#34~力の保護~
話が変わります。申し訳ありません。
言葉遣いを少し訂正して、分かりやすい表現に変えました
秋穂は大学の講義を終わらせ、
血縁関係も、役所の書類上でも、使用人とその雇い主の娘以上の縁は無いが『出来た妹』と呼ぶ、二歳年下の自分の家に下宿している使用人、風間凪乃を大学のテラスで独り待っている。
最近は妹の同級生の世話を焼くために、あまり話が出来ていない。勿論関係は良好だが、
少し過保護にされている気がする事を除けば…出来た妹の様な年下女子だ。
一つのテーブルを様々な人が遠巻きにして秋穂を見ている。
整った顔立ちに、無駄な贅肉は皆無だが、服の前は自然にふくらみ、程よく引き締まっている足腰は沢山の人間の頬を濡らしている。
主に『喜び』と『嫉妬』と、『惨敗』の涙である。
「金山さん、ココ、相席してもいいかい?よければ…話をしたいな…」
と言うのは清敬大学の剣道部に所属する文系学部の三年男子、吉川恭輔である。座る前にあたりを見回して椅子を引いた。
「吉川君…他にも空いている席があるだろう?悪いが人を待っていてね…待ち人が来た時に君と話し込んでいては悪い。すまないが遠慮してもらえるとうれしい。」
と素っ気なく対処する秋穂は『また君か…』と言う無音の声を身体で発していた。
「そんな事言わないでよ~…少しだけ!ねっ?待ち人って金山さんの所の『凪乃ちゃん』でしょ?誰か分かるし、来たら逃げるからさ!」
と言う吉川は強引に席に座る。周りにいる男子の頬は『羨望』の涙で濡れているかもしれない。『その手があったか!!』と…
秋穂はこういう方面には疎く、いつも周りの男子が気を回してくれるのか、特定の男子と仲良くなった事は無かった。密かな、本人の悲しむ事では、一番仲の良い異性は妹の友達だ。いや、友達ではないのかもしれないが…如何せん、年が離れすぎている。
「早速だけど、金山さん!大学でも剣道しようよ!女子部には俺から話し付けとくからさ!金山さんの腕なら三年からでも十分。即レギュラーで、大会で勝ち進める以外でも、練習に箔がつくし、強い後輩が集まってくるしさ!今後の清敬大学剣道部の為に、ひいては後輩の為にも!お願い!!考えてみてよ~予定が良い時に練習に付き合って貰うだけ。でも良いしさ!!」
吉川は秋穂とは『清敬高校剣道部→清敬大学』と同じで、秋穂の攻め方を心得ている。直接でも、『本人・自分の為に』と誘っては駄目で、『今後の部活・後輩の為』という絡め手が最善だ。
秋穂は『部活の…』と考えるそぶりを見せる。『あっ!』と言ったかと思えば話し出す。
「その話はいつもの事として…話を変えて悪いけど…清敬高校の修学旅行で私が持って帰った木刀あったよね?アレってどこから出て来た物か知ってるかい?前から気になってて…部活の事を考えるとその事ばかり考えてしまうんだ…良ければ…」
と話を意図的にそらして吉川に聞いた。
『あぁ、アレ?』と吉川は懐かしんでから話す。
「…あの木刀は、確か…顧問の…土場先生が持って来た物だよ。土場先生が…『××から言われて剣道部に持ってきた』って話してた気がするけど…誰からだっけかな…ここまで出かかってるんだけど……うーん…」
と煮え切らない事を思い出そうと考える。
「ちょっと忘れちゃったなー…あ!じゃあ、剣道部に入ってくれれば思い出した時にすぐ教えられるからさ!よかったら…」
「ふふふ…誘って貰っておいてすまないが…剣道は今は出来ないかな…いろいろやる事が見えて来たし…でも『顧問の土場先生から』って情報は教えてくれてありがとう。助かったよ。私の抱える疑問の解決の糸口になりそうだ。」
『えぇ?アルバイトじゃないんでしょー?』としつこく勧誘する吉川。
秋穂のお礼と笑顔を見ると『じゃ、本題はこっち』と口の中で言って切り返す。
「ま、まぁ、部活の強制はしないよ。でも、いつでも入部の連絡を待ってるから、このメモに書かれた電話番号にでも連絡してよ!いつでも待ってるから!別に暇な時の話し相手でも良いし!…でも…木刀か…なつかしいね…他にも何か力になれるかもしれないから聞かせてよ。」
『秋穂とお近づきに成れる』チャンスと電話番号・メールアドレス等の連絡先が書かれたメモ用紙をテーブルに置き、今は好機と話を続ける。
「いや、大した話じゃないんだけど…あの木刀は『何処の製品なんだろう?』と疑問を持ってね、手にしっくりくるし、全然割れないし、傷つかないんだ。今は燃えて半分になっちゃったけど…ん?吉川君?どうかしたの?かな?」
話を聞く吉川は顔色を変えて秋穂の話に相槌も打てないほど状態がおかしかった。歯を『カッ、カッ……カッカッ…』と打ち鳴らしている。
秋穂と同じ二十歳の男性で、剣道で鍛えた吉川にしては珍しい。『ん?』と秋穂は聞く。
「吉川君?具合が悪いのか?良ければ救護室にでも行く……」「よ、用事を思い出した!!から、悪いけど行かせて貰うよ、じゃ、じゃあ、良ければ連絡、まってるから…じゃ…」
と『スタスタ』逃げる様に早足で歩き去ってしまう。『アワワワワ…』と何処からか声が遠ざかって行く。一陣のささやかな風が吹いた。
『何だ…?』と秋穂が不思議に思っていれば、秋穂に声をかける人が現れる。
「秋穂お嬢様?お待たせして申し訳ありません…私もコーヒーを一杯飲ませて頂いてもよろしいですか?喉が渇いてしまったので…」
『ん?あ、ああ、勿論。』と返事をする秋穂はテーブルに有ったメモ用紙が無い事に気が付く。
『吉川く…』と声を出して追うタイミングで風間が声を被せる。
「秋穂お嬢様。お忘れかもしれませんが、私は一年生で、ここのテラスの勝手をまだ理解してません。申し訳ありませんが、手ほどきをお願いします。他の雑事は私が済ませておきますので…吉川先輩ですよね、私も知っておりますし、私の出席してる講義で見かけた事があります。今無くした様子のメールアドレスや電話番号等の連絡先は私が今度の講義で見かけたら聞いておきます。」
『あ、あぁ悪いな…』と返す秋穂は風間にテラスの簡単な使い方を教えに義姉妹二人で連れ立って歩く。
秋穂は風間の言った『メールアドレスや電話番号』という言葉に『そこまで聞かなくても…』と思っていた。吉川のメモをしっかり見ていないのでメールアドレスが書かれているとは思わなかったのだ。
メモ用紙は既にゴミ箱の中である。
不定(ry




