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力の使い方  作者: やす
三年の夏
144/474

#143~君の重い力~

#141~力はオモイ~

#142~力のウマいキミ~

のBパート的お話です。

#140~来訪者の告白する力~の続きとなります。

一部文章・セリフ回しを改稿していますが話は大筋変わっていません

申し訳ありません

『『『『『えっ?』』』』』

丁度話していた人物”金山限無がこちらに向かってきている”と、部屋に来訪した秋穂が重大な告白をすると、賢人や四期奥様は勿論だがその場に居合わせている法力警察の面々も驚きの声を上げていた。


「なっ……お父様がここに?……なんだってこんな時にタイミングの悪い事を……」「そうか、だから風間さんがここに……」

四期奥様は父親である限無会長の狙った様な来訪に愚痴をこぼすが、そのパートナーである賢人の反応は違った。賢人は四期奥様に向かって口を開く。

「……四期、こうなったらもう、なる様にしかならない!お義父さんに相談しよう。……私は法力警察に圧力をかけられるツテはないからね……出来ても心象の悪くなる抗議ぐらいだ……っ、いざとなったら私から限無さんに言おう。」

賢人は優しく四期奥様に言うが、四期奥様は首を縦に振らずに考える様にしてから口を開く。

「……いえ、……貴方がお父様に言うのは良くないわ……私から言います。……気が重いけど……」


夫の提案を無下に断っている様に思われるかもしれないが、四期奥様は言葉と裏腹に、少しだけ気を楽にして言葉を結ぶ。

「……貴方の言う様に、なる様にしかならないモノね……ありがとう。貴方のそういう所は美徳だけれど、少しだけ考えが足りないわ……私はそういう所で助かっています。」

叩かれた頬を少しだけ赤くした四期奥様と、少し……いや、大分空回りしている賢人はお似合いの夫婦なのかもしれない。

四期奥様にこれだけの事を言えるのは賢人しかおらず、賢人の事を真剣に考えるのは四期奥様ぐらいなのだ。


「あ、あの……」

取り残されている法力警察の三人は居心地が悪そうにしながらも斉木が口を挟む。

「……本当に申し訳ありません……私たちはここで失礼します。私は正面の玄関から出て行きますが、この萩原と鎌谷の二人は車を取りに階段を降りますので……」

斉木は電話に録音機を取り付けた若い二人を前にして頭を下げながらの言葉である。

斉木だけは正面の玄関から金山家に足を踏み入れているので靴の置き場所が違う。

つまり、斉木は階段を下りても靴が無い。

夫婦とその娘である秋穂達が階段近くでやり取りをしている為、動くに動けないのだ。

「……いっ、いえ……」

四期奥様は顔を赤くしながらも、場所を空けて応える。

「……私も頭に血が登っていました……これまでのお力添えを感謝致します……すぐに学校へ駆けつけて、児童を救ってくれた方たちにする対応ではありませんでした……これからのご活躍に期待しています。ありがとうございました。」

何とも皮肉に取られるような言葉だがこう言う他にない。

斉木は四期奥様の言葉に返答する。

「いえ!貴女の怒りは至って普通です。我々がおかしいのですから……先ほども言いましたが私は個人の時間を使って捜査を続けます。一般の警察に引き継いだのち、情報を共有しながら捜査しますので、何かあれば彼らに言ってください。可能な限り素早く対応を検討させます。」

