#26~力の恐怖~
秋穂は帰宅途中だ。
…さすがに、清敬学校の創始者でもある清田校長にそのまま約束無く、無粋にもただ、調べ物を持って訪れる訳にもいかず、今日は調べ物を諦めていた。
しかし、『そのまま帰るのも』と…思った秋穂は、清敬高校の校門から3年前を思い出す様に、思い出深い、歩き慣れた道を通って帰ろうとしている。
『きゃあっ!!!不審者!!』
と校舎の方から聞こえたかと思えば帽子にサングラス・マスク姿の怪しい男が一人、校舎から校門に走って来る。秋穂は校門の外に居た。
秋穂は『関わるかべきか?……』と躊躇していると校舎から追いかける影が一つ。
秋穂と同じ様な空気を持つ女子が目に炎をたぎらせ、走って追いかけて来ている。
『久仁ちゃん!止めなって!!』と誰かの制止する声も虚しく、清敬高生であろう女子は校門に辿り付く前の男に追いついた。『久仁ちゃん』の手には竹刀が握られている。
男は『振り切れない』と、判断すると、その女子高生に向き合い、秋穂に後姿を見せながら話始める。
「止めろよな?…俺は不審者じゃぁ…ねぇっ!!よっぉぉお!!」
『不審者』の手には鋭利に光る銀光、コンバットナイフ。
『久仁ちゃん』はそれを竹刀で捌く。
秋穂が見守る前で女子高生と男の決闘が始まった…
『くぅっ…』『ザンッ!ザンッ!』『うぅっ……』
『久仁ちゃん』が涙目ながら、ボロボロにしながらも正確に振るう竹刀捌きに初心者の気が無いのを見る男。早々に力を抜き、悪態を付く。
『ちぃっ!俺は悪くないんだからな…俺が帰るのを邪魔する、お前が悪いんだからなっぉぉぉぁあああ!!』
と怒鳴ると『不審者』が右手を挙げて吠える。
「真空の刃ぅぅっっ!!」
男が手を振る様に力を発動させる。
『久仁ちゃん』は『ひっ……』と『不審者』が振る手の軌道から一歩下がって驚くように身をすくめている。
秋穂はたまらず声を出す。
「駄目だ!!それは…飛ぶぞ!!しゃがめ!!『久仁ちゃん』!!」
秋穂の助言が功を奏し、『久仁ちゃん』は『は、はいぃ…』としゃがんだ拍子に転び、打ちどころが悪かったのか『んがっ!!』と気を失ってしまった。極度の緊張に怖さが混じり、極限状態だったのだろう。
真空の刃は秋穂の言う様に刃を少しだけ飛ばす。
しゃがみ、転んで倒れた事で目標を補足出来なかった刃は校門と校舎の間の空間・別名『亀様の庭』の主、玄武の銅像を『ゴンッ!!』と破壊するだけに留める。
ちなみに空間の命名は秋穂だったりする。内緒の事だが…図らずも定着してしまった。
昔、秋穂が部員たちと悪ふざけをして壊してしまった事のある、秋穂にとってはなじみある銅像でもあった。
もっとも、高校開校以来からある銅像で皆からの目印として、また、遊び相手としても有名で、幾度となく壊されているそうだが、その分、修繕も早い。秋穂は『亀だからだろう』と心の中で思っていた。壊れる様を見て懐かしむ秋穂。
男は『久仁ちゃん』が動かないのを良い事に『久仁ちゃん』に歩み寄る。
「貴様…そんな事をして恥ずかしくないのか?良い大人が年下の女子高生に刃物と竹刀で互角に渡り合い、それが敵わないと見れば早々に法力頼みとは…挙句に動かない相手に不埒な事を企てる…ん?」
秋穂が男を言葉で責め始めるとある事に気付く。
「貴様…どこを見ている?正気じゃないのか!!」
男は秋穂の叱責に反応して秋穂を見る。
と、ずり落ちたサングラスで隠されていた目線はおかしく、
男は目を点にして顔の位置と目線が合っていなかった。
男は正気ではないにも関わらず、またも右手を上げ、発言する
『真空の刃ぉっ!』
秋穂はケースにしまったままの木刀でそれを受ける。
『キンッ!』とまたも防ぎ、ケース下半分だけが『ズルッ、ガサッ!』と落ちた。
秋穂は残ったケース上半分を捨てると木刀を構える。
男はすぐに『生成ぅっ!』と発言して手を振るう。
秋穂は『なっ…』と焦るが対処が間に合わない。
男が手を振ると炎をまき散らせる。炎の量が多く、生身では受けきれそうにもない。
止む無く木刀を一閃して払うが、木刀は『ボッ…』と燃えてしまった。
不定期(ry




