#140~来訪者の告白する力~
#138~力の来訪者は来訪を告げる~
#139~力の告白~
のBパート的お話です。
少し改稿を入れました。
文章が死んでいた文章でしたので……
お話し的にはほぼ変わりません。
『はぁ……今度は誰?』と四期奥様はため息を漏らし、法力警察官達をにらみつける景に言葉をかける。
「風間さん?この方達は法力警察の方達です。春香の救出”捜査をしてくれていました”が、これからお帰りになるそうです。」
四期奥様は景に説明するのを口実に”帰る”と言った。
四期奥様はそのまま景が締め出す形で送ってくれる事を願う。
景は四期奥様の言葉聞くと、顔を怖くして口を開ける。
「そうですか……防人部隊のなれの果て共で……道理でしけたツラを……」
だが景の怒りの矛先は少し違う。
「……ったく凪乃は何をしてるんだ!……ガツンと言ってやります。外から人が入ってきているのに眼を光らせないのは許されません。……”今は警察”のこいつらなら言うほどではないですが、招かれざる客人であっても、茶の一つも出せない使用人は居るだけ無駄ってぇモンです!今日は学校も休みでしょうから、どこかに居るのでしょう?」
景は自分の娘である凪乃がここに居ない事で腹を立てていた。
秋穂は堪らず口を開く。
「風間さんは、っ……いえ、凪乃さんは倉庫代わりの部屋で寝込んでいます。今日は日曜ですし、彼女も休みとしています。」
景の怒りに戸惑う秋穂は彼女の考えからすると余計な事を口走ってしまう。
「倉庫ってぇと……私達の使っていた部屋ですね。……法力警察の方達をお見送り出来ませんがどうぞ足元に気をつけてお帰り下さい。では失礼します。」
景は近くに誰も居ないドアを『ガチャ』っと開けると、そのままリビングを出て行ってしまった。
四期奥様は、動く気配のない斉木達を見て、一度消えかけていた怒りをふつふつとわかせると言葉をぶつける。
「……ではこの階段から駐車場へ降りてください。靴は下にあるサンダルでも履いて取る様にお願いします。」
「……しかし……」
斉木は異義を唱えるが、四期奥様の有無を言わせぬ顔を見て言葉を続けられない。
斉木達が上ってきた階段から降りなければ、靴が無いので面倒だが、四期奥様は一刻も早く下の駐車場に向かわせたい一心でリビングの階段で斉木達を下に向かわせようと躍起になっている。
斉木は黙っていられず、口を開く。
「萩原、鎌谷、撤収だ……録音機は?『ほぼ出来ていますが……』なら、それだけ仕上げたら撤収だ……」
録音機を付けていた若い二人に確認を取るが、四期奥様の激昂から手を止めていた為に、あと一歩の所で作業をストップしていた様である。
誰も階段を下りない事に苛立つ四期奥様を思い,、斉木は折衷案として余計な事を言いそうな人物に指示を出す。
「……なら、飯吹君、君は一旦下に降りて、私たちの靴を取りに行ってくれ。」
「あれ?はぁ……」
飯吹はどうして良いか解らない様子だが、素直に階段を降りて行った。
「……私は風間さん達を見に行きます。」
秋穂は景の後を追って足早に歩き出す。
『っ……』っと声を漏らす秋穂は、凪乃が寝ている部屋の鍵を閉めた事が良かった事なのか悪かった事なのか解らない。
景の怒り具合がどの程度なのか解らないが、一度怒り出した景を宥める自信が無いのだ。
『ガチャ』っとドアを開けて部屋を退出する秋穂である。
「……では、最後に……これからの行動方針だけお聞きしておきます。話してもらえませんか?貴女なら警察に任せるだけとは考えていないでしょう?アドバイスさせて下さい。」
斉木は飯吹の事をひとまず棚に上げ、これからどうするかつもりなのか四期奥様に聞く。
「……それをあなたたちが……?いえ……」
四期奥様は何もしていないのに引き上げる斉木達を目の敵にしながらも、正直に言う方が早くに引き上げると思い、言葉を吐き出す。
「……私の会社の人達とOBの方たちに応援をお願いします。こう言ってはなんですが、断られはしないでしょう……荒事には無縁の方たちですので巻き込むのは気が引けますが……人数は多いので数を頼りにすれば怪我人も出ないかもしれません。もちろん危ない事はさせませんが……あと、風間さん達の会社にも知れ渡っていると言う事なので……風間さんを筆頭に、そこの数人を主体として動いて貰います。荒事に慣れている方が多いので……」
四期奥様は警察を抜いて考えている様だった。
法力を扱わない警察は、主に説得や何らかの取引で交渉を行い、極限状態になった現場へ、武力行使の突撃する事で誘拐事件を解決する。
これは犯人が最初から最後まで正気を保っていれば有効な手段だが、もし犯人の精神状態が崩壊すれば、身柄を押さえられている者の命が危うくなってしまう。
その点、法力による武力制圧が出来ればその大武力により、瞬く間に制圧する事で身柄を押さえられている人質の生存率が高い。