斉木は言葉を選んで答えるが”対応を検討させる”とは随分と曖昧な言葉になっている。

しかし、斉木一人では法力警察を動かせないのだから仕方がない。

妻子ある斉木にはこれだけでも精一杯危険を冒す言葉であるが、常人としてみればそれは分かりにくい状況となっている。

組織を個人で動かす事は難しく、それを末端の人間が強引に働きかけるのには一定のリスクがある。

それが情に起因するモノで、強行したとしても後から責められる可能性があれば尚更だ。

おまけに法力警察には様々な考えを持った者が居る。

「……では、失礼します……」

斉木は玄関に向かい、萩原・鎌谷の若い二人は階段を下ってリビングから撤収する。



『ダッ、ダッ、ダッ……』

階段を下りる若い警官・萩原は彼の前で一緒に階段を下りている後輩の鎌谷に向けて口を開く。

「凄い家だったな……秋穂さん、”お父様”と”お母様”だぞ?……俺は人前でそんな風に”様”付けで親を呼べねぇよ……しかも使用人の住み込みだろ?後から来た茶色いオッサンは極道張りのメンチ切ってたし、腹に手を入れてたから……あれは”ドス”を仕込んでるな……ってか銃刀法違反じゃねぇか……まぁ、それよかメイドさんって居たか?こんな家のメイドだから、居たらぜってぇ美人だろうし、見たかったな……」

先ほどまで会話に参加できていなかった分、他に誰も居ないのを良い事に、言いたい事を口汚く言う萩原巡査部長である。

「萩さん……あんまりな事言ってると……どこで誰が聞いてるか分からないっすよ?”オヤジさん”もマジになってますから、あんまり軽率な事言わない方が良いっす……俺は金山家のすごい噂聞いた事あるんで、この家にいる間は全部ノーコメントでお願いします。」

鎌谷巡査は若いなりに金山家に恐怖を感じているらしく多くは語らない。

ちなみに”オヤジさん”とは斉木の事だ。

斉木謄さん、謄さん、トウさん、父さん、つまりはあだ名の”オヤジさん”である。血縁関係は勿論ない。


「すごい噂って?」

萩原は鎌谷の”ノーコメント”宣言を無視して知らない噂について聞いた。

「はぁ……なんでも、盗聴器を家に置いて家族の監視をしてたとかなんとか……」

それに付き合う鎌谷も体外だが、先輩思いの部下な様である。

階段下の靴置き場には靴が揃えられていた。

「ひぇー……玄関が三つ四つあるし、地下駐車場もある屋敷だから盗聴器仕掛けてるってのも案外本当かもな……」

靴を履いた二人は駐車場に繋がる金属扉へ急ぐ。

『ガバン!』「ん?萩さん?」

金属扉を開けた鎌谷は、後ろで靴を直す萩原の声を待つ。

「……いや盗聴器は流石に無いだろ……あれ?こんな車あったか?いや?……待てよ?……そういやなんか……人の視線と言うか……何かに見られている様な……何かがあった様な……いや、何かが気になる様な……なんてな!」

「萩さん……」

そんな萩原のふざけた言葉を流し、駐車場への道を塞ぐようにして止まる白い軽トラを回り込んでバンのスライドドアを触る鎌谷だ。萩原もそれに続いて運転席ドアに手をかける。

『……バン!』『……グァーガタン!』

運転席に座った萩原は後ろのスライドドアから乗り込んだ鎌谷の声を聴きながら車の発進準備を行う。

「いや、マジでやめてくださいって!本当に怖いっす……、……まぁでも、ここに生まれた子も可哀そうじゃないっすか……どんな被害に遭ってるか分からないんで笑えませんって……」

「……」

萩原は意地悪く可愛い年下をからかい、鎌谷はそれに乗った振りをして軽く戒めている様に返していた。

自分達の乗って来た紺色のバンのエンジンを無言で点火する萩原である。

『ブルルン!ブゥゥゥ……』

エンジンを始動させると玄関で待っているであろう斉木を拾うために車を発進させた。

駐車場の扉はバンに乗った頃から自動で開き始めている。恐らくは自動で開くモノだと萩原は認識していた。

『キュキュキュ……』

車のスリップ音を鳴らし、バンはほどほどに勢いよく車を出すと金山邸の正面・壊れた門へ向かって行く。


萩原の言った何かに見られていると言う視線は白い軽トラを下げに来た平岩で、駐車場の扉が開いたのは彼の操作によるものである。

気になる正体とはどこかへ行った飯吹であり、斉木の言った”最強の相談役”はしっかりと予定通りに金山邸に預けられたのであった。

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