#208~力の道場~
前回の投稿が20日でしたから一日以上あけてしまいました。(すっとぼけ)
ごめんなさい
※ちょっと改稿しました。
話は変わりません。
「……あっ、そうなんです「いえっ!それはおかしくないですか?いくら法力警察が一民間企業だと言っても、辞表提出とその受理と退職金支給が早すぎますっ!飯吹先輩は戦闘部門を統括する隊長ですよ?上の役職の人がそんな簡単に辞められるはずがありません!」……ん?、、、うん?、そうなの?……」
飯吹は斉木課長の言葉をそのまま受け入れそうになっているが、雷銅は飯吹の言葉を食い気味にそれを否定する。
飯吹は雷銅の言っている事が分かっていない。
「……」
雷銅の抗議を尻目に歩き出す斉木だが、その後ろを雷銅、飯吹の順で追っている形だ。
「普通は引き継ぎや後任の育成として、最低でもひと月ぐらいは期間を置きます。……確かに上長の方が軽々しく”仕事を辞める”なんて言うのは組織として問題かもしれませんが、私には飯吹先輩の代わりを務めるのは無理です!もっと現場の、私達の意見を聞いてください!」
雷銅は軽々しく飯吹の代わりに自分を選ぶ、法力警察の上層部へ反発している。話の途中から歩き出した斉木へ非難の目を沿えて。
「……っ……」
斉木もそう思っている節があるのか、雷銅の言葉を止められず、言われるがままだ。
「飯吹先輩の法力暴行現行犯の検挙数をご存知ですよね?、年間で100人は超えています。それもほとんどが一撃です!、次期隊長に私を選んで頂くのは光栄ではありますが、飯吹先輩の代わりにはなれません!、、、、と言うより、なれる人は他にいません!飯吹先輩本人が”辞めるのを止める”と言っているんですから、それを受け入れるベキです!」
「……」
雷銅は鼻息を荒くして飯吹の辞職と斉木の歩みを止めさせようと力説する。
「……」
斉木は苦虫を噛みしめる様に険しい表情だが、それを傘で隠してしまった。
「……っ……」
ついに斉木は立ち止まり、振り返って傘を上げると沈黙を破る。
「……っと、ともかくっ!、、私に言われてもこの場ではどうする事も出来ない。……その話しは後で、、っ、本社に詰めている連中にしてくれ…………」
「……はぁ……」
飯吹は雷銅と違い、自分の事なのに反応が鈍い。
「…………それよりも今は”ココ”だ。」
斉木が傘を持つ手とは反対の手で後ろを親指で指して言う”ココ”とは彼・彼女らの目的地であり、雷銅達の視界にある小高い岩……ではなく、岩を模した外装の建物だ。
アスファルトで舗装された道は斉木の立つ所で終わっていて、そこから先は固い土で整備された敷地となっている。
ご丁寧にもそのアスファルト終端、つまりは斉木の横にはポールが立って……いや、突き刺さっていて、ポールの上にはホームセンター等で見る様な市販の住宅用ポストがあり、手書きの表札等がそのポストに突き刺さっている。
表札には『山篭もり道場』と銘うってあり、『きゅうぼ!弟子・師範』やら、『スペース/じかん貸し、始めました』『世間話でも可!ごじゆうにお入り下さい→』と書かれた板もポストに突き刺さっている。
なんともワイルドで手作り感あふれる表札だ。
『……そんな悠長な事を言っていたら……』『……せめて……』『……すこしは考えて……』『……しょうがないだろう!、私も暇では……』『……さすが何度も修羅場を経験してきている……』『……しかし……』『……アーデモナイ!……』『……コーデモナイ……』
しかし、雷銅には斉木の提案は通じなかった様で、雷銅は斉木の傘と彼女の傘をくっつける勢いで・二人だけの空間で、話し続けている。
「……ふぅん?道場か……」
飯吹は一人、・独特な、・けれども伝えたい事は一目瞭然で・訪れた人が一番始めに目に向け、・もういっそのこと機能的ですらある表札をまじまじと見る。
「じゃー行ってみるか……」
飯吹はポストを見ながら土の地面へ足を踏み込んだ。
アスファルトでは雨水が流れ、ポールが突き刺さっている所から地下に排水されていたが、この土の地面は水を吸い込むモノではないらしく、所々に水溜りが出来ている。
