#244~秘密基地、発見の力~
遅くなりました……
#237~力は空にも負けず~の続きで、#239~力の秘密基地:乗り越え編~と#240~力の秘密基地:発見編~のBパート的内容となっています。
『もう少しココを調べてみましょう。今ある車もすべて持ち主を照会します。……いや、しておいてください。私はビルの管理者にここの防犯カメラの映像を提出してもらって来ます。』『……ガッガッガッ……』
03はこれからやる事を提案した。だが、地下駐車場の天井に設置されている防犯カメラを見つけると提案した事を指示にして、外へ向けて走り出す。
カメラは出入り口に向けられていた。
どうやら彼は地下の出入り口からではなく、一階の正面入り口からビルに入り、捜査の協力を求める様だ。足音は結構な大きさで響いている。
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「ゴッガッン!」「……」『キュウ』
本郷は膝程度の高さまで降りてきている足場に乗るとその足場を支えている柱を握り、それを回転させた。
『グッ、クゥゥゥ……』「あっ!……」『……ダッダッ』「……」
足場は一瞬だけ下に沈み込むと滑らかな動きで上に昇っていく。
その瞬間に平岩が空間に走ってくるが、無慈悲にも足場は天井に吸い込まれていった。
平岩の顔を見る本郷は特に何も反応しない。
「……っ、閉じ込められた?」
平岩は自分たちも囚われの身になった事を嘆いた。
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『そういえば隊長、本当に法力警察辞めるんすか?今朝聞かされたんすけど……またいつもの”辞めるのヤーメタ!”にならないんすか?……えっ?俺らどうなるんすか?……』
指示車の後方にあるスペースで03を待つ09が隊長・01こと飯吹に疑問を重ねる。
『うん……まぁ、ライちゃん……じゃなくて……05が隊長になるらしいよ……』
飯吹は仮面で表情を隠し、声も特定出来ない様に加工されている。だが、素顔を知っている彼等彼女らのチームの面子は安易に想像できる仲になっていた。飯吹は最後の質問にだけ答える。
「……あぁ、マジなんすか……まぁ05が後任なら……え?隊長はなんか問題起こしたりとかしたんすか?いくら何でも辞めるの早すぎません?……え?金とか……次の職とかは大丈夫なんすか?」
09は事情等を何も聞かされておらず、突然の退職に尚も多くの疑問をぶつけている。
『うーん…………問題は起こしてないけど……あ、今回は辞表を提出したんだよね。それが受理されて引くに引けなくなっちゃって……まー死ぬ訳でもないし、また法力警察やりたい時はスグにやらせて貰えるらしいから……もしかしたらまた法力警察するかもだし…そういえば09も”辞めたい辞めたい”言ってたんだから、辞めてみたら?案外何とかなるかもよ?』
飯吹こと01は説明になってない説明で09に答えている。
また09も01と同様に”辞めたい辞めたい”と言っていた様で、09を巻き込むと言う、悪魔の誘惑をしていた。
辞職や転職は人それぞれに価値は違うので時には悪魔の誘惑では無い。飯吹の気持ちとしては可愛い後輩の後押しをしてあげている所存なのだから質が悪い。
『はぁ……あー、そういえば法力警察は今”財政難”って話もあるし、隊長は金吸いまくってるしで即座に切ったんっすかね?~……いや、羨ましいっす……でも俺今月ピンチっすから、辞めるに辞めれませんよ……』
『あーソウナノ……』
ところが09は飯吹の説明の中でお金の心配をしていない事だけを引き合いに出して飯吹の待遇を羨んでいる様にして納得していた。09の”辞めたい辞めたい”は少しの本気が混じっているが、半分は冗談なので飯吹の悪魔の囁きには屈しない。逆に飯吹としては裏切られた感がある。
『あぁー、そういえばお金……私いくらあるのかな?』
いや、飯吹はお金の心配をあえてしていない訳ではなく、ただ単に忘れていただけらしい。
