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力の使い方  作者: やす
三年の春
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#1~力の始まり~

初投稿です。

至らない点(投稿が不定期・慣用句の使い間違い・解読しづらい漢字の使用等)がありますがご容赦願います。

少し改稿をしましたが、話は変わりません。

雨田勝也(あまだかつや)は家からほど近い清瀬(きよせ)小学校に通う小学三年生だ。


集団登校の時期も終わり、個別登校が一年生に許可されて久しい頃である。

勝也は学校指定の制服で1人、清瀬小学校までの道のりを歩いていると、後ろから声をかけられる。

広い歩道の真ん中で街路樹のある、見晴らしの良い場所だった。


「勝也~…何で一人で勝手に登校してるの~!!」

声に気がつき、背後で駆け足が止まった所で億劫そうに振り返る勝也。

「だって春香(はるか)は車か、ろーるだろ?風間(かざま)おねぇさんか、秋穂(あきほ)お姉さんに悪いじゃん。別に何も決めてないんだから…」

「うっそだー!!ナギノンのジェットコースターが怖いんでしょー?秋穂お姉様の車も運転が上手だから、やらせればすごいんだから!!」


意地悪そうに返す女子児童は金山春香(かなやまはるか)、天真爛漫なくせ毛が特徴的なピンク眼鏡女子、伊達眼鏡ではないが、見事に可愛さがマッチしている。将来有望だ。服装は勝也と似た女子用学生服である。


「なっ……ち、ちげーよ!!、秋穂お姉さんはちげーよ!!」

勝也は焦りながらも墓穴を掘ってしまった様だ。

「ふぅーん?秋穂お姉さん()、ね…」『春香!!待ちなさい!!』

春香の感想ののちに空から聞こえる声は二人に浴びせられる。

それは鋭い声だった。

『『はいっ!』』と二人は咄嗟に声を揃えて跳び跳ねる。


空から気球の様にして籠が降りてきている。

「ゲッ!!」「やったぁ!!」

それを地上から見る二人は対照的だった。

勝也は恐れ戦き、春香は満面の笑みである。

「『久しぶりに徒歩で登校する。』と言いだしたかと思えば、大事な筆入れを忘れるとは……良い姉を持ったと感謝なさい!」

籠に乗るのは私服姿とスーツ姿の年上女性が二人で、うち一人の大声が続いていた。


「秋穂姉様がわざわざ!!あ、ありがとうございます!!……春香には出来すぎなお姉様を持って嬉しい限りです……」

春香は媚びへつらう様にして答えている。……弱冠面倒そうだ。


三角形が底辺の籠には三隅からポールが延びて、搭乗する人の頭上の上あたりでポールが集まり、回転する羽が空に向けて取り付けられている。

これはフライヤーロール、一般的に『ロール』と言われる、個人で空を遊泳する飛行機だ。


「風間さん!!悪いが少しだけ待っていてくれ!」

ロール上で春香と話していた女性、金山秋穂(かなやまあきほ)がロールに搭乗するもう一人の女性に叫んでいる。

「……は、はい!秋穂お、お嬢様……申し訳ありませんが……5分以内で……お、お早めにお願いします。」


ロールを運転するスーツ姿の風間凪乃(かざまなぎの)は年相応に焦りながらも主君の期待を裏切らない様に答えている。

ロールを制止した状態で高さを保って浮かせるのは、神経を磨り減らせる調整が必要らしい。秋穂はそれを理解して言葉を返す様だ。

「すまない、年齢の近い出来た(・・・)妹がうちに居てくれて私は嬉しいよ。」『ガコッ…』

早口でそう言うと、籠の縁に足を掛け、勢いをつけて飛び降りる秋穂であった。勿論命綱なんて物はつけていない。

籠からは『妹なんて、そんな…』と聞こえた様な気がした。


ロールの高さは地上から約3メートルは有るが慣れた手つきで籠の縁に足をかけている。

秋穂の服装は私服のパンツルックで動きやすい服装だ。

スタイル抜群で自己主張しすぎない程度に刺激的である。


『ートンッ。』と双丘が揺れもしない様、見事に着地した秋穂だ。

彼女は春香達に向き直ると言葉を紡ぎ出す。

「ほら、春香、一コマ目に遅れてしまう。勝也君も不出来な妹に振り回されて迷惑だろう?いつもゴメンね、よければ今夜にでも何かご馳走するから春香の非礼を許してくれ。」

春香に忘れ物の筆入れを渡しながら勝也に話を振っている。

姉である秋穂は二人のやり取り程度はお見通しの様だ。


「……い、いえ!……秋穂お姉さんにいつも助けて貰っているので大丈夫です。……秋穂お姉さんの目が黒い内は安泰です。春香は……俺が人に強く出れる様になる試練だと思ってます。……大学に遅れちゃ悪いですから…秋穂お姉さんも……急いでください……」

勝也は顔を赤くしながら話を上に逸らしている様だ。

秋穂と風間は大学三年生と一年生で、車とロールの運転免許は取れる年齢である。

「そうだな……風間さんにこれ以上待たせるのは悪いか……ならば、また今度話そう。春香と付き合ってくれる子は貴重だよ。私にも気遣ってくれてありがとう。勝也君、学校までの道中は気を付けて。」

秋穂は勝也の指摘に気づいたように見せ、上空に浮遊するロールに視線を向ける。

秋穂はゆっくりと走り出すと手に力を蓄えた。

土階段(ソイルステイアズ)!!」『ググッ…』

秋穂が技の発言と共に手を振ると歩道脇にある街路樹の土が階段状に蠢きだす。

『ふっ……』

その階段を華麗なステップで登るとロールの籠に跳ぶように乗り込んだ。

『はっ!』『ガクン……』

風間の『流石です。お嬢様。』という声を最後にロールは南に爆進(・・)していく。

『ドサ、ドサッドサッ……』

階段になっていた土は元の役割を思い出したかのように重力に引かれて街路樹の土に落ちていた。


「秋穂お姉さん、すごいな…女の人なのにあんなパワフルな人、他には居ない……風間おねぇさんのロールにも平気だし……」

「……ふん、……秋穂お姉様は少し格好付けなの。…………家ではだらしがないんだから、ロールに乗り損ねちゃったじゃない!私だってロールは平気よ。」

春香は取り繕うように姉の秋穂を貶す。勝也の『お前はどうなの?』と言う指摘は耳に入らない様だった。

勝也と春香は学校までの道を急ぎ始める。

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