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力の使い方  作者: やす
三年の夏
348/474

#347~力の船に乗る!1日目、前編~

『ブウゥゥゥゥ……』『ピンポンパンポーン……皆さま、大変長らくお待たせしました。間もなく出航致します。次にこの船が先程の”音を鳴らす合図”をしますと、”セブンスハッピーとレジャーシップ”は水藻港から離れ、船の動力で前進を始めます。その際に船は揺れる可能性がございますので、皆さまの安全の為にも、皆さまは近くの手すりにお捕まり頂くか、安定している椅子に着席をお願い致します。もし皆様から何かありましたら、どんなことでも構いませんので近くにいるスタッフにお声かけください。……もう一度繰り返しお伝えします。……間もなく”セブンスハッピーとレジャーシップ”は出航致します。次にこのふねが……』

”セブンスハッピーとレジャーシップ”が汽笛を鳴らすと、誰かは分からないが女性の声で船内放送が流される。


「あっ「……」」「おっ「……」」

セブンスハッピーとレジャーシップで今一番乗客が多くいる区画・布袋損ベッドルーム、その7階の77番と銘打たれた一室にいる者達が船内放送を聞いて反応していた。

その内の子供達・勝也と厘は静かに顔をあげるだけだが、その二人の母である澄玲と、その二人の伯母である夕は息を吐きつつも顔を見合わせている。


777(スリーセブン)な部屋は4人部屋だ。

船の中なので多少は手狭な空間を予想していたが、角部屋な為か、ホテルのスイートルームを思わせる広さと装飾がなされている。

澄玲と夕お姉さんは、思っていたのとは桁違いで豪勢な部屋だった為に満足に声を出せていなかった。




『ブウゥゥゥゥ……』「……っ「「「!」?」」」『ピンポンパンポーン……”セブンスハッピーとレジャーシップ”は日本時刻:8時35分をもって出航致します。しばらくは突然の”揺れ”にご注意ください。……』

勝也達は部屋の高い位置に備え付けられている窓をそれとなく見つつも顔を見合わせていると、船内放送が”出航”を告げ、続けて船内にいる者に情報を届けていた。

『……各部屋で電源をオンにされるか、又はお近くのテレビ、モニターをご覧ください。我々ゴルドラグループのスタッフにより出航風景を撮影し、即時に編集されて船内限定で映像を出力しております。この制作された映像は”アーカイブ映像”として船のサーバーに保存され、船内にいる間はいつでも見返す事ができます。出航風景の他に、様々な場面場面で映像を制作していく予定です。どうぞ皆さま、、色々な場面をご覧になり、この航海をお楽しみください。』


「あっ、コレ、リモコンか……」

船内放送を聞いていると夕お姉さんがベッドの間に置かれている台からテレビのリモコンの様にボタンがある薄い板状の物を発見する。

「……」

見るからにテレビのリモコンだ。


ちなみに勝也達がいる部屋だが

部屋の出入り口から見ると、ベッドが右横の壁に頭側・枕側を付ける様にして横向きに、手前から奥に四つ並べて置かれている。

さらにその奥・ベッドの向こう側の端にはトイレとシャワールームが置かれ、出入り口から見て左側には台や備え付けのテーブル・椅子が置かれている。

そしてそのテーブル等が置かれている方の壁には大きなテレビモニターが壁一面を覆う様にして設置されていた。

勝也達の家にあるテレビよりも2、3倍以上は大きな物だ。


『ピッ』『♪~~~……

夕お姉さんが壁に付けられているモニターの電源を点けると、ソコには彼等彼女等が乗っている船・”セブンスハッピーとレジャーシップ”を外から撮影してBGMによる演出が(ほどこ)されている映像が流されていた。


『ピンポンパンポーン……皆さま、おはようございます。この船の船長を務めている、ミスト板金(いたがね)です。先程は布袋損ベッドルームのフロントで、皆さまの部屋割り業務を行っていた者です。……』

「あっ、本当にさっきの人は船長さんなんだね。」「う、うん……」

そんなテレビの映像を眺めていると、またも船内放送が始まった。


その声は勝也達が布袋損ベッドルームのフロントで聞いた声と同じモノだ。

夕お姉さんはその声の主が本当に船長だとは思っていなかった様な事を口からこぼし、勝也もその言葉に同意している。

……まぁ船長が、出航前で忙しい頃だろう時に、あんな所で受付業務をしているハズが無いとは思っていたが……

「……あぁ、でも、さっき”下”で”私達にクイズ?を出した人”が『この船の進行予測経路上で未確認物体』……ぁ、船の通る所に”何かある”って言って、”それを確認してた”って話しをしてたみたいだから、船の中でする作業としてはもう”船長が判断をする”事はなかったんじゃないのかな?」

ソコで澄玲は二人の疑問に考えを聞かせる。

金山家が運行する船ならば、『そうマズイ事』はしないし、させないハズだ。


『……現在”セブンスハッピーとレジャーシップ”は20ノット、時速で表すと時速約37Kmで太平洋沖・東を目指して進んでいます。しかし、出力は半分にも満たない、ゆったりとした運行をしております。また、この船の外壁には金山家が制作した金属が使用されていて、氷山やクジラ・イルカ等等々と衝突をしても、全く問題なく航行を続けられるポテンシャルと実績がございます。さらに、我々船を運行するスタッフは『乗客皆様の前にこの船に乗り込み、皆様が降りた後にこの船から下船する』事としています。……つまり、もし何かこの船に問題が発生した場合は、乗客の皆様がこの船から避難して頂かないと我々スタッフも助からない事としています。ですのでどうか皆さま、非常時には勝手な判断で行動をせず、我々の指示に従い、乗客の皆さんからも指示を問い合わせてください。この放送が終わり次第、恵比寿(えびす)レストラン等の区画から順々に利用可能になっていきますので、どうかこのクルーズをお楽しみください。……では最後になりますが、金山春香お嬢様、ハッピーバースデー、誕生日おめでとうございます。また、ご無事なご生還、おめでとうございます。我々スタッフ一同からお祝いの言葉を送らせて頂きます。皆様も太平洋上での素敵な出会いをどうぞご堪能ください。』

……~~♪』

「……ぁ、終わった。」


板金船長の言葉が終わると、モニターの映像が終わり、画面は船の位置と風や天気等のインフォメーション画面に変わる。


『ゴン、ゴン、』「んっ?……あっ、はい。”どうぞ”」

夕お姉さん達はテレビモニターを眺めていると、勝也達のいる777(スリーセブン)な部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。

勝也は扉を見ながら、『部屋の扉を開錠させる』文言を唱えた。


『ガチャ……』「お待たせいたしました……」

重厚な扉を外から押して開けるのは……

「……雨田厘様、”総合サービス”を行います風間です。」

……緑色のエプロンドレスを身に纏う風間凪乃だ。



これから彼らはゆったりとした航海を満喫する事になる。

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