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力の使い方  作者: やす
三年の夏
275/474

#274~力は悪くない~

遅くなりました……

遺伝子怪獣(遺伝子組み換え)との縁を結ぶのが結構骨でしてね……

すみません……

少し文章を直しました。

物語は全く変わりません。

「サァァ……『……ガチャン』

雨の降る清虹市、土旗地域にある金山邸の門は閉められる。

神田教諭を見送った千恵が傘を片手に門の鍵を施錠した所だ。


「……です。あの……」「……うん……」

「……ん?」「ガチャ、カッ……」

だが、千恵が今閉めたその門は、スグに彼女の手によってまた開けられる事になる。

軽く雨が降っている中、外の声を耳ざとく聞き取った千恵は慣れた調子で門の鍵を静かに開け始めたのだ。



「……分かりました。では『ピッ』っ……」『ガーーー……』『ガチン……』

秋穂とお喋りをしていた凪乃は金山邸の門を開ける為にスーツの上着ポケットから立派な鍵を取り出すのだが、当の開けようとしていた門が突然開きだし、驚いてしまう。


「お帰りなさいませ、秋穂お嬢様……”ナギノンお嬢様?”」「っ……

「ただいまです。千恵さん」……っ、ただいま……帰りました……」

千恵は丁度帰って来た秋穂と凪乃に気付き、二人を驚かせようとしたのだ。

秋穂は千恵に気づいていたかは分からないが、即座に千恵へ挨拶を返す。

対して凪乃は突然の事に驚き、不自然にどもってしまっていた。

複雑な表情を顔に張り付けて固まってしまっている。

「ん?……あぁ、中へどうぞ。」

千恵は凪乃の様子を不審に思うのだが、なおも雨が降り続ける状況に気付いた様子で一歩下がり、秋穂へ金山邸への道を開けた。


「ありがとうございます。」

『カッカッカッ『カッ、カッ、カッ『タッタッタッ』』』

『ガサッ、ガサッガサッ』

先頭を歩く秋穂は玄関扉前の、雨の当たらない場所まで来ると、傘を閉じ開けてしながら傘を振るう。

『ガァア……』

続けて秋穂は玄関扉のドアノブを引き、玄関内に足を踏みいれた。

『ガサッ、ガサッガサッ』

その後を凪乃と千恵は秋穂と同じ様な動作をして後に続く。



『ガァア、ガタン、カチャン』

「……」「……」「あ「っ、千恵さん、今夜は例年通りに”する”んですか?」……」

玄関扉を閉め、鍵を施錠する千恵は、終始凪乃の態度を気にして彼女を観察している。

だが当の凪乃は千恵の視線に気づいた様子もなく、遂に千恵は凪乃に向けて口を開こうとするのだが、そんな空気を感じ取った秋穂は声を割り込ませるようにして今夜の予定の確認している。


「……ええ。景が張り切って今も準備してるけど……まぁそれもそろそろ終わる頃合いだよ。凪乃……アンタ……どうしたんだい?まさか……風邪でもひいたの?」

玄関内で靴を履いたままの女性達は口を開き話し続ける。

千恵はややフランクな調子で秋穂に答えている。また、凪乃へは彼女の顔色を見てその真意を探っている様子だ。

先ほどはふざけて凪乃に”お嬢様呼ばわり”で声をかけてはみたが、そんな事は別に気に病む事ではないだろう。


千恵は対外的にはキッチリ敬語や謙譲語を駆使しているが、特にこの金山邸にいる”令嬢たち”に関しては砕けた調子で”ややお姉さん”ぶる癖がある。

オンとオフが突然なのだ。中身はそろそろ還暦近くのご婦人なのだが……その切り替わりのタイミングは絶妙で、家の外のモノから見れば彼女は”金山家に静かにかしずく使用人”だ。幼い見た目も相まって、歳を感じさせていない。

まぁ、その姿に反して炊事洗濯家事等の”家事等のお手伝いスキル”は誰もが認めるプロレベルなのだが……


「……いえっ、その……久しぶりに千恵お母さんがここにいるので……なんだか調子が違う感じがして……別に具合が悪いわけではないです……」「ふぅん?……」

凪乃は景や千恵がいる金山邸に、未だ慣れていない事を白状する。


数年前は千恵と景がここ金山邸に在籍していてこれが当たり前の環境だったのだが、それを忘れてしまうほどに、”この屋敷を闊歩する使用人は凪乃だけ”の状況が、彼女にとっては居心地がよかったのだろう。

だが、その状況は凪乃一人に負担がかかりすぎていて、彼女の人生を犠牲にした上での環境だった為に、それを良しとしない四期奥様は頭を抱えていたのだが……それはまた別のお話しだ。

「……まぁ風邪とかじゃないんなら別に良いけど…………あぁでも、しばらくは私たちも”ココに”いる事にしたからね。元気で問題ないなら、スグにでも慣れておくれよ、今夜も”配膳”だけ手伝ってくれれば良いからね。本当は凪乃は何にもしなくていいんだけどさ。好きにしておくれよ。」

「……は、はいっ……」

千恵は娘の凪乃の態度をある程度は理解しているのか、そこまで追及はしなかった。

千恵は凪乃には”含み”を持たせるだけ持たせるも、それを放置しておく事にしたらしい。


「と言う事で秋穂お嬢様?さっき四期奥様に聞いたんだけど……今は高校の先生をやってるんだって?”年下の子”の面倒なんて疲れたでしょうに。今さっきお風呂が沸かせておいたから、今夜は”アレ”だし、これからすぐにでも入ってくださいな。着替えは上がる前には置いときますからね。はい、荷物ちょーだい。」

千恵は煮え切らない凪乃から秋穂へ、お湯を……いや、、水を向けた。


この頃は清敬高校で教育実習をしている為に、秋穂は遅い帰りだったが、今日はたまたま帰りが早く、夕暮れ前の帰宅が出来たらしい。

「……はい。ありがとうございます。」

いつもとは違い、自分の知らない所も、気にもしていない所も至れり尽くせりな金山邸だ。

もしかしたら休日なんかで気を抜いていると、ソファに腰かけているだけで一日が終わってしまいそうな雰囲気がある。

秋穂も若干調子が違っているのかもしれないが、その程度ならば秋穂にしてみれば特に問題に思う所ではない。……と、少なからずに凪乃は思っていた。


『カッ、カッ、カッ、グッ、グッ、』

秋穂は千恵に鞄等の手荷物を渡してから移動して靴を脱ぎ、それを揃えると靴下姿で廊下を歩き出す。


向かう場所はキッチンの方・向かって右側で、もう少し言うと台所の向かい側だ。金山邸の誇る、個人の家にしては大きいサイズのお風呂場である。


今夜は春香の誕生日を”家族とそれに近しい者だけで祝う”のだ。”家族”と言っても、四期奥様と賢人・秋穂に春香に、風間景・風間千恵、風間凪乃の七人で開く、人を呼ばない小規模なモノだ。


景達が主体になって毎年行う集まりで、秋穂と春香の誕生日の”数日後に”例年行う習わしだ。

誕生日当日にそれを行わないのは、何かと”誕生日当日”は忙しかったり、それよりも優先しなければならない”予定”が入っている為だ。

秋穂と春香の誕生日は”色々と”面倒事が多いのだ。

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