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力の使い方  作者: やす
三年の夏
315/474

#314~力をおさない者は?~

『あっ、えっと……すみません!”どれでも1つ買ってくれる”と言いましたが、買ってもらう景品には制限があります。』

「っ……ぁ、ああ……」

ここで、フリーアナウンサーの女性はこれから始まるイベントを一番早くクリアしたモノに送られる景品について訂正する。

それを聞く者達は”どうせ金額の制限等がかけられるのだろう”と、続く言葉を想像した。


『制限は三つ、「……ん?」一つ目は買ってもらった物を一人で、自動車や台車等の道具を使わずにその日の内に自宅へ持って帰れる物となります。「っ!」二つ目は金券や貴金属等の換金性の高い物は原則として駄目だそうです。「くっ……」そして三つ目、これもまた”制限”とは言えませんが「?……」一番早く課題をクリアした方が”本当に欲しい物”でなければなりません。なので欲しい物がこの制限の一つ目か二つ目で諦めなければならない場合、その欲しい物の熱量によってはお金を出してくれる金山市長の裁量で制限を緩めてくれます!「……えっ!?」なので金山市長を説得出来れば、私の欲しい物、”土地付き・庭付き一軒家”でさえも買って貰えるかもしれませんっ!!』


「「「「「「「「……」」」」」」」」」

「「「「「うぉぉぉ!!!」」」」」

司会の女性が言った三つの制限……いや、二つの制限とその制限を回避できる条件を聞いた者達は二分された。

”清虹カードを持つ者達を・ココにいる者達を・今現在清虹市に居て、このイベントに参加出来る者達 をどうやって出し抜いて、その”景品”を手に入れられるか?”その考えを巡らせているのか黙りこくる者達と

”ともかく感情を出して、英気を養おう”と、熱狂的に叫ぶ者達だ。

「……そんなん無理でしょ……」

いや、黙っている者の中には冷めた目をしていて”景品”が貰える”勝者”になるのを諦めてさえいる者達もいる様だ。


『では間もなく、”二人の背中を押して導く”イベントをスタートします。……あっ、ココで金山市長から直接聞いた”イベントに参加される皆様へ”開始直前に伝えて欲しいと託された言葉をお伝えします。『命令された事を頭で考えつつ、繰り返し足を上げて、清虹市の皆にはその栄光をもぎ取って欲しい!と言う事だそうです。では、イベントスタートですっ!』『ゴーン、ゴーン!』

市役所前で一人、説明と進行を託されたフリーアナウンサーの女性はイベント名を勝手に省略しつつ、催しの開始を宣言する。

市役所前は元より、公共施設等に設置されたスピーカーは”始まりの鐘の音”を一斉に鳴らしていた。


かくして金山市長が企画する、

『押せ押せ、離れ離れになった二人は?二人はー、やれっやれっ、メソメソするな!るんるん気分で背中を皆で押すぞ導くぞー!!』

が始まる。





『……くそっ!っっ、水藻の駅の方に向かったぞっ!ちがうっ!そっちだっ!……っ、回り込めっ!!』『あぁっ?!くそっ!走りづれぇ……』『てかっ……”これ”がなくてもっ……アノ人ずっとっ……休みなく走り続けてねぇっ?……くっ、化け物だろっ……』

清虹市内の東側、水藻にある駅の近くでは、数名の男たちが連携して”半裸になった”・”その肉体美を惜しげもなく晒す”男性・彦星を追いつめていた。

その絶対的な身体的性能を見せつけられて、彼が”バテる”までは誰かが言い出した訳でもなく、一時的に共闘する事にした男達なのだが、タガが外れた彼・”彦星”は数的優位性をもってしても、男達はその背中にある板に手を付ける事が出来ないでいた。

そして、それが実現しているのはひとえに、男達全員の右・又は左手が赤く染められていて、思う様に身体を動かせていない事に起因している。

そう、彼らはすでに”織姫”でも、”織彦”でもなく……”賢人”が背負う赤いインクを手になじませているのだ。

後は彼、”彦星”ならぬ、”平岩”の背中にある青いインクを左・又は右手で押して青く染め、清虹市中央に建つ市役所まで移動して、そこにある台紙に手を押し付けるだけだ。


「……くっ!……うっ……ふんっ……」『……あっ、駄目だっ、清虹の方に戻るぞっ!……』「ちっ……」

それでも彦星は予想以上の抵抗を見せていた。未だに彼の背後を取る者が誰もいない状況だ。


「……あぁ……痛てて……もうそろそろ戻るかー……ココにいてもしょうがないし、そろそろ頃合いだろっ「……あのー金山市長さんですよね?」ん?あぁ、はい。今夜のイベントに参加されるのなら、背中のインクをどうぞ……って……貴女は……」

織姫に扮した衣装をちゃんと着つつ、リュックを背負う様にして紐が付けられた板を背負う賢人は公園のベンチに座っていたところ、声を掛けてきた女性に対応していた。



今の所は”その豪華な景品”を得ようとして、無理に車道を横断したり、民家や施設に忍び込む者が出ていなかった。

今回の様な”誰もが欲しがる景品”を前にして、それは奇跡的な事なのだが、それは、それらを防ぐのに”効果的な手法”が取られているからだ。

『『『『『……』』』』』

今回のイベントは”私的な行事”であり・企画者の立場ゆえに”警察”を頼るのではなく、金銭的負担が大きくなるが”法力警察”に全面的な警備と市民の監視をお願いしていたからだ。

このイベントは”清虹市として”ではなく、”金山賢人”個人として開催している。なのでイベントスタッフは彼が直接お願いしたモノ達ばかりだ。

金山賢人市長事務所に所属している者達は総合的に・長期間的に賢人に雇われている。

ゆえにこのイベントでは”事務所の者達”に、”彼の友人”として参加してもらっていて、賢人は”周りを巻き込む人柄”ゆえに、市の政策で関わった者や、他の施設に勤める知人も多く、大学等でも仲良くしていた者達へ今回のイベントに”スタッフ”として参加してもらっているのだ。

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