#267~力は出かける~
遅くなりました。
今日は小袋怪獣行けの共同体の日で16時~19時と、時間がアレなので早めにあげます。
雄はまた別に進化出来るんで個体値まで気にするなら運も加味して忙しい……
今回は参加人数も多くて通信障害なんて起きて重いでしょうからどうしましょうかね……
卵も時間内にセットすれば四倍速く孵るそうですし……
ゲッツイロチ!&高個体!
『サァァァー……
『ガサッ!』「行くか。」「うんー」「……」
『ガサッ』『『ガサ』』
場所は雨が降る清瀬小学校、時間は下校する頃だ。
先週の休日に清瀬小学校は避難訓練を行っていたが、突如現れた仮面ジャージ集団に襲われた為、児童達は集団登下校をしている。
この頃は教師達だけでなく、児童達も慣れてきていて、彼等は言われるまでもなく小学校の正面玄関へ移動を始めていた。
「……」
しかし、校舎の正面玄関の外に、いつもは見ない者がいた。
勝也達の集団登下校グループ、学校の東から北東方面に下校する”東4班”に、初めて同行する者が一人。
「……っ、、妹さんか……」
”初めて同行する”と言っても、児童の家族や、護衛役なんかの”周りに目を向ける様な”者ではない。
襲われる以前には、春香の姉である大学生の秋穂と、金山家の使用人で護衛である風間凪乃がこの集団に同行していた事を考えると、今回同行する者の方が、この集団により深く関係していると言えるだろう。
「……あ、初めての人もいるので自己紹介をします。三年一組担任の神田です。今日は休んだ子の所に用事があるので、先生も一緒に行動します。宜しくお願いします。」
黒い傘を広げている男性はこのグループの面子である勝也・春香・七川達の在籍する3年1組担任教師・神田圭介教諭だ。
背負っているバックを直しつつ、玄関前に集まっている者達に向けて自己紹介をしている。
『了解しました。人数をセット、我々二人の間を歩く様に。……では下校を開始します。』『グッ、グッ、グッ……』「……っ、……」
いつのまにか神田教諭の背後に現れていた法力警察官二名の内の一人は、無機質なお決まりの文言をあたりに一方的に聞かせると、足を踏み鳴らす様にして歩き出す。
神田教諭は不愛想な態度に気後れするが、歩き始めた法力警察官の後ろを人一人分以上のスペースを開けて歩き始めた。
「……宜しくお願いします……」
『……』『グッ、グッ、グッ……』
神田教諭は気後れしつつも再度声を掛けるも、彼の言葉は無視される様にして言葉は返ってこなかった。
神田教諭や児童達は皆傘をさしているが、法力警察官は誰一人として傘をさしておらず、その全身で雨を受けている。
そんな、雨の中全身で雨を受けていて、手で傘を作ったりもせずに歩く様は”異様”の言葉が適しているだろう。
制服を着た警察官や、作戦行動中の自衛官、雨の中活動する消防士等は傘の使用が認められておらず、雨合羽や水を弾く帽子を着用するのが義務付けられていたり、
”雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい……自由とはそういうことだ!”等と叫びながら、雨を全身に受けながら踊り狂う者がいるのかもしれないが、
この法力警察官達は雨を多少でも防いでいる様な素振りを一切見せていない。
顔を覆うマスクや、身体を包み込むプロテクターがあるから雨を気にしていないのは解るが、それでも顔や目元に付いたであろう雨水をぬぐってすらいないのは異様な雰囲気を纏っている。
「……」「……」「……」「「「「「……」」」」」『『……』』
勝也や、厘・七川・神田教諭に、他クラスの面子も何人かいるが、誰も言葉を発しない。先頭と最後尾を歩く法力警察官は一定間隔で周りに視線を送っているらしく、誰も言葉を発せられない状態だった。