その言葉は小さく、09には聞こえていない。決して飯吹はサケの魚卵が自分にあるのか気にしている訳ではないのだ。
イクラとは筋子のスジ(魚卵膜)を取り除き、産卵前の卵を一粒ずつに分けたモノを言う。
語源はロシア語の”イクラー”から来ていて、ロシア語の”イクラー”はサケの魚卵ではなく、魚全般の魚卵を指している。
飯吹は清虹カードにチャージされる地方通貨の電子マネーで生計を立てている。
チャージ元は銀行の預金から引き落とされているのだが、訳あって預金をココ数年は確認していない。
電子マネーがチャージはされているのだから預金はあるのだろうが……
『ガチャ、ガーーーッ……』『映像を貰ってきました。車は?』
03が雨で軽く濡れたマスクを拭きながら指示車の後部ドアを外から開けた。
『あーはいはい、照会はすべて済んでますよ。映像はココのモニターで確認します。』
09は弾かれた様にして指示車に備え付けられているパソコンを操作し始める。
法力警察の隊員達に支給されているスマートフォンはこの指示車に搭載されているパソコンにデータが共有される仕組みとなっている。
03は自身の持つ法力警察支給のスマートフォンに監視カメラの映像をコピーして貰って来た様だ。
この様に携帯端末等のデータを外部にワイヤレスで保存する機器はネットワークアタッチストレージと言われ、イニシャルを取ってNASと呼ばれている。
設定をあらかじめしておく事で携帯端末やパソコン等のデータを即時にバックアップしたり、データをネットワークを通じて別に保管して端末の空き要領を確保するクラウド化が行える機器と言える。
「ココに今ある車はどれも企業が所有している車ですね。配送業者にこのビルの持ち主である商社、んであっちの車が清敬学校と……ま、どれも怪しい車ではないです。」
09は03に何の問題も無い事を告げた。
配送業者は説明するまでもなく、このビルの持ち主である商社の車はここにあって当たり前だ。
清敬学校は清虹市にあるすべての事業にかかわりがあると言っていい。
清敬学校のOBだったり、OGだったり、職業体験だったり、提携先だったり、顧客だったりと。特に取り立てて場違いな訳ではない。
『ともかく映像を出します。』『カチッ!』『ブゥン……』『『『……』』』
指示車の後方スペースに置かれているモニターには清瀬小学校襲撃事件時の朝から今までの映像が映し出される。
『……黒い乗用車が出庫した場面は無いな……』
『『……』』
03の声に異を唱える者は居ない。
画面は荒い解像度で記録されているが、仮面ジャージが運転しているであろう黒い乗用車の入る部分は認識できるが、その車が出ていく場面を見つけられてはいなかった。
『……だとしたら……どこかに見落としがあるのでしょう。それを探します。』
『う~ん……』『まぁ……』『ルル……ル、ガチャ』
03《バックパッカー》が次の考えを述べているとそこで指示車に通話を知らせる音が鳴り響く、独りでに通話は開始され、隊員の音声が車内にもたらされた。
『雷銅です。土旗の地下インフラで”当たり”を引いたみたいです。”出動”していないのでそこまで手を回せません。応援をお願いします。』
『『……『っ!』』』
01達に衝撃が走り抜ける。
どうやら飯吹達が真相を究明する前に雷銅の方で何かを掴んだ様だ。そしてその報告はココでの捜査の糸口にもなる。
『地下インフラ!それだ!ここにもあるんじゃないか?』『……調べます……』
03は雷銅の言葉をそのまま09に聞くと、彼はパソコンを操作し始める。
『え?えーと……じゃーライちゃんの方は……』『……あ、ここの奥の扉がそのままインフラ通路になってますね。』『よし、隊長は一人で雷銅の応援をお願いします。我々はもう少しココを調べるので。』
飯吹の言葉と09の報告を聞いた03は役割を言い渡す。
『……はいはーい!』『ガャ、ガーーーッ……』『ダッ、ダッダッダッ……』
01は二つ返事で03の案を採用すると指示車の後部ドアを開けて単身走り出す。




