247~秘密基地から帰還する力~
前の#246~力の秘密基地:帰還編~のBパート的な感じですが、一応はその続きです。
#246~力の秘密基地:帰還編~の中盤頃のBパートではあります。
「……」「さあ、先に乗ってください。早くこんなとこからは出ましょう。ここは……空気が悪いです。」
春香は雷銅に手を引かれ、ピンク色のベッドが置かれる春香が寝起きしていた空間に来ていた。
そこの壁には足場が天井から四つの柱・ポールで吊るされていて、高さは春香の太もも程度の位置に置かれている。
横に詰めれば人が六人ぐらいは並んで乗れそうだが、一辺は雷銅達が乗って来た足場と同じぐらいの長さで、少し横に長い足場だった。
「……あの、そっちの部屋にある椅子と、テーブルの上に置かれた端末と、トイレのカバーを持って行っちゃ駄目ですか?”アイツラ”に貰った物なんですけど……」
「え?”貰った”って……」
しれっと貰ったとは言えない、”トイレのカバー”を追加する春香を見るに、春香はピンク色のトイレカバーを気に入っているらしい。
「……いえ、ココにある物は警察が捜査の為に後で全て押収します。だから……あ、でも”貴女の物”と言うのなら、調べ終わった後に貴女のお家に届けると思うけど……」
「……じゃあ、今一緒に持って行っちゃ駄目ですか?」
「……ん~……」
春香は執拗に雷銅に意見している。
雷銅はエレベーターに視線を送った後、03に視線を移してから春香に視線を戻す。
「……では、持っていける物だけを先に押収してしまいましょう。……貴方はココで”コレ”を見張っていてください。急ぎます。」
雷銅は春香の背を押して、今持てる物だけを集めて来る様だ。03にエレベーターを見張らせ、女二人だけで物を集めてくるらしい。
『……』「……」
ピンク色ベッドが置かれた空間には平岩と03が取り残される。
「……っ、なら……椅子だけでも持ってきます。」
平岩は逃げる様にして春香たちの後を追う。
『……むぅ……』
普通に考えると、誘拐された子供は、”助かる”と分かれば物なんかは放り捨てて一目散に帰りたがるハズなのだが……
……そういえば春香は腐っても子供でも、あの”金山家”の人間なのだ。
”金山家”の人間ならばどんな奇行でも裏があると納得せざるを得ない。
そんな事を考える03だった。
『……ゴン、ガン、ゴッガッ、ゴッガッ、ゴン、ゴン……』
雷銅達は椅子を足場の中心に置く。その椅子の上にはピンク色のベッドシーツ・トイレカバー・タブレット端末が載せられる。
彼等彼女等のスマートフォンで現場を撮影したりと、一応はそれらしい体で出来ている。彼女は”出来る!誰でも現場検証!”をしっかり読み込んでいるからだ。
「……」『……』
雷銅と03は言葉少なに椅子の両側に立って、椅子の上に置かれたピンク色の品々を落ちない様に抑えている。
『ガッ、ゴン、ガン、ゴンッ、』
平岩は03の右側・彼の背中側に一足で乗りこみ、春香は雷銅の手を借りて足場の左端によじ登った。
「確か……、、このポールを握っていましたが……」
足場に乗った平岩は足場から伸びる、目の前のポールを掴む。
このエレベーターには操作パネルや階層を表示するインジケーター等の類はない。このエレベーターを操作する方法は分からず、手探り状態だ。
「……ここの部分が回る様に出来ていますね。」
『……キュウ』
平岩は右奥のポールを、ネジなどを回す右回しに回す。
ネジ等に限らず、電球や、ベットボトルの蓋等は一般的に”右利きの人が・右手で閉めやすい”と言う理由から、右向き・時計回りに回すと閉まる様に作られている。
これは右腕を回す際、肘を曲げた状態だと右回しの方が可動範囲が僅かに広く、逆に左回しをする場合は肘を裏返さなければそこまで回らない。
何かを回して締める場合は”の”の字を書く様にして回すと締まると覚えると分かりやすい。
例外としては扇風機の羽を締めるネジが羽の回る向きと反対にする為に左回しの左ネジだったり、自転車やバイクなどの右側についているミラーを閉めるネジが転倒した際にミラーが取れるのを防ぐために左ネジだったりする。
『……ググッ……』「「『「……」』」」
「……あれ?動かない……」
足場は一瞬だけ沈んだように思えたが、足場が上がっていく様子は見られない。
「……」「……こっちも同じ様に回せるみたいですが……回してみます」『……』
『キュウ』
