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力の使い方  作者: やす
三年の春
18/474

#17~力の帰る場所~

風間が自分の汗をハンカチでふき取り、綺麗になったランドセルを勝也に返すと、今度は先頭に立って歩く。小学校と春香の家の中間地点に勝也の家がある。金山家の帰り途中に数秒のロスをすれば雨田家によれる立地だが、勝也を家まで送ると言う事で二日連続して春香は雨田家に寄る。


勝也が雨田家の玄関のカギを開けて『ギィ…』とドアを押し、『ただいまー』と帰りの挨拶を言いながら玄関に足を踏み入れる。

………

勝也の後ろには『おじゃまします』と風間がドアを開け続ける様にして続く。最後に入るのは春香。

「ただいまー!!厘ちゃん!!」

と大声で風間と違う挨拶をする始末。既視感がある。

「お帰りなさぁ~~い!!!!……春香ねぇさま~~~ん!!!」

と言って奥から走って来る厘は春香にダイブする…昨日との違いは、春香に抱き付いた厘が続けて『お帰りなさい!凪ノン!!』と言った事だ。流行っているのだろうか、『凪ノン』…勝也は人知れずに黙って上げた手を下げた。風間の返事は『ただいま!厘ちゃん!』とブレない。先にお見送りされ、厘と風間は会っているハズだが…そんな事は関係ないのだろう…



……

………

「…あの、いつ帰るの…で…す?」

時刻はすでに夜の七時丁度である。『あっ!いっけない!!』と春香が言うと、厘としていたテレビゲームの電源を落として立ち上がる。

「じゃあ、もう時間だから私()帰るね~。厘ちゃん、またね~」「またね~」「それでは」「おぅ…」

と言って帰って行く春香…厘も玄関で手を振る…

「…って。風間さん、春香と帰らないんですか?」

風間は春香に手を振ると振り返って言う。

「はい、春香お嬢様はすぐそこで秋穂お嬢様の車をお待ちします。七時に待ち合わせしていたので『ブロロロォォォォ…』あ、丁度来ましたね、『バンッ!』さすが秋穂お嬢様です。『ブォォォォ……”プォ!”ブォォ……』今のクラクションは秋穂お嬢様の合図です。これで今日の私のお勤めは終わりです。」「は?はぁ…え?」

勝也は固まって考える。

「じゃあ、これから風間おねぇさんも帰るんですね?俺も今から晩御飯を買いに行くんで」「いえ、それには及びません。」「えっ?っと、なんで…です?」

雲行きが怪しいと勝也は考える。

「え?風間おねぇさんはいつ帰るんですか?」

「いえ…実は、先ほど仮面の男が来て言いそびれていた言葉ですが。『感謝の意を表して勝也様のお母様が遅くなる時は私が代わりに家事全般をさせて頂きたい』と思います。つまりは『通い妻(・・・)』をさせて頂きたいのです。」

『えぇーっ!』と驚く勝也は困る。

「いっ、いやいやいやいや…困りますよ、そんな事して貰っちゃ…母さんも『良い』とは言わないでしょうし…風間おねぇさんにして貰うとなると春香の家の仕事も出来ないですし…え?それ本当なんですか?春香と春香のお母さんはそれ知ってるんですか?」

「はい、どちらかと言うと、はるか………のお母様から『そうしてあげなさい』と言付かっております。」

『はぁ・・』と何とも言えない勝也は奥様(・・)と言わなかった事に不信感を覚えたが何にも言えなかった。

「じゃあ…母さんに聞いてください。俺の口からだけじゃなくて、母さんも同じように言うと思うんで…さすがに母さんから言われたら帰ってくださいよ?」

「勿論です!まずは澄玲さんから攻略(・・)して行かないと駄目ですよね!」

風間の言葉に何か引っかかりながらも『晩御飯は…』と言う勝也に風間は答える。

「実は厘様のお見送りの時に既に買っております。勝手に冷蔵庫を開けるのは申し訳なかったので、外の(・・)ロールの中にクーラーボックスで保存していますが、そろそろ冷蔵庫に入れておきたいので、手伝って頂けますか?」

と言うので勝也が庭を見るとロールが鎮座していた。用意周到である。

「はぁ…じゃあ、腐らせるのも悪いんで、ひとまず、晩御飯はそれで調理しちゃいましょう。」

「ちなみに、勝也様のこれまでの献立や調理技術はどれぐらいですか?」

「えっと…お惣菜とか、野菜を買って来て一応はバランス良く食べてます。お弁当屋さんの手作り弁当が多いですけど…卵焼きとか、野菜炒めぐらいはします。」

勝也のあまり良くなさそうな献立を聞いて風間は独り言を言った。

「なるほど…そこから攻めてみますか…」

「何か言いました?」「いえ、何も、早速調理しますのでボックスを運びましょう。」

勝也の質問を躱して庭に向かう風間。彼女の足取りがやけに軽く、勝也は内心穏やかではなかった。

不定期に続きます。

すこし体調が悪いのでもしかしたら遅いかもしれません…

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