも、ペース配分のバランスをよくして食事を摂る事は健康には必要な事だ。
食事の乱れや、数日数回食事を抜いてもそこまで問題にはならないが、それが重なって常態化してしまうと健康に害を及ぼしかねない。
特に、成長段階の子供は身体の発育にも関与してしまうだろう。
「……っ、失礼します。『ガチャ』『ガァ』「ぁ、ナギノン!それナニ?」えっと……賄い料理です。調理で出た余り物の食材を煮詰めたシチューでして……」
澄玲が食事に関して色々と考えを巡らせていると、厘の宝箱を置いていた個所にお盆を置く者が現れる。それは勿論凪乃だ。彼女はおどろおどろしい色のシチュー……いや、色的にビーフシチューらしき液体が入れられている、丸く底が深い皿を持ってきている。
彼女が持ってきたシチューは食材がゴロゴロと端々の角切りがあり、見た目的には有体に言って、残念な感じに見える一品だ。
「えっ?賄い料理?!それって……なんかおいしそうな雰囲気がする!……一口頂戴!」
厘は凪乃の持って来た料理に何か秘められているパワーを感じて味見をねだるのだが……
「ちょっと……厘!?いい加減にしなさい?!お行儀が悪いわよ。」「あっ、いえっ、こちらこそメニューにないモノを持ってきてしまってすみません……ただ、これはおいしい賄い料理ってワケではありませんので……」
そこで澄玲が厘の態度と物言いを注意した。
少し……いや、大分厘は暴走気味だ。
凪乃と一緒にいたいのはまだ許しても良いが、厘は凪乃を困らせすぎている。
凪乃も凪乃で、ちゃんと厘に断ってくれていいし、今までは雨田家でもある程度は無理な事は断ってくれていたのだが……今回凪乃は少し頑張ってしまっている雰囲気があった。
『ピンポンパンポーン……皆様、当船は予定より遅れて出航しましたが、遅れを取り戻す為に、危険にならない範囲で船の速度を上げる事で所定ポイントを予定時間よりも早くに通過致しました。また、この海域の天気は快晴が続いております。急に天候が変わる事もないと判断して、船の甲版区画を一時的に開放いたします。また、それと同じくして弁財プレイルームも開放致します。この区画は遊技場です。この区画に入る場合は金貨を1人1枚提出して頂きます。そこには筐体式のビデオゲーム……ゲームセンター等にあるゲーム機を始め、ビリヤードやダーツ等、数に限りはございますが、それぞれ全て無料で遊びを提供いたします。そして、福禄寿バス・メディカルルームも予定を前倒しして解放いたします。ここでは大浴場の他、様々な種類のマッサージ師が皆様にマッサージサービスを提供する準備をしています。また、気分が悪くなったり、なにか体調で不安がある場合は完全無料のサービスとして、メディカルサービスを行います。どうぞ、皆さま、この航海をより一層お楽しみください。」
「ゲームっ!」「甲板かー周りの風景ってどうなんだろ?」「お風呂……それにメディカルルームか……」「っ「……」」
船は順次、段階的に行ける区画、受けられるサービスを解禁していく。
厘は心をときめかせ、夕お姉さんはカメラを触りながら言葉を漏らし、澄玲はお風呂とこの船の医療施設に興味を抱いている。
「「……」」
だが、勝也と凪乃はどれにも興味を示してはいなかった。
明日(9/20)は小袋怪獣行け!の共同体の日ですね。
時間は11時~17時までで、
11時~19時に仮想怪獣2を進化させると三色攻撃を覚えるとか覚えないとか……
ゲッツイロチ、高個体!NOショック!