「…………うん?看板の裏になんか書いてある……」
水溜りを避けて歩きつつも表札をしつこく見ていた飯吹は『スペース/じかん貸し、始めました』と書かれた板の裏に何か書かれている事を発見した。
「……ここからじゃ見えないな……」
飯吹は戻って確認する。
「……」
『要よやく。宿泊はNG!だけどよ
やくによる』
そこにはそんな事が書かれていた。
「……道場ってこんなんだったっけ?」
昨今の道場事情に詳しくはない飯吹は疑問を覚えるのだった。
「……」
建物の外壁は岩の様に白っぽい灰色で、継ぎ目が解らない様に出来ていた。言ってしまえば一つの巨大な岩の中身をくり抜き、所々に窓を嵌めて出来ている様に見えてしまう。
”山篭り道場”は横から見ると、底辺と上辺の長さがあまり違わない高い台形と、その左右に背の低い斜めの台形が二つくっついているような建物だ。
ちなみに上から見ると円錐、つまりは円形に見える、岩の様な外壁と相まって、それこそ”山”と言っても差し支えないだろう。
「……ここから?……」
そして一番目を引くのは建物の入り口だ。
外壁の一部がなくなっていて、仕切り板・パーテーションがドンと置かれている。
その後ろには靴や長靴、サンダル等が外からでも見える状態だ。
「冬は寒くないのかな?」
飯吹がそんな感想を言いながら、仕切り板の横から建物の中に足を踏み入れる。
『ググッ……』
建物の床は金属の様でいて、土のような弾力があるモノだった。何で出来ているか飯吹には判断がつかない。
飯吹は何も深く考えずに口を開く。
「たのもーーーーーぅ」
飯吹は時代錯誤的に”山篭り道場”に入っていく。
「「……っ!」、あっ、飯吹先輩っ!……」
飯吹の”大きな掛け声”で傘を揺らす二人だが、白い傘は水溜りに構わず走り出す。
その歩みはイカヅチの如く早い。
『パサッ、パサッ、パサッ、パサッ、……』
飯吹は傘を畳み、外に向けて上下に振ることで雨水を落としていた。
「……すみません、遅れました。」
もう一つの白い傘の下からそんな事を言うのは雷銅だ。
水溜まりを盛大に踏み抜いた代償で、服の所々に泥が付着している。
「ああ、泥まみれじゃん、そんなに急がなくても良かったのに、」
飯吹は勝手に先に行った事を棚に上げて雷銅へ声をかける。
不思議なモノで非難がましく聞こえない。
「……いえ、父ならば雨の中を走っても、まったく身体を濡らさずに走ります。私の修行が足りないだけです。」
「……え?それは流石に……うっ……うん、……まぁいいや、行こう。」
飯吹は雷銅の言葉へ何かを言いかけるが、仕切り板の横に傘立てを発見して白い傘を置くと、雷銅も傘をココに置くように促す。
「はい。急ぎましょう。」『パサッ』『カンッ!』
「んっ?」
雷銅は傘を畳むとそのまま傘立てに飯吹と同じ白い傘を置く。
飯吹は何かおかしく感じるのか疑問の声を上げた。
「……ふぅ、雨がひどくなってきたな。飯吹君の事は私もやれることはやるから雷銅も一旦は……」『カサッ』『バサッバサッ……』
斉木は雨の中にも関わらずに傘をしまい、雨水を落としながら飯吹達のいる軒先に身を潜り込ませた。
途中水溜りを迂回していたため、雷銅よりも遅いが泥は付着していない。
そのかわりにずぶ濡れとまでは言わないが、一番濡れてしまっている。
「う~ん……」
「さぁ、行くぞ飯吹君。心配していても仕方ない。なんだったらすぐに法力警察の募集に応募したら良い。君ならすぐに採用で、また同じ様な地位になれるから心配ないだろう。」
斉木は飯吹が"今後を心配している"と思って楽観するように薦めた。
飯吹の法力は絶大にして、そう代わりはいない。
法力警察は勤続日数・年数等で給料が上がるモノではなく、基本給プラス成功報酬+役職等の手当型だ。
「あ、ハイ……そういうモノだと思うことにします。」
飯吹は白い傘二つと黒い大きな傘が一つ、傘立てに置かれているのを見てから歩き出す。
いやぁ、怪獣狩人世界とか、怪獣子袋行け!とか色々ありましたよねぇ……遠い眼
ごめんなさいごめんなさい