『……目標地点に到達しました。……該当の”二人”以外の者は停止してください。』
通学路を粛々と歩く集団の先頭を歩く法力警察官が立ち止まり、片手を掲げながらそんな言葉を発する。
下校の進捗状況は予定通りで、彼の言う”目標地点の一つ”・雨田家の家の前の事だ。
「あ、じゃあ、皆、さようなら。」「みんなバイバイー」
勝也は先んじて言葉を掛ける。続けて後ろにいた厘も言葉を割り込ませた。
「「おう」じゃ、また明日ー」「「「「「バイバイー」」」」」「「「「「「「……」」」」」」」『『……』』
七川と神田先生は簡単に応じ、神田先生は続けて言葉を付け足した。残り半数は厘の言葉を返し、他の者は無言で手を上げて二人を見送っている。いつもの事だ。
『タッタッ、』『タッタッタッ……』
『ガサッ、』『ガチッ、グアァア……』『ガサッ、』
郵便受けのある、雨田家の立派な門を歩いて通り過ぎる勝也だが、対して小走りで雨田家の玄関扉の鍵を開錠し、扉を開けるのは厘だ、傘は手早く閉じている。勝也も傘を閉じてから後に続いた
「お帰りー」
「……ただいま。」
一見すると家の中に人がいて、帰りを迎える側と帰った者で交わしている様に聞こえるかもしれないが、挨拶を行ったのはどちらも今雨田家に到着した厘と勝也の言葉だ。
厘の挨拶は逆の言葉なのだが、これはいつもの事である。決して勝也の帰りに向けた言葉ではない。
『ゴトン』『ガチャン』「んっ?……」
家の玄関扉は独りでに閉まるが、勝也は玄関から視線を前の物音に向けた。
「……じゃー厘は行って来ます!」「ちょっ、厘っ、」
そこでは厘が玄関内の絨毯にランドセルを置き、敬礼して自身のこれからの予定を告げる。
「そんな所にランドセルを置いて……どこに出かけるんだよ?」
勝也と厘はそれぞれ自室を宛がわれていて、勉強道具や自身の物をそこに置いている。
教科書やランドセル・筆記用具等も自身の部屋に置いているのだが、厘は玄関にランドセルを放置して遊びに行こうとしているのかもしれない。
勝也としては、だらしない厘に何か言いたい事がある様だ。
「じゃーそういう事だから勝兄ぃ、ランドセルお願いねー」『ドタドタ……』『ガチャ……』『ガサッ!』「あっ、おい!だからドコに……」
厘は勝也の手と言葉をすり抜け、玄関を開け放ちながらも傘を広げて駆けて行ってしまう。
『グゥゥ』「……おいっ!ドコに行くんだよっ!?」
勝也は自然に閉まる扉を押さえ、声を飛ばす。
『……ダッ、ダッ、ダンッ』「んっ!……」
一瞬で玄関から姿が見えなくなるほど飛び出している厘だ。だが何か意地の悪い事でも思いついたのか、半分にやけながらも一歩二歩と戻るという姿を見せながら口を開ける。
「……問題です!厘はこれから勝兄ぃが前に1人で行った、”勝兄ぃが今一番行きたい所”に行きます。そこはどこでしょう?……じゃーねー」『トットッ……』
「はぁ?”今一番行きたい所”って……”前に1人で言った”?……あっ、くそっ、」『ガタン、』
勝也は一瞬考えるも、すぐに数ある場所の当たりを絞って家の中に引っ込んだ。
『ドタドタドタドタ……』
勝也は自身の部屋と、厘の部屋へとランドセルを置き、目まぐるしく家の中を走り回る。
『ギュゥ』
ランドセルではないバックを勝也は背負うと玄関で靴を履いていた。
『ガチャ……』『カチャン』『ガサッ!』
勝也は玄関扉を開けて傘を広げつつも雨が未だに降り続ける外へ出る。
厘の言っていた”勝兄ぃが今一番行きたい所”に向かう勝也だ。厘を追いかける事になるが、そうでなくとも結局は出かけていただろう。
行先は勿論、”春香の家”だ。
勝也は雨の降る中、清虹市内の最北端・金山邸に足を向ける。