四期奥様はそれが分かっているのだろう。
四期奥様は言葉を続ける。
「……ただ、誰かに断られる可能性もありますから、そう出来れば良いな……と思っています。”彼女”を連れてきたのはそういう思惑があなたにはあったのかもしれませんが……今は彼女がどの程度出来るかは解りません。それを確かめる余裕もありません……」
「そうです……か……」
そんな曖昧な考えを聞いた斉木は四期奥様の言葉を咀嚼して考える。
言ってしまえば斉木は四期奥様に信頼されなかったのだ。
「…………限無さんの会社なら心配はありませんが……」
斉木は客観的に聞いて、まんざらでもないプランだと思ってしまう。
四期奥様の父親・金山限無の”会社”ならば”何でもアリ””何をやらせてもアリ”となってしまうので当たり前だ。
金山家の会社は、お手伝いの人材派遣関係から宿泊関係、土木関係、製造関係等と一通りの事業を手掛けている。
事業ごとに会社が分かれており、その個々の会社は四期奥様を始めとした子や、孫達が経営している、一大一族グループ企業の会社だ。
とりわけ四期奥様は”人が集まる四季の四期”として一部の人から”良い意味で”恐れられている。
『ガチャ』っと景達が消えたドアが外から開く。
四期奥様は跡を追った秋穂あたりが戻って来たかと見れば……人が違った。
「やぁ……」
それは茶色いスーツを身にまとった男性で、身長は1m後半の二枚目俳優張りの優男。
清虹市では『顔だけ市長』と揶揄されながらも、前市長に次いで連続で市長職を続ける男性である。
歌舞伎役者、プリンス、映画俳優、あせも滴るの……全ての恰好良さを併せ持ち、市長職を降りた後も芸能活動で確実に成功すると言われたその男
金山賢人その人であった。
肌は色白ではないのに光る様に綺麗で目鼻立ちは深く高く、眉毛は薄いながらも存在感を主張する顔立ちである。
「あなた!」
「金山市長……」『『……』』
斉木は唸る様にして驚き、電話に録音機を取り付けていた二人は作業が終了した事を知らせる様にして手を止めて目もとめている。
賢人は四期奥様へ返答する。
「四期、どうなっている?四期の会社は横のつながりが無い。ここは一度集会を開くか?それとも会長に……って、どうした?」
四期奥様は目じりに光るものを溜め、”やっとこの話が出来る”と喜んだのかもしれない。
四期奥様は前のめりで口を開く。
「いえ、…………会長って……お父様に?……でも、お父様の決算報告会は随分とすっぽかしているし……どんな顔をしてお願いすればいいか……きっと怒られてしまうわ……そうしたらあなたの活動資金の援助も……」
四期奥様の声は先細りし、最後はかすれ声で答える。
「なっ!、、んっ!」『パァン!』
賢人はそんな四期奥様に詰め寄り、平手で顔を叩く。
賢人の怒った顔は絵になっていて、真剣な眼差しで四期奥様を見つめている……いや、責め立てていた。
賢人は口を開く。
「君が大切なのはお父様との関係か?四期はそんな馬鹿な理由で一番の解決策である、金山限無会長の力を放棄するのか?」
賢人は四期奥様の行動を非難していた。『なぜ解決出来る人に頼らない?』と。賢人は言葉を続ける。
「四期は自分の弱さの理由を私に放り投げるのか?君が"そうしろ"と言うのなら、そうしよう。……でも君は、そんな愚かな人間ではないだろう?」
『『『っ……』』』
大変リビングに居づらくなってしまった斉木達は息も許さぬ無音で石となる。
暴力に訴えた賢人の手を止める意思さえ放棄していた。
「ぐぬっ……ごめんなさい賢人君……でも、私も会社の人も、お父様の連絡先を知らないのよ……お父様の会社に連絡しても多分、なしのつぶてだし……きっと私を怒っているだろうから、どんな手段に出ても聞いて貰えないわ……本社に行くにも遠いから……」
四期奥様は涙交じりになりながらも声を出す。
それは一見して言い訳がましい声ではあったが、限無も多忙な身である。
本腰を入れて力を貸してくれるとは思えない四期奥様であった。
「そんな事を言って……ここで座しているのは馬鹿のやる事だ!会長がここに来ることはまず無い!遠くても本社の……会長の近くに行こう!君は在宅で仕事を賄えると言って出不精になってしまったな……」
賢人は四期が家で仕事を始めた事を引き出して指摘する。
四期奥様はネット通信での遠隔会議や、電話で仕事をこなす在宅勤務をしているのだが、それが原因と賢人は言う。
勿論買い物や日々の生活で外にも出るので、決して出不精になったわけではないが、四期奥様はそれに関して言い訳をしなかった。
『ガチャ』
賢人の後ろにあるドアが開く。
ドアを開けて来た者が部屋の空気を読まずに口を開いた。
「会長……いや、おじい様がここに向かっているそうです!今期の決算報告会をウチで開くと!お母様は……あれ?お父様?……お母様?」
それは重大告白を持ってきた秋穂であった。
『『『『『えっ?』』』』』




