#327~力は驚かない~
「では早速ですが……私のスマートフォンでウェディングドレスの種類とサイズを観る事が出来ます。ひとまずコレを見てから判断してください。」
立花店長は車内の雰囲気を変える為にも”飯吹のウェディングドレス”について話を進める。
「……はぁ……あっ、では飯吹さん、確認してください。」「はいはい……」
猿野アナは”賞品について”の話しを進める事で、要注意人物である彼の妻・立花喜乃について、これ以上踏み込んで話を聞かない様にしている。
「ドレスのサイズ直しで細部が変わってしまうかもしれませんが……」
立花店長はタッチ式液晶の端末を自身の服のポケットから取り出し、飯吹達へ視線を向けて話しながら、取り出した端末を片手で操作してそんな事を言う。
「……おおよそは変わらないハズです。」
その端末を掌で回すと身体を前に乗り出して、飯吹へその端末を差し出した。
「市外のスタフラから取り寄せますが元々は市内のスタフラにあった衣装です。……欲しいサイズのドレスを全て取り寄せます。それを手に取って見て、気に入った物を販売します。勿論全て買って頂かなくても構いません。」
「……」「……ぉ!大きい画面……どれどれ……」「「……」」
猿野アナの目前・飯吹の手前には立花店長から差し出された、小ぶりながらも大きめな液晶には、小さいながらもそれらのドレスをモデルの女性が着る様にして表示されている。
「……うぅん…………」
どうやらその画面に表示されている物はスタフラの内部資料らしい。
液晶に映し出されているドレスは全部で九種類あり、
・赤色が基調のオフショルダーで肩を出す、スカートが大きいドレス。サイズはS~2L、※バストサイズはJカップまで
・橙色が基調の肩ひもタイプのスカートが大きいドレス。サイズはS~L、※バストサイズはHカップまで
・黄色が基調の右肩を布で覆うタイプでスカートが大きいドレス、サイズはS~L、※バストサイズはHカップまで
・緑色が基調の左肩を布で覆うタイプでスカートが大きいドレス、サイズはS~L、※バストサイズはHカップまで
・青色が基調のオフショルダーで肩を出す、スカートが大きいドレス、サイズはS~2L、※バストサイズはJカップまで
・藍色が基調のオフショルダーで腕に少しの袖を通す、スカートが大きいドレス、サイズはS~2L、※バストサイズはIカップまで
・白色が基調の肩ひもタイプ、スカートは小さめなドレス、サイズはS~3L、※バストサイズはKカップまで
・黒色が基調のオフショルダーのスカートが小さめなドレス、サイズはS~3L、※バストサイズはKカップまで
と、ドレスの色によって形とサイズ・着る者の許容サイズが微妙に違うらしい。
白と黒のドレスは大きなサイズも取り揃えていて、豊満な人でも着れる様だ。
「……あっ、白か黒しかサイズ的に着れないデス……」
飯吹はドレスのサイズを見ると着る事が出来るドレスを口からこぼす。
「……っ!、、そっ、そうですか……レンタルですから、出回っている一般的なドレスよりも着やすい物なんですが……ならば、白か黒のドレスにしてもらう……か、やはり……特注でないと「……」ん?「……」うん……」
飯吹の『サイズ的に無理』と言う言葉を聞いて、バツが悪そうにする立花店長だった。
……だが、またも隣に座る彼の妻・立花喜乃が小声で彼に何か囁いている。
やはり、”ウェディングドレスをその日に用意して貰って、当日中に持って帰る”のは、無理な事なのだろう。
しかも飯吹は胸に大きな脂肪を抱えている規格外な女性だ。
「……っ!…………っ?……「「「??」」」……すみません。妻が”これら”のドレスをリサイクルして、特別にドレスを貴女に用意したいそうです。」
立花店長は小声で確認した後に代案を言う。
「「「……」」」
対する面々は立花店長がする小声の確認に疑問を覚えるが……
「ドレスの仕立ては始めてですが……お任せください!……飯吹さんが満足する完璧なドレスを”私が持てる全てを費やして”ご用意してみせます!」「っ!!」
立花喜乃のドヤ顔をしつつの返事に息を飲んでしまう。
『ボゥゥゥゥ……ググッ』「あっ、私達が乗っている車が目的地に到着しました……」『ガァーッガガッ、』
インターネット配信をしている彼等彼女等を運んでいた車はエンジンを響かせて停車する。
猿野アナはカメラに向けて状況の説明をしていた。
「……清虹市で最初に開店した複合商業施設!大型総合スーパーの星&花風台店です。」
ソコは、色黒でイケメンな立花飛鳥が店長を務める総合スーパーだ。
大きな店舗の周りに駐車場を備える、様々な店舗をテナントショップとして取り込んでいる大型店である。
『……ヴオォォォォォ……ブゥゥン!……ゥゥッゥォォォォ……』
「あ、今来たスタフラのトラックは市外のスタフラで保管していたドレスを持って来たモノです。ココで現物のドレスを見てみますか?」「……」「あれって……えっ?」「いっ、今来たんですか?!」「ぅーん、、……流石立花店長ですね!行動が早いです!!」「ぇっ!?今から見れるの?……」
立花店長夫妻、賢人や平岩に、猿野アナと飯吹達が乗り込んでいるゴルドラファミリーが用意した車がスタフラ風台店の駐車場に訪れたところ、スタフラマークがコンテナに付けられている大型トラックが駐車場に現れる。
立花店長はそのトラックが鳴らしたクラクションの音を聞くと、これからの段取りを話し出していた。
何とも手際の良い対応だ。
実は立花店長が清虹市役所前に向かう前、この店のイートインスペースでスタフラ風台店各部門の代表者達と打ち合わせをしていた際、テレビ中継を見ていた段階からもう既にスタフラ本部と市外のスタフラに指示していたのだ。
「どうしますか?店の中にスペースもあるので、ソコで確認して貰っても構いませんよ。」「……」
立花店長は敏腕店長だ。
今この場にいる他の者達とは比べ物にならない程有能なのかもしれない。
「ん「っ「「……」」」」
車内にいる者達は立花店長の周到さ・先見の目を目の当たりにしてスグに言葉を返せない。
「……じゃあ、外は熱いから店の中でお願いします。」
いや、飯吹は立花店長の凄さを目の当たりにしても気を動転させていなかった。




