#15~力の合間に~
行間を少し付けました。
勝也は舌を伸ばして変に言おうとは思っていなかったが、意識し過ぎて思わず春香の言った様に噛んで言い間違えてしまったのだ。
しかし、勢いよく言ったので『考えようによっては無視して続けられる。』そう開き直った勝也は即座にそのまま続けて補足する。
「良かったら『かつや』って呼んでください…」
『今『かちゅや』って…?』とひそひそ話すクラスメイトを無視して着席する。
内心、少し居づらそうにする先生を尻目に、勝也の後ろでは春香が『金山春香です。席が前だし、仲良くしようね。ピンクが好きだからピンク色の小物を集めたり、話題になった本を読んでます、興味があったら…』と何かを話している。
だが勝也としてはそんな事はどうでもいいくらい混乱していた。
いや……正直に言って羞恥に染まっている。
その後、宣言通りに一時間目の算数は自習として、余った時間は転校生を中心にそれぞれ好きに過ごす。
先生と口論して目立った春香は勝也と共に呼び出され、別の場所で昨日の事情と互いの失態を互いに謝る事で和解する。先生も本来はあそこまで言う人間ではないのだが、転校生の態度で少し思うところがあったそうだ。
勿論、教室に戻った二人はクラスメイトに事情聴取されるのだが、それはまた別のお話。
転校生の双子は第一印象とは違い、すぐにクラスに馴染む。始めは緊張していた様だ。
兄の純一はユニークな性格で受け答えが早く、ボケる時には乗り良くボケる、面白い性格である。
朱音はそこまで印象は変わらないが、とっ突きやすく、竹を割ったような性格だ。
案外、モテる双子なのかもしれない。
放課後に教室掃除をする生徒達。メンバーは座席の縦一列が一班となって掃除を行う。今日担当の一列は勝也、春香、純一、朱音だが、人数が少ないので他の列の男子が一人助っ人として班に加わる。先生も掃除をしているが、今教室には純一と春香を除く生徒のみ。
助っ人の男子は他の列で一人多い男子、七川裕也である。
彼は勝也とは幼稚園前から顔なじみで、だからこそなのかあまり交友は無い。互いに嫌ってもいなければそこまで好いてもいない関係である。『機会があれば学校でも話は盛り上がるし、たまに遊びもする。』そんな関係の男子だった。
「雨田先生!今朝の話は本当なの?襲撃されたって?」「先生はやめてよ…」
この『雨田先生』というのは皮肉交じりのあだ名だが、勝也の両親が医者である事が所以。呼ばれる勝也も良くは思っていない。
その事実を知ってそう呼ぶのは昔ながらの付き合いがある生徒だけで、最近、訂正が面倒になってきている勝也である。しっかりと反応するからそう呼ばれる訳だが…
「襲われた時は春香の家にいたけど…大変だったよ、警察の事情聴取で犯人の特徴をしつこく聞かれたし…その時は駆けつけて来た大人に怒られるしで…春香のお母さんが『届けは出さない』って言ったらすぐに帰れたけど…」
「ふ~ん……大人が怒るって何で?雨田先生は法力を使ったの?」
七川も勝也が法力を使えることを知っている数少ない一人だ。七川の考えに勝也は顔を振ってこたえる。
「春香のお母さんは言わないでくれてたと思うから…使ったけどバレて無いんじゃないかな?怒られた原因は犯人の目の前で目立った事をしたから。って言ってたし…すごい目立ってたのは春香だったけどあんまり怒られてなかったんだよなぁ。」
そんな二人の会話を聞く、掃除仲間の残り一人が会話に割り込む。
「なになに?アマチ―君は法力が使えるの?」
急に話に入りこんできたのは早々にクラスに打ち解けてきている朱音。七川が反応する前に勝也が答える。
「うん…少しは使えるけど…免許は無いから内緒ね…なんでも法力は使えないし…てか、『アマチ―』って?」
「あれ?さっきあだ名は『アマチ―』か、本人が満更でもなさそうに嫌がる『雨田先生』って聞いたけど…違うの?」
朱音は『話が違う。』と言う。『まぁ……良いけど…』と恥かしい心当たりがある勝也は『それで?』と話の先を促す。
「いや、『何の系統が使えるのかな?』って思ってさ…実は私、風系を習ってるんだけど…よかったらその話しない?って思ってさ。」
朝、双子の兄が言っていた『法力の練習』は満更嘘ではないようだ。『法力の練習は冗談。』というのが嘘の様子。勝也は不承不承も応える。
「ウチの家系は水系等が強いらしくて、両親ともに水系集中型だし、水系が今の所は得意。」
と返す勝也は少し難しい話をした。朝の先生への指摘も合わせて考えると、かなりのめり込んで練習している様子。
「なぁんだ…あいつと同じか…今朝の話を聞いて、もしかしたら…とは思ったけど、ざーんねん!」
『へぇ…双子で得意系統が違うの…珍しい…』と、勝也は勝也で感想を口の中でつぶやく。そんな難しい事を言う勝也に七川はからかい交じりに怖い事を言う。
「俺の母ちゃんが『法力を悪く使うヤツは法力警察に捕まるから法力は使っちゃ駄目』って言ってたぞ。警察にもバレてたんじゃないの?」
『どうなんだろう…』と頭をひねる勝也は法力警察の噂を思い出していた。
勝也はまだ法力警察をテレビの中でしか知らない。その怖さと、噂を…
続きます。不定期に…




