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力の使い方  作者: やす
三年の夏
135/474

#134~対策の力~

#130~力の対策~のBパート的なお話です。

しかし、時間的には同じではないかもしれません。

「誰なのよ?……ベッドで寝てる人って……」

春香は独り呟くが、考えても仕方がないとカーペットに腰を下ろし、正座でタブレットを触る。

知識(ノウレッジ)が言っていたように、文字入力が全く出来くなっている様でなかなか使いにくいタブレット端末になっていた。

しかし、ネットの情報閲覧はおおよそ出来る様子である。


画面には『連絡』『買い物』『ネット閲覧』の項目があり、現在の位置やネット回線の情報閲覧ができるサイトにはアクセス出来ない。

春香にはよくわからなかったが、検索エンジン情報サイト『ヤグ―?』から文字や画像のリンクをタップして情報が見れるだけなので、そもそもこれにアクセスして見れたとしてもどういう物を表示してくれるのかさえ分からない始末である。

『ん~…………グズン』

春香は何分か意味もない情報収集作業を続けるが、端末を片手に調べるのが面倒になってきていた。泣き顔も収まってきている

一応だが気になった『連絡』をタップしてみると、”知識(ノウレッジ)”とボタン画面が出てくるだけで、これをタップすれば彼への”連絡”が出来ると言う事らしい。

「何もないか……」『ゴトッ』

春香は特に何も出来ない事が分かると、端末をテーブルの上に置く。一応はタブレット端末に表示されている時間が正しいのなら、そろそろ朝ごはん時である。

昨日の昼から食べていないのだから、本来ならば空腹のハズだ。だが、不思議とお腹はいまだに食物を欲していない。

『ブー、ブー、ブー……』『ん?』

だが、テーブルに置いたタブレット端末は震え、画面が自動で点灯する。

『カチッ』

画面を見ると効果音と共に『朝食摂取時間』と表示された。

『グー……』

現金な物でその文字を見るとそんな気配は先ほどまで無かったが、春香のお腹が空腹を主張する。

かなりのストレス環境に置かれているのか、自分の感覚が大分おかしくなっている様だ。

「摂取って……どこにあるのよ……」

しかし、どこに朝ごはんがあるのかはわからない。

仕方なく朝ごはんを求め、手始めにピンクベッドの部屋へ見に行く春香であった。

「無い……」

続いてはトイレ。

「まぁここにあってもね……」

最後は白いベッドの部屋である。

と言うより、春香はそこに朝ごはんが置かれているであろう事は最初から思っていたのだが、眠る男性に苦手意識を持っていた。

わざわざ壁に近づき、顔だけ出して部屋を覗く。

「……やっぱりここか……」

白いベッドの向こう側、壁に付けられたテーブルの上にお椀が一つ置かれていた。

『……』

春香は足音を立てない様に、静かにベッドを迂回して奥に忍び寄る。


白いベッドから伸びるチューブや黒い線は壁を貫通する形で入り込んでいて、その先はどうなっているのかは分からない。

ひとまずは壁にあるテーブルへ向かう。

お椀の中を覗き込むと茶色いクリームのような物が入っていた。白いスプーンがお椀に一つ入っている。

「えぇ……ナニコレ?これが朝ごはん?」

『グーーーーッーーーー』お腹の声は既に大きく、長くなっていた。

仕方なく春香は人差し指をお椀に入れ、そのままその人差し指を口に『パク』っと運ぶ。

「甘い……けど……おいしくは無いな……」

どうやら春香のお気に召す物では無かった様子。

空腹の今ならば無理をすれば食べられるが、おかしな奴らが用意した、あまつさえ得体のしれない物をしっかり口に運ぶのはかなりの勇気が必要だ。

さらにそれがあまり美味しくないのであれば救われない。

春香はそのお椀をテーブルに戻し、タブレットで調べるか、買い物で朝ごはんを頼めるか試そうと足を動かす。しかし、そこで春香は足を止めて頭に過去の場面が去来する。

「あ、でもそういえば……」

タブレットの知識(ノウレッジ)はこう言っていた。『世話も簡単な事だけで良い。食事と、体をタオルで拭くだけだ。』……そう、”食事”である。

さらに『そろそろ刺激を与えて起こさなければ、彼は死んでしまう。』とも言っていた。

ハッキリ言って、この男性を助ける義理はないし、世話もそういう人に頼めば良いのだ。間違っても関係のない自分が誘拐などされてまでやる事ではない。

春香は迷う。

このマズイクリームをこの男性の口に無理やりねじ込むか?

