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力の使い方  作者: やす
三年の夏
185/474

#184~力は進む。どこまでも~

少し短いですが……

「…………と、ともかくです!今日は斉木課長は休みですが、休日を返上して金山邸に来ますので飯吹さんは斉木課長に本当の事を言ってください。”やっぱり辞めるつもりは無い”と。……飯吹さんの”立場なら”まだ退職願いを取り下げる事が出来るハズです。」

雷銅は飯吹に”退職”の取り消しを勧めている。

飯吹ほどの戦力と実績がある者は人手不足の法力警察にとって喉から手が出る程に欲しく、また手放せない人材だ。

さらに言えば飯吹は責任ある立場の”隊長”であり、取って代われない身分である。

そんな人物が説明も無くいきなり辞めるのは非現実的で、個人でも一大戦力である飯吹なら離反騒動を起こしてもそこまで問題視はされないだろう。

それぐらい飯吹の存在は法力警察内では大きい。


「……むぅ……でも……私も”子供”が欲しいし……丁度いい機会だから結婚に専念しても……」

飯吹の思い描く未来では『そろそろ動き出さなくてはならない次期……』・『良い機会だし……』と迷いながら言葉を漏らしている。

・まだまだ幼い子供だが、部外者の勝也が横に居る事

・同性であっても後輩である雷銅に”こんな事を知られる”事

その二つが飯吹は気恥ずかしく思うのか、飯吹は若干頬を赤く染めて、あと一歩の踏ん切りがつかない様だ。

「っ!……ひ、ら、い、わぁ?……んっ!?…………はっ?!……」

雷銅は先程、飯吹が口から漏らした者を口から絞り出すと何かを思い至ったのか、言葉を続ける。

「いっ……飯吹さんっ!清虹市の市長っ、金山市長の側近と言えばっ……だっ、誰ですか?!」

「……んっ?……」「……」

突然の言葉に一瞬固まる飯吹と勝也だが、飯吹は何の気は無しにその疑問に答える。

なぜならそれは、飯吹が知っている人だし、少し前まで話していた人物だからだ。特にそれほど気負い無く・迷いなく答える。

「……うん。平岩さんでしょ?……あの人は筋肉質で、しっかりした男性だよね?それがな「ああぁあ!……」「!!」……ん?……な、何?……どったの?ライちゃん?……突然大きな声を出して?」

雷銅は飯吹の素早く、迷いない答えを聞き、何かを悟り、大きな声で悲鳴を上げる。

勝也と疑問に答えた飯吹は驚いている。

「くっ……いっ、飯吹”先輩”!!……あんな人が好みなんですか?……いやでも……飯吹”さん”の好みに”ケチ”をつけるつもりはありませんが……それにしたって!……」

雷銅は飯吹を”さん”付けと”先輩”付けとでぶれている。


これは飯吹が法力警察の特別出動時・つまり個人情報保護の仮面を付けている時であれば”先輩”や”隊長”と特別に呼び、素顔の時でも法力警察の面子だけで一緒にいる時は”飯吹先輩”と呼ぶ。

法力警察官でありながらも同僚と知っていて素顔で交流する者達の特別な取り決めが原因だ。

飯吹が警察事務官として素顔の時・どちらも素顔で法力警察官の面子以外の者が居る時は”飯吹さん”と呼ぶ。

警察官でありながらも法力警察官である雷銅陽子の特殊な境遇が”呼び方ひとつ”でも一層面倒くささに拍車をかけている。


つまり、雷銅陽子はそんな面倒くさい敬称の呼び方に気を回せない程テンパっている。

普段の彼女では考えられない失態だ。


「はっ!……わ、分かりました。……金山邸に”刑事の”応援として私が来たからには……その平岩(なにがし)とやらに一言言ってやります!”飯吹さんを(たら)し込もうとするのは止めてください!迷惑です!”と!!……子供をその……なんて!!……道理で話が急すぎると思いましたっ!……告白でもされて、口車に乗せられて、断るに断れないんですね!」『ガチャン!』

雷銅は先程仕舞っていた携帯型フライヤーロールを何処からか取り出し、素早くそれを展開した。

「……ええ!、、ちょ、ちょっと!……ライちゃん!止めてって!誤解だからっ!そう言うんじゃないの!『くっ……嵐生成ストームジェネレーション!』『ブフォォォ……』「うわっ……」『フルルル!……フルゥゥ……』ちょ!、ちょっとー!!待ってぇー!……」

飯吹の制止も空しく、全く逆の状況を勘違いした雷銅は1人、上空高くに浮上する。

『フゥゥン……ブォォォ!……』

雷銅の行先は北で、目的地は西にそれるサイクリングロードの北側に位置する金山邸だ。

その速度は速く。雷の如く、瞬きする一瞬で姿が消える。


「……」「……」

サイクリングロードには二人。勝也と飯吹がポツンと立っている。他に人影は無い。

サイクリングロードを通れば、雨田家まで走って8分・金山邸まで走って15分ぐらいの所に二人は居る。

『飯吹ぴーんち!』「あ、あの……」

ここで勝也と飯吹は口を同時に開く。言葉を続けるのは息が整い始めている勝也。

「……そろそろお昼なんで……厘がごはんの為にウチに帰ってると思うし……俺は家に帰らないと…………」「はっ!」

飯吹は勝也の言葉でお腹の空き具合・腹時計を自覚する。

『ガシッ!』「えっ……」

飯吹は勝也を担ぎ上げ、先ほどのランニングとは比べ物にならない速度で走り出す。

「……まってて!”私の厘ちゃん!!”」

飯吹は走る。自分の願望に従ってどこまでも。

頑張ります。

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