#177~力の準備の前段階~
東西表記はやめました。
本質的には変わりなしな改稿です。
『ゴトン!!』『カチャン……』「んっ?……」
勝也は一家の中では一番遅いが、それでも一般的には少し早い時間の朝ごはんを食べている。
突然の物音に箸を置き、どうするか迷っている様だ。
恐らくは急な珍客、母・澄玲の高校時代の先輩である、”飯吹”と言う名の女性がどうかしたのだろう。
とは言っても、”母・澄玲の高校時代の先輩”と言うよりかは”担任の神田先生の親戚の法力警察官”と言った方が勝也としては繋がりが大きいし、会ったのも最近の事だ。
インターホンを鳴らしてドアを開けたら突然のしかかってくるあたりの方がどうかしているが……
『…………』「……」
勝也は息を潜めて和室の方に気を張り巡らせるが続けて音がする様子は無い。
「……寝返りでも打ったのかな?」『……カチャ』
そんな事を言って箸を持ち、食事を再開させる勝也である。
勝也が食事をしているのは雨田家の小ぶりながらも大きな一軒家で、食卓が置かれたキッチンだ。
キッチンの扉が無い出入り口の向こうには廊下があり、廊下を挟んで隣はリビングが置かれている。
勝也の居るキッチンから見ると廊下の左にはインターホンの受け口と玄関があり、右には和室・階段・洗面台とお風呂場・トイレがある。
階段は二階に上がる上り階段と地下に下がる階段があり、下・つまりは地下があるが、地下は物置スペースとなっている。
つまり、飯吹を寝かせた和室はキッチンと壁一枚で遮られているだけで、ある程度の音ならばほとんどが聞こえる構造となっていた。
「……さっさと食べよ……」
勝也はどことなく息苦しさを覚えると、箸を若干速く動かし始める。
さっさと朝ごはんをクリアーし、二階の自室から勉強道具を持ってきて、なんともはや殊勝な小学三年生な事か、予習復習の自習・勉強をサクッとする事にした様だ。
普段は自室の二階で自分の時間を過ごすのだが、母・澄玲から”面倒”を頼まれた飯吹に対処する為に一階に居る事にしたのだ。
『ガッ!!』「んっ!……」
だが、その考えは無意味な事となる。
和室である引き戸が思い切りよく開く。
『ダンダン……』
どことなく足音が大きい様に思えるが、足音がそこまで大きくならない様に加工されている廊下だ。
恐らくは勝也の錯覚だろう。
「……んっ……」
勝也が息を呑んで廊下の方を見て待っていると音の発生源が顔を覗かせる。
「……」
そこには般若の様な……いや、眉を八の字にして困ってそうな顔の飯吹が勝也の方を見ていた。
どことなく、雨の日の帰り道に段ボールで『生後八か月です。貰ってあげてください。ワクチン済み』と書かれていたマルチーズを思わせる眼差しの目であった。
_拾う
_疲労して帰る
_拾わないで帰る
_見なかった事にして帰る
勝也はどうしようか一瞬迷うが、それは飯吹から声を出す事で無意味に終わる。
「……あのっ!、ここら辺でっ!、食べ物がっ!、ある所はっ!、何処かなッ?」
「…………えっ?……」
どうやら飯吹は空腹らしい……
「……えーっと……家から左に曲がって、もう一度左に曲がった所を歩いて10分ぐらいの所に、安いスーパーがあって…………あっ、今はまだ開いてないんで……えーっと……家から左に曲がって右に曲がった所?……を15分ぐらい歩いた所に24時間のコンビニがあります。」
勝也は一生懸命に考え、朝ごはんを買えそうな所を飯吹に教える。
「……レストラン的な物はっ?ファーストフードでも良いんだけどっ!」
飯吹は元から温かい食べ物がご所望の様だ。勝也は飯吹の勢いに呑まれている。
「えっ?……えーっと……今の時間なら……家から左に出て、左に曲がった先にあるサイクリングロードを右に行って、商店街の駅近くにバーガーショップがありますけど……歩いたら30分ぐらいは……」
勝也の答えに、飯吹は『くぁ!』と「かぁ!」のどちらにも聞こえる声で鳴き、勝也に向かって親指を立てて歩いていく。
「サンキュー……ボーイ……」
と、無駄に流暢な英語でお礼を言っていた。
「……」『ガッ……』
飯吹が歩き出したのをあっけに取られていた勝也は食卓から顔を出して口を開く。
「……あっ、あのっ!……カップラーメンなら三十秒……と、三分で食べられますけど……」
親指を立てたままの飯吹は背を向けたまま勝也の声に足を止めた。
「イェス!お願いします!御馳走になります!」
飯吹の英語は続けられなかったようだが、今度は韻を踏んでのラップ調に代わっていた。
遅れてしまいました……
風邪でノックダウンして、龍の依頼11もノックダウンしていました……
ブラック杯の難しいは本当に難しい……
あ、それと、話が進まず、エタっております……申し訳ありまーせん……