タブレットの”買い物”で自分のごはんを頼むか?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―

「厘、ちょっと出かけてくる。母さんに聞かれたらそう言っといて。すぐ帰るけど」

「どこにー?」『えっ?……』

勝也は妹に声をかける。厘は漫画本を読んでいるので、てっきりそのまま何も言わずに行けると思ったが、予想外の返しで少しあっけに取られてしまった。

場所は雨田家の居間であり、朝食を済ませてから少し経った頃である。

母親は洗濯などの家事で家のどこかに居るが、今近くには居ない。一瞬の隙をついて家を抜け出すつもりが、この妹は大事な所で案外しっかりしている。


「と、友達の所だよ……友達に皆の様子を聞いてくる。」

「ふーん……別に理由は聞いてないけど……電話じゃダメなのー?」

視線は漫画に向けながら、尚も痛い所を突いてくる言葉が続く。

だが、勝也は普通の事を言って返す。

「……電話番号を知らない奴の所に行くんだよ……」

クラスメイトの家の電話番号は本来、知らないのが普通である。

仲の良い者同士で教える事はあるが、それも一人か二人、多くても7,8人ぐらいしか知らないのが一般的だ。

それでもどこか含みのある答えになってしまう。


クラスの緊急な要件を伝える連絡網はすべて教師からの連絡となっていて、ある者はメールであったり、他の者は録音音声の一方的な電話で一斉に知らせる手法が(※この世界では)取られている。


勝也は厘が何かを言い出す前に居間を出る。しかし勝也はトロかった。

「お姉さまの姉さまによろしくね。あんまり長く居たら駄目だよー」

『っ……』


厘に行先を看破されている事に内心ショックを受け、『うん』とも『違う』とも言えない勝也である。妹から兄に向けた言葉としては生意気な事を言われているのかもしれないが、正しい言葉だ。

勝也もそう思っているからこそ何も言い返せない。

勝也は玄関へ静かに移動すると、玄関扉を素早く開けて閉め、母親には家を出た事はバレない様に外に出る。自分の自転車を家から押して離れるのも急ぎ足である。


臨時休校中は外出について特に決まった事は無く、そもそも今日は日曜日で外に出る事は何ら問題ではない。

しかし、前日襲われた児童達は大体が家で休んでいるだろう。

勝也は自転車を北に向けて走らせる。行先は勿論、金山邸だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―

『早く帰りたいならこちらの要望を叶えるように努力しろ。』

と言っていた知識(ノウレッジ)の言葉が彼女をそうさせる。

春香はお椀の中の茶色いクリームをスプーンで掬うと、意識が無い男性の口元にそれをあてがう。

『ガリィ』『トントントン!』

始めは意識が無い人に物を口から食べさせても問題は無いのか?と思ったが、抵抗無くクリームは口の中に落ちて行く。むせる様子も見られない。

その男性はどうやら、意識を失っていると言うよりも、活動していないだけの様だ。息はしっかりしているし、身体が動かないと言うよりも腕や足等の身体を動かさないだけで反応は常人並みにある。

一通り茶色いクリームを食べさせた春香。自分の空腹事情も結構な物になってきているが、まだ大丈夫。

『……はぁ……お腹減った……』

春香は空のお椀をテーブルに戻し、中央の空間に移動する。すると何かが変わった事に気づく

「ん?匂い?」

空間に足を踏みいれると、何やら良い匂いが漂っている事に気が付く春香、匂いの発生源は一目でわかる。

「朝ごはんだ……」

またもや壁際のテーブルの上に物が置かれている。

それはお椀や茶わん、皿が乗ったお盆だ。

タブレット端末は画面を上に向けてお盆の上・手前の端に置かれていた。

『んっ……』

春香はお盆の前まで移動すると、生唾を飲み込む。

白い茶わん・お椀・皿には同じ材質の蓋がされている。

『カチャ、オワン!、シャリィン』

春香は無意識にそれを取って中をあらためる。

ワカメご飯・芋の煮っ転がしが入った味噌汁・野菜の盛り合わせと白い魚の煮物

がお盆に並ぶ。全て湯気がでており、温かいご飯である。

野菜は青菜・ほうれん草・ザーサイの胡麻和えで、赤い仇敵の”アイツ”がいない。

『ガサッ、ガチャガチャ』

春香は無意識にお盆にあった箸を持つと野菜を掴み、口に運ぶ。本当は座って食べるべきだが、椅子が無いのだから仕方がない。

「おいしい……」

胡麻の味が良いのか後を引かない味だ。普通にうまい。風間の手料理には劣るが。


続けて白い魚のプリプリした身を箸で割り、ひとかけらを口に運ぶ。

「うまい……」

魚の身を箸でつかんだ瞬間に分かっていたが煮崩れが無く、味がしっかりしみ込んでいて旨い。凪乃の朝ごはんには劣るが。


続けて、茶わんを持ってワカメご飯を箸で持ち上げて口に運ぶ。

「こ、これは……」

ごはんが立っており、水分を程よく含んだ米で味がある。ワカメの塩加減がアクセントとなっていて美味い。凪乃のごはんとは別の旨さだが!


最後にお椀を持つとお芋を口に入れ、お椀に口を付けると傾けて汁を口の中に流し込む。

「っ……んーー!」

芋は柔すぎずに硬すぎず、芋の素朴な味が後を引かないうま味をだしていた。さらに汁には魚介系のダシが使われているらしく濃い色の味噌は独特の風味がある、ただ味噌汁と呼ぶにはおこがましい味を秘めていた。ありえない!凪乃の味噌汁とは年季が違う。……という事にしておこう。


こうして春香の知らないオジサン世話焼き生活は粛々と始まっていく。

前回の後書きで書いたように少し投稿をお休みする……かもしれません。

何とも言えない所ですが、明日から短期的に出かけますので……

という事で次回未定です、忘れられない程度にあげたいです。

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