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力の使い方  作者: やす
三年の夏
321/474

#320~本心の力~

#319~力の本心~のBパート的お話しです。

『ぅ、ウエディングドレス?……ど、どうなんでしょうか?……』

ステージの中央にいる女性は眉毛を八の字にして見せてこちらに顔を向けていた。

『ぇぇ……』


『まさかぁ!?』『み、見えない……』『無理でしょ?今日中にドレスなんて……』『面倒な人だねぇ……』『もぅ……』

しかし、その司会の女性がこちらに顔を向けて投げかける疑問に答える者は誰一人としていなかった。

『♪♪♪』

「……」

それはそうだろう、清虹市市役所前のステージ上で放たれた疑問を律儀にわざわざ答える者はこの場にいるハズもない。


ココはそのステージがある清虹市市役所前から少し離れた所、清虹市市内の西側に位置する総合スーパー(スター)(フラワー)風台店の一角だ。

そこではゆったりとした・真剣に聞けば誰もが聞き入る様なBGMが流れているが、市内にある小中学校が一斉に夏休みに入ったこの時期であっても、客がまだまばらな頃合いである。

「……」

その店にある家電売り場近くには様々な外食チェーン店がテーブルを共有するフードコートが置かれている。

その店内フードコートで飲食やお茶等を伴う休憩をしている者達へ、売り物として展示しているテレビの映像を提供していた。


「……」「……」

さらに風台店以外の日本全国にあるスタフラでもしばしば見られるモノとして、客に紛れる様にして”フードコートで昼食を取ったり・休憩をしていたり・会議をしているスタフラ従業員”があった。


一応は、従業員専用としてバックヤードや事務室等のお客さんが立ち入る事のないスペースで休憩や三食を摂る場合もあるが、店で販売しているお弁当だったり飲み物等を従業員が食べてお客さんに見せびらかす狙いが少なからずにあった。

食べ物等で一番購買欲を沸き立たせるモノは”呑んだり食べたりする様を見せつける事”と言う考えで考案されたスタフラが実施している制度だ。

パート従業員や学生アルバイトが店内フードコートで休憩している事は稀だが、ある程度の役職である従業員や、見てくれの良い従業員等、多少は有名になっている様なパート・アルバイト店員なんかはほぼ毎日そこで休憩をする様にしている。


「……」「……」「……」「……」「……」「……」

だが、今の時間は午前中だ。まだ従業員が休憩する様な時間帯ではない。

それでもそこでテレビを見ている従業員は、今は丁度10人いる。

「……」「……」

集まっている男達は皆真剣な表情でテレビに視線を向けていた。

「……『ピリリィ!』『ピッ!』っ……」

ソコに集まっている従業員の一人は古い型の携帯電話が着信を知らせるも、ボタンを押してそのコール音を停める。


実を言うと今フードコートにある一つのテーブルに集まっている従業員達は、スタフラ風台店にある部門の最高責任者達だった。

その者達が身を包む作業着はそれぞれの部門の最高位に付く者に与えられる作業着である。




「……店長?あの女の人って……話とは違う人ですよね?」

「……うん」

「……景品って、事務室の出入り口に置いてる、”ウンチニー”のバリアブルテレビ……でしたっけ?」

「……うん」

「……どうするんですか?アレ……その……”市長”から何か連絡は?」

「……うっ、ばっ……”それ”は言うなって……」


ソコに集まっている者達の中でも、色黒な男性が皆から責められる様に言葉をやりとりしている。

「はぁ……スタフラも地に落ちたかねぇ……こっちには何の特にもならない、、”あの金山家の婿”ってだけな市長と手を組むなんて……」


そこに集まっている中でも一番白髪を多く頭に混じらせている男性が、その色黒な男性へ批難する言葉を送っていた。

「……ぅ……ぃゃ、でも”市長”さんからの”発注”もありましたし……”メーカーから入荷された商品”の受け渡しと……その代金はちゃんと貰いますから……”手を組む”って程ではないですよ?」


その年齢がばらけている従業員の中でも、ある程度は若い男性は、苦し紛れな返事をしていた。

「ふむぅ……」

言葉を向けられている男性・立花飛鳥店長は心にもない事を言って、その口を閉じる。


どうやら、金山賢人市長・清虹市における旗艦店、(スター)(フラワー)風台店の立花飛鳥店長・電気メーカー”うんちー”

この三者で大ぴらには出来ないやり取りをしていたらしい。


星&花(スタフラ)に聞くのが一番かな?「……っ!?」…………………………続きはロングCMの二つ後で。』

そして立花店長が何かを言えないで悩んでいた所、テレビからは金山市長の囁き声がはっきりと聞こえてくる。

「っ、確か……」

立花店長は金山市長の囁き声を聞くとドコからか携帯電話を取り出して画面を触り始めた。

「……すみません、(わに)さん、今日はこの後をちょっとお願いします。「んっ、今日は最後まで?」あっ、、、一応閉店業務までには戻ります……」

星&花風台店の副店長のスタフラ風台店の偉い役職の中では最年長の鰐中(わになか)は慣れた調子で立花店長を見送っていた。


立花店長としては、閉店までには戻るつもりらしいが……果たしてその”約束”は守れるのか分からない……






『……ダッダッダッ……』


星&花風台店の駐車場である。

この店は建物の外周に駐車場を有していて、店の正面入り口と搬入口の間には従業員用出入り口があり、その付近は従業員が常日頃通勤に使う自身の自動車等が停めてある区画だった。


『……ダッダッダッ、……』

立花店長は自身の車を目指して足を進めている。

『カチッ!カチッ、カチッ……』「んっ?……」『ガアァ!』

立花店長は車のドア施錠を開けてからドアを開けた。

だが、ソコで彼は何かを見つける。


「……っ、どうしたの?!」「んっ?!……」

彼の車の中には訝しむ目をこちらに向ける女性・彼の妻で・双子のつなぎーズの母である 立花喜乃が助手席に座っていた。

「……ぁ、いや、ごめんごめん……ちょっと”探し物”があって……」

「悪いんだけど……今から車を使う。……どうする?市役所まで行くんだけど……」

立花店長は妻の喜乃に降りるか、同行するかを尋ねていた。

「……ぅん……良いけど……あれぇ?おかしいな……昨日の”おやつ”、朝子の分が無くなってて……昨日この車で帰った時はあったんだけど……朝子の”おやつ”、どこにいったか知らない?」

「……い、いやっ……知らないけど……」


どうやら、つなぎーズの妹・立花朝子が昨日のイベントで貰ったおやつが無くなっていて、それを探しているらしい。

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