今度は反転した雷銅が春香を抱く様な形で左奥のポールを同じようにして回す。
『ググゥ、ガーーーーーー……
「あ、動きました。」
雷銅が左奥のポールを回すと程なくして足場は一瞬沈み、滑らかに上がり始める。
「……」
………………
…………
……
ゥゥゥ……キンッ!』
天井に付けられた明かりが音と共に点滅し、エレベーターが静止する。
「ん?……妙ですね、空気が少し……だけ、違う感じがします。」『……来る時は確認してから来ましたが……指示車も近くにいない……人がいる様には思えませんが……念のために私が先行します。』「あ、はい。」
雷銅はエレベータが着いた所で小さく言葉を漏らす。
エレベーターの出入り口は平岩の横にあり、平岩と03が場所の交換をする。
『ググゥ、ググゥゥゥ、コンッ!』
『……』
03は扉を静かに開けるつもりが、音が盛大になってしまう。
どうやら音がわざと鳴る様に作られているのかもしれない。
『ガッ』『フォ……』『おっつぅ』『ガンッ』『むっ!あっ……』
03が警戒しながらも外に足を踏み出すとそこへ人影が迫り、手刀を繰り出してきた。
だが、人影は今一歩の所で声を出し、不自然な体制で驚きながらも手刀を止める。
03は一瞬遅れて身構えるが、その人影を認識すると構えを解いてしまった。
彼はその人影に口を開く。
『……隊長、確か土旗へ行ったハズですが何故ここに?……』『へ?あれ?ココ土旗だけど……』
そう、そこには01がいた。
どうやら03はココが火狩地域のビル地下から来れる、地下インフラ通路にある空間と思っていた様だが、この場合は稀な事に01の方が正しかった。
『なるほど、さっきまでいた空間は大分深い所で、あそこから土旗商店街近く、火狩のビル地下近く、のどちらにも行ける造りになっているのか……』
03は現在位置をスマートフォンでも確認したらしく、大体の事情を察する。
『ガッ、ガッ、ガッ……』『ガッ、ガッ、ガッ……』『ガッ、ガッ、ガッ……』
雷銅、春香、平岩、01は引下げ戸を越えて、土旗商店街近くの地下インフラ通路を歩いている。
「あれ?閉められてる?」
先頭を歩く雷銅は蝶番で開く四角いマンホールが閉められている事に気付いた。
『ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、……』「ふんっ!」『グガァァ……ガッ!』
雷銅は梯子を昇り、下から押し上げる形でマンホールを開ける。
外は暗く、時間の感覚がまるで分からない。
「……どうぞ、登ってきてください。今は丁度雨が止んでいる様です。」
雷銅は梯子を上ってから地下インフラにいる者へ声を掛けた。
「大丈夫ですか?」「うん……」
『ギュゥ』『ガンッ』
春香はその細腕で梯子のボールを掴み、一段一段を慎重に登っていく。
『ギュゥ』『ガンッ』
思えば長いようで数日の外泊だった。
『ギュゥ』『ガンッ』
時間にして二年近く……ではなく、一週間程度だろうか?時間の感覚がまるで分からないっ!
『ギュゥ』『ガンッ』
てっきり、助けに来るのはいつも自分を”法力で助けてくれる者”かと思ったが、何という事か、警察関係者を除外すると、清虹市の市長である父の同僚兼、幼馴染で、その父・金山賢人の兄弟の様な男性・
平岩雄二だった。
『ギュゥ』『ガンッ』
そういえば、連れ去られた日は自分の誕生日だったが、まだ誰にも祝われていない。
『ギュゥ』『ガンッ』
そうだ、もし、一番初めに祝ってくれたら許すとしよう。
『ギュゥ』『ガンッ』『パシッ!』「えっ?」
等と考えながら、春香が梯子を登っていると上から手を掴まれる。
「大丈夫ですか?持ち上げますよ。」
雷銅が春香の手を持ち上げてくれるらしい。
『ガッ、グググゥ』
何ともパワフルな女性だ。春香の姉の秋穂を彷彿とさせる。
「んっんぅ……」
春香は雷銅に手で引っ張り上げられて外の空気を久しぶりに肺に取り込んだ。
少し寒さを覚える空気だが、雨は降っていない。
土旗商店街の向こう側には住宅街が広がり、その向こうは赤ぼんやりとしている。
お日様は春香と時同じくして顔を覗かせようとしていた。
『ガサッ……』
雷銅はそのまま春香を抱き上げて口を開く。
「帰ってきましたよ。」
「……ただいま。」
いやぁ、本当に長かったです。しみじみ
明日は小袋怪獣行けの共同体の日で15時~18時と、時間がアレですな!
ゲッツイロチ、高個体!




