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力の使い方  作者: やす
三年の夏
291/474

#290~力のササ~

『ササァァー……

「……ふんふん……」

「あぁ、厘ちゃん、ちょっと待って……」

雨が降る清虹市、そこにあるサイクリングロードはおおよそで十の字が描ける様に出来ている。その二画目の様に南へ向けて歩く一行がいた。


その一行は女三人で歩いているのだが、ソコまで姦しい訳では無い。前を歩く二人がやや先行気味であるからかもしれない。

また、その前を歩く二人は一つの傘で雨を防いでいる。その傘は透明ながらもやや濃い目の緑色で、アニメや特撮等で見られる様な電子シールドチックな様相を呈していた。

その傘の持ち手は日本でよく見る様なU字ではなく、(つば)で守れられた持ち手・刀の(つか)の様に作られている。


「ふーん、ふーん、ふーん、ふーん、ふーーーんふん、ふーんふーんふーんふーんふーっふーん……」

そんな二人を目で追うのは彼女達を”孫”と呼べてしまえそうな年齢の婦人である。

今でも様々なテレビCM等で使われる曲を鼻歌で演奏していた。昔はお酒や、整髪料なんかのコマーシャルで使われていた、誰もが一度は聞いた事がある様な音階だ。

前の二人は一応放課後であり、その教室あたりで聞けるかもしれない楽曲であろう。


そんな二人の後ろを悠然と歩く婦人は、中身の入っていない買い物バックを肩に掛けて腋に挟んで持ち歩いている。

傍目に見ると、どこかの家の三人姉妹が夕飯の買い物に出かけている様に見えているだろう。

服装は前からピンクのコート・兜鎧・エプロンドレスと、皆バラバラで一部おかしい装いなのだが、不思議と同じ様な雰囲気を三人は纏っている。


「……ん?あれは……」

そんな三人を少し遠くで見つけるのは立派な白い顎鬚をふさふさと揺らす男性だ。

「……んん……何の因果か……」

彼はそんな顔が解る三人に気付くも、特に声を掛けようとはしないらしい


「……まぁ……これも運命(さだめ)か……葉の剣(はのつるぎ)

彼はそんな言の葉を飛ばしながら彼女達に向けて手を振るう。

特に先頭を歩く者の方へ目を向けて発言していた。


「『ギュッ!』あれ?これ…………」「え゛え゛ぇ!!リンチャンチョットソレミセテェェ!!」




「校長!……ふぅ、こんな所でどうしたんですか?」

ドコか遠くを見ていたらしい男性はつい今しがた訪れた中年男性に声を掛けられていた。

「ん?、あぁ、”キミ”か、いやなに、笹の木を”このあたり”で試しに作ってみようと思ってな。」

「あぁー……もうそんな時期ですか……ついこの前”春の入学式”をしたと思ってましたが……」

「うん?まぁ、歳を取れば一日が短く感じられるらしい……キミもそういう時期なのだろう……」

「ははっ……それじゃー校長は一日をどれだけ短く感じているんですか?」

声を掛けた中年男性は白い顎鬚を立派にふさふささせている男性へ気安く声を掛けている。

「……一瞬じゃよ。やる事なす事全てが一日で終わらないぐらいにな。そしてその一日はあとで忘れてしまう程に長い。」

そんな含蓄(がんちく)を垂れ流すのは清敬高校の校長、清田三郎である。そんな含蓄を聞かされた男性は言葉を返す。

「しかし校長……期末試験中は生徒に見られない様にするなら今みたいに自由にしてもらって良いんですが……終業式は必ず参加してくださいね?そんなモノの為に校長不在では規律が……」

こんな風に清田校長へ釘を刺しているのは一学年の学年主任を務める矢吹教諭だ。彼は校長を探していたらしく、それなりにくたびれた様相を呈している。


「いやいや、笹の木は毎年いるじゃろう?」「……実際はそれほどいりません……」「いやいる……」「……パンダじゃあるまいし……」「……ならばパンダを飼うか」「……”結構前にも”言いましたが絶対飼いません。と言うより、その時は”日本ではそう簡単に飼えない”って事が分かって”パンダを飼うのは諦めよう”ってなったじゃないですか……」「知らんなぁ」「……はぁ、コイツは……」


と、放浪校長とそれを追う教職員の攻防はまだまだ続くらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―


「いやぁーこんなにあるとはなぁ……」

飯吹は自身が借りている部屋で一人、預金通帳を開いて眺めていた。

「……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、せんまん、おく、じゅう……んん……」

彼女はソコに印字されている数字の桁を数えている。

彼女は婚活の為に仕事を辞め、永年苦しめられた慢性的な現金不足を解消していた。


後顧の憂いなく結婚仲介所等に出向き、婚活パーティーやお見合いの席で”食うか食われるか”の視線をバチバチとぶつけ合う生活を送っているのだろう。

戦場を変えても忙しいハズの彼女だが、今日はそんな忙しい時にたまたま予定のあいた日なのかもしれない休日の様相だった。


『ガァ……』「……食べ物が無いなぁ……じゃー今日も”どーん”にするか……」『ガタン』

飯吹は冷蔵庫を開け、中にさしてモノが入っていない事を嘆いてから外食に向かう。

まぁ、忙しい身の上ならこういう日もあるだろう……


『ガチャ』「あーでも流石に仕事を辞めてからずっとだもんなぁ……まぁ、他にする事もないし……まぁいっかぁーー」


どうやら飯吹は婚活らしい事を何もしていないらしい……

もっぱら食に力を入れているらしかった。

明日(11/16)は小袋怪獣行け!の共同体の日なので今回も早めに投稿しておきます。

時間は11時~14時と時間が少しアレで、卵は孵化するまでの距離が1/4(0.25倍)です。

なので孵化装置は11時を待ってから、14時までに卵をセットする様にしましょう。


そしてそして、今日は小袋怪獣の剣盾発売日ですね。

……なので次回投稿は遅くなります。悪しからず。

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