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力の使い方  作者: やす
三年の夏
274/474

#273~力は戸惑う~

遅くなりました……

『……ルルル……』『ガチャ』「おぅ、風間だ………………あぁ……今代わる。」

金山邸に鳴り響く電話は手の空いている使用人が受け取る。その使用人は主人を守る盾として、この空間・居間に目を光らせるも、先ほどまでは台所に籠っての調理作業が忙しくて主人の現状を知る由もない風間景だ。

彼は台所から出てきてリビングに置かれている電話に対応し、取り次ぐ相手の居所に当たりを付けている最中だ。

『グゥッ、グゥッ……』

電話機には電話をかけてきた発信者の番号と電話機に登録されている番号から名前が表示されている。

それもあるのだろうが、受け答えはかなり粗野なモノだった。ソコまで人を見て態度を変える景ではないが、1回り以上も年下で自分の所属する会社の社長に対する言葉遣いは終始こんな具合である。

金山家グループに属する中で金山家に直接仕える使用人集団・”家付き”の中で景は最年長の人物なのだ。

電話機はコードレスの機種で、隣の応接間ぐらいならば扉を閉めなければ通話が出来るモノとなっている。


『コンコン、ガチャ』

「……四期お嬢、水上から電話です。”急ぎの用”なんだとか……」「あっ、……風間さん?……ありがとう。」

景はそのままリビングを移動し、手前の扉を開けて四期奥様のいる応接間に電話の通話機を持って行く。

四期奥様は電話を取ろうと腰を上げた所だった様子で、景の差し出した通話機を受け取った。

金山邸は完全防音で、隣の部屋の叫び声でも扉が閉まっていれば聞き取りにくい構造をしているのだが、電話機が呼び出し音を無線通信で発信して各部屋に音を鳴らせる様に出来ている。

四期奥様はタイミング的に一抹の不安を覚えるが、景が台所から”殊勝”にも調理を中断して電話を取ってくれた事にお礼を述べていた。

「……」

賢人は清瀬小学校襲撃事件発生からの金山家の対応の速さと、その後の動きの速さに驚いているらしく、考え込む様に口を開けられていない。まるで元々”予定”していて、すべて計算されていた様な動きの速さとタイミングだ。


「はい……っ、ありがとうございます……ええ……っ…………そうですか……まぁ、今回ばかりは無視するのもアレだし…………っ!本当に?……っ……いえっ、でも……予定が空いてるかは…………解りました……」

四期奥様は景から渡された通話機を耳に当てて、金山家をサポートする使用人の元締めもしている”ゴルドラファミリー”社長の水上藍と言葉を交わす。

「水上さんが?……何を?」

「……」

賢人は通話中であるにも関わらずに電話の用件を聞くが、四期奥様は口を閉じて受話器を耳に当てて、通話相手の言葉を聞いていた。

「……では確認が取れ次第こちらから……いっ、いえ……では連休初日の朝、”水藻港で現地集合”と言う事で……ご苦労様です……」『ピッ』

四期奥様は表情を曇らせるも、水上からの一方的な言葉を聞いてから通話を終わらせる。

「水藻港?水上さんが連休中に清虹にまた来るのかい?……」

賢人は四期奥様の言葉から、またも水上が清虹市に訪れるのか聞く。


”水藻港”とは清虹市内での東端・水藻地域のこれまた東端に置かれている港だ。

結構な大きさを誇る港で、元々は軍港として金山家の”ゴールドラッシュ”と言う建築会社が作った港だ。


「……数日遅れだけど、”春香の誕生日パーティ”を開くんですって」「なっ!……」「……」

四期奥様の言葉に賢人は驚きの声を上げ、景は眉間に皺を寄せるだけで口を開かなかった。

「……ドコで?……いっいや、これはまさか……”君たち”を金山家の催事に引っ張り出す為の取引なのかい?小学校の襲撃なんて……いや、勿論人に言える事ではないと思うけど……」「えっ?……」

前に限無会長は”相手に何かをさせたければ、相手がそうしなけなければならない様に取引を持ち掛けろ。”と言っていた。もしそうなら賢人は”自分にだけは打ち明けて欲しい”と四期奥様に”打診”している。

「……ちょ、ちょっと待って、いくらお父様でも……いえ、お父様だからこそ自分から春香を”危険な”目に合わせる事はしないわよ。それに、リスクが大きすぎるから……そんな手段を取るぐらいなら他にやりようはいくらでもあるし……貴方の事とかで……ねっ?」

「……まぁ、確かにそりゃそうか……」

賢人の清虹市市長はゴルドラグループの資金援助による所が大きい。勿論それだけで清虹市の市長になれている訳ではないが、限無会長がその気になれば清虹市市長の交代はさほど時間をかけずに出来るだろう。

それに比べて清瀬小学校を襲撃させて、その自衛を笠に着て四期奥様に圧力をかけるのは、得るモノに対してリスクがデカすぎる。

言葉は悪いかも知れないが、”たまたま清瀬小学校が襲撃されていた所を金にモノを言わせて圧力をかけてきている”と見るべきだ。

”正しい事”をやる分には、例えその動機が不純であろうとも、それは非難出来るモノではない。

ただし、そうする事で圧力を受ける側は口には出せない部類の悪感情を抱くのだが、そういう所は何とも限無会長らしい所業だ。


「……うん、そういう事か……まぁ、今度の連休は一応私も予定を開けておかなきゃだね?……君の”心配する様に”春香も突然”連休の予定を開けろ”と言われてもだね……まぁ、そこらへんは”夏休み”に入っているから大丈夫だと思うけど……」

賢人は四期奥様が水上に話していた内容を思い出し、春香や秋穂、四期奥様や凪乃……と、春香の誕生日パーティに出席するであろう者たちに慰めの言葉と思いを送っていた。

賢人が呼ばれるかは不明だが、彼は金山家の催事に呼ばれない事もあるし、もし呼ばれても行けなくはないスケジュール状況なのだろう。

なにより、金山家の催事に出席すると言う事は、四期奥様や秋穂、春香達の晴れ姿を拝めるのだ。

昔は”自分だけ”呼ばれない事に不満があったのだが、なにより市長職が忙しいだけでなく、彼女達の写真等をおかずに……いや、お土産にして我慢していたのだ。

また、秋穂と春香はそういう事もあったり、その集まる面子に嫌気がさして自然とその集まりを欠席する様になっていたのだが、それはそれでも賢人としても複雑な心境だ。


「……いえ、実は……豪華客船を貸し切って、船上パーティを執り行うらしいの。それで……”私たち”だけじゃなくて、今回はお父様が名指しで”勝也君”達を招待するように言ってきたのよ……」「……っ゛」「……ふっ……」

四期奥様は心配の種を告白した。賢人はむせて、景は険しい顔から悪だくみをしている様な失笑を漏らす。


明日は小袋怪獣行け!の共同体の日ですね。

時間は11時~14時とここ最近で見ると早く、特別な技は11時~16時の間に進化させると覚えるとか覚えないとかなんとか……

ゲッツイロチ、高個体!

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