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力の使い方  作者: やす
三年の夏
295/474

#294~力は離さない~

明日(12/14)と明後日(12/15)は小袋怪獣行け!の共同体の日ですね。

時間は両日共に9:00-21:00と長く、特に11:00-14:00の間は セットした卵が半分の距離で孵化したり、砂が多かったり、経験を多く得たりと大忙しです。

という事で今回も早めにあげときまーす。

ゲッツ色チ、高個体!

『ガチャン』『ギィィ……』「どうぞ。」

平岩は自身が借りている部屋の玄関扉を開けて、隣に立つ女性へ先に入る様に声を掛ける。

「……っ、はぃはぃ……ぉじゃましまぁーす……」

レディーファーストとして玄関扉を持つ平岩にギリギリ聞き取れる音量の声を返す飯吹はそそくさと平岩の部屋に侵入する。


「……これが……」

平岩の住処である部屋は四階の端から数えて二つ目の一室で、1Kの間取りとなっている。

玄関から見て、右手にキッチン、左手にトイレ・風呂、奥に4.5畳の部屋がある造りだ。

「……んー……」

飯吹の所と同じく平岩の部屋にある玄関は特に何も置かれておらず、備え付けの小さい下駄箱ぐらいしか目に付く物はない。

『……トンッ』

飯吹は玄関の土足部分に自身の靴を脱ぎ置き、自身の靴下で玄関マットを優しく踏み始める。


『……ググゥ、ガタン』「ふぅ……」

平岩は玄関扉を閉めて、止めていたらしい息を吐き出していた。

平岩としては、エレベーターからこの部屋までの数秒程度、誰にも出くわさなかったのは、いつもなら考えられない程”運が良い”と言える。

いつもならこの階に住む誰かとエレベーターを降りた所で鉢合わせしても不思議ではないからだ。

このマンション・”7カラ11カイ”は1つの階に部屋数が多く置かれ、各階の端に住居者が常日頃集う”共用スペース”が用意されている。


「……おっ、これ……」『ガシン、ガシン、ガシン……』「……っ……」

平岩が玄関でグズグズしていると、飯吹が勝手に部屋へ進み、部屋に置いている腹筋トレーニングマシンを使い始める音が鳴り始めた。


「……っ…………………………飯吹さん、別に構いませんがほどほどに……っ?……そういえば何をしに……」

平岩も玄関で靴を脱ぐと、飯吹の後を追い、部屋で彼女を視界に収める。

飯吹は平岩が部屋に置く、肘で身体を支えて膝で重りを持ち上げる腹筋トレーニングマシンを軽々と使いこなしていた。

下の階は基本的に人が居らず、ある程度の音を発生させてもソコまで迷惑にはならないが、他の部屋に騒音を届けてしまうかもしれない。

平岩は下の階ではなく、横や上に迷惑にならない様に飯吹へ声を掛けていた……のだが、そこで平岩は”そもそも飯吹を何故招き入れたのか?”を思い出す。

「…………”使わなくなったスマホを譲る”と言ったんでしたね……」


平岩の部屋は彼の言う様に本当に物が置かれていない。

4.5畳の部屋には・小さな本棚が1つ・パイプとベッドマットだけで構成されているベッド・ある程度は大きいモニターとATX型の本格仕様な自作デスクトップパソコン・飯吹が今使っているトレーニングマシン、ぐらいしか目に見える範囲では置かれていない。

他は部屋の一面にあるクローゼットに、衣服が詰め込まれているボックスがあるぐらいだ。

一応の情報としては本棚には本だけでなく、小さなボックスが置かれている。

それには工具や小さな電子機器が詰め込まれていた。

本もパソコン関係やトレーニング関係ぐらいしかない。

彼の言う様に、本当につまらない部屋だ。


飯吹がスグにトレーニングマシンを使いだしたのも、それぐらいしか彼女が触れる物がないからだった。



『ピンポーン!』「っ!?……っ……」「……ん?」

そこで、平岩の部屋は客が来たことを告げる。

平岩は不自然なほど大げさに驚いてから反転し、訪れた者を確認しに向かう、飯吹はそんな平岩に視線を向ける。


『ガチャ……』「誰か「……」ん?どうしたの?平岩さん「……」そんな顔して……嫌いな人でも来たの?」「……いえっ……そう言う訳では……」

飯吹は腹筋トレーニングマシンから降りて、玄関前・キッチンの横に置かれているインターホン受け口の前で無言の平岩に声をかける。


『雄二、いるのは解ってる。……早く出てこい……』「……いっ?!キユ……さん……「へ?イッキュウさん?って……”はーい!”の?……」えっ?……い、いえ……一応……この階の他の部屋に住む男性です。……私の”親戚”と言える者でして……」「……あぁ、”親戚の人”ね。」

カメラ付きインターホンに映る、眼鏡をかけた男性は平岩に対して高圧的な言葉を向けていた。


平岩や飯吹、賢人達身寄りのない”虹の子”らが言う、”親戚”とは、幼い頃に同じ施設で寝食を共にした者達を指す”隠語”だ。

賢人と、平岩、玄関扉の向こうにいる仏頂面な眼鏡をかけた男性・”キユさん”は”親戚”、つまり、一つ屋根の下で生活を共にしていた者達らしい。


眼鏡をかけた男性はインターホン越しでも平岩より一回り程度は若そうな見た目の男性だ。見たところ、そんな若さを感じさせない雰囲気を感じられる。

平岩は”キユさん”と”さん”付け呼びで、その”キユさん”は平岩に対して呼び捨てな所から見てもパワーバランスが想像できるだろう。


「いやでも、平岩さん!見た感じこの人、平岩さんよりずっと”若い”よね?「……ぇ?……えぇ……」こんな態度を許すのは良くないよ。」

飯吹は警察署でたたき込まれた、本来あるべき人間関係を作る様に平岩へ文句をつけ始める。

「……ま、まぁ……言ってもしょうがないので……『ドンッ!』っ!「それはダメだよ!」っ、、、」

飯吹はインターホンの横で、平岩を挟む様にして壁に両手を付けて、もう一度言い聞かせる様にして文句を付けた。

彼女は”壁ドン”をしつつ、自身の胸を平岩の胸に押し当て、二人の吐息が交わる程に顔を近づける。

どちらかが口をすぼめれば、相手の唇を問答無用で奪える距離と言える。


『……おい、いつまで無視するつもりだ?……いるのは解ってる。誰といるのかもな。……良いのか?”賢人さん”に言うぞ?「っ!……」『ガガッ……』あっ?開いてんのか』「……あっ!」『ガガァ……』

「あん?……」

来訪者の眼鏡男性”キユさん”は不用心にも玄関に鍵が掛かっていない事を知り、問答無用で玄関扉を開けた。


平岩は今の状況を”誰かに”見られる事を恐れるが、飯吹は平岩を離さない。

「……お前ら……」

「っ……」「あっ!」

玄関扉の向こうには清敬学校の顧問弁護士である沼岡樹癒がいた。

平岩と飯吹の吐息が交わる程に接近して、くんずほぐれつな状態の二人を目撃して口を開けて固まっている。

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