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力の使い方  作者: やす
三年の夏
129/474

#128~力の消失~

『ピンポーン!』

四十代頃の男性がインターホンのボタンを押す。まだ誰も起きていないような、日も登り切っていない早朝である。

その男性は背広を身に着けているが、フォーマルな服装に身を包んでいる割に眼光は鋭く、真剣な眼差しと言うよりも鬼気迫るものが宿っていた。

髪の毛は短めに切られているし、あごや口周りはツルんとしていて肌も綺麗にしており、生真面目な雰囲気を漂わせている。

持ち物は適度にくたびれたカバンと紙袋だが、髪は乱れ、Yシャツには汗ジミが目立つ。

「はい、どちら様でしょうか?」

インターホンは若い女性の声で応えた。男性が答える。

「昨晩電話で連絡をした者です。」

インターホン横にある門から『ガチャン!』と施錠が外れる音がする。

『ガー………』と門から機械音が鳴る所を見るに、自動で門が開閉するのだろう。

その男性は門が開くの待つ。

『ガー……』待つ。

『ガー……』待つ。


『ーーーーガッ、ガッ、ガッ!』待ったが門は開かなかった。壊れているのだろう。

『あ、あれ?あっ、すみません、今開けに行きます。ガタッ』

その男性は特に気にした様子は見せないが、インターホンから流れる女性の声は焦っている様子である。その男性は黙ってお辞儀をして待つ。


場所は清虹市の最北端の地域である土旗地域。その地域の中でも最北端にある建物だ。

他の建物と比べると築年数はあるだろうが、新築と言われても分からないほど壁は白く、シミや床石の欠損などは見当たらない。門の中は右手にある程度の庭と倉庫があり、正面には家屋が置かれている。

石材に良い物を使っているのだろうが、こまめに掃除しなければこれほどの状態は保てないだろう。

家人が綺麗好きで掃除を何度もしているのか、清掃業者に頼んでこまめに掃除させているか、その男性はどちらが真相か知るハズもない。


『ガチャ、ググッ』

玄関扉を開けて出てきたのは20歳頃の女性だ。小走りで門まで来ると男性に声をかける。

「すみません。門が壊れていまして、今開けます。」

その女性は力いっぱい門を横にスライドさせる。『ガガァ、キギーーーーーィ』

「どうぞ。」

女性は手を横に広げ、門の中に招き入れた。

「わざわざありがとうございます。」

その男性は声と共に門をくぐる。


『ガガァ―ーーーーガシャン!』

その女性は門を手動で閉めると、向き直って小走りで玄関まで行き、『ガチャ』と玄関扉を開けると、ドアを片手に置いたそのままで向き直って男性を招き入れる。

「どうぞ。」

「はいありがとうございます。『ググッ』どうぞ、中へ」

男性は玄関扉を持って開けると女性へ先に中へ入る様に促した。



『清瀬小学校は昨日の日中に行われていた避難訓練中に正体不明の法力を扱うテロ集団に襲撃され、避難訓練に参加していた児童を人質にする、立て籠もり事件が発生しました。通報を受けた警察は法力警察へ出動要請を出し、法力警察の早急な突入作戦によってこれを制圧した模様です、校庭に被害が出るも、校舎が傷つく前に事件を解決しています。犯人は人質交渉が行われる前に警察が動き出した事で足並みを崩し、逃走した模様です。法力事件を過去に起こした事のある要注意人物の男性、飯角(いいずみ)耕哉(こうや)を現場に残し、出入り口を塞いでいた一般の警察官を犯人グループの別動隊が呼応して襲う事でテロ集団一味の逃走を許してしまいました。抵抗した男性教員二人が軽症、多数の児童が全治一週間程の軽症、通りがかった女性が中軽症の傷を受けましたが、命に係わる被害は出ていません。警察は身柄を拘束した飯角が意識を取り戻し、退院してから逮捕して、事件解決・犯人逮捕に乗り出す考えです。この事件を受けた法力警察の発表としては『事件発生早くから、市民の通報・事件解決への協力等で法力を扱う危険なテロ集団に対処する事が出来た。今後も同じ様に市民との信頼・協力体制を築き、早急に事件を解決する様にしなくてはならない。さしあたってはいち早く法力警察官を増員し、犯人逮捕等の事件解決と未然に犯罪を防止する事を目標とする』としています。』

と言うのが早朝のニュースで語られている情報だ。


01(エース)が手錠で身柄を押さえた少年少女、現場に残っていたハズのジャージ集団は霧が晴れた頃には姿を消していた。

残ったのは右手を失っている男性と無残な校庭だけだった。



春香が連れ去られてから、16時間程が経過した所である。

警察がすぐに土旗地域を囲むように非常線をはり、車の出入りは勿論の事、徒歩の者から物品の搬送など全ての出入りを夜通しあらためている最中だ。

しかし、いまだにそれらしい動きを見つけてはいない。

そろそろ検問の質は下がり始め、見分する者の体力が削られる行為になり始める頃合いだ。勿論疲れたから手を抜く訳でも、嫌になって手を抜く警官がいる訳でもないが、遠くに逃げられているにせよ、近くに潜伏しているにせよ、いつかは検問に割いている人員を止めないと、それらへ力を注げない。



男性が玄関に入り靴を脱ぎ、そのまままっすぐ行くと椅子とテーブルが置かれた部屋にたどり着く。部屋の椅子には女性が一人深刻な顔で携帯電話を片手に話し込んでいた。

『……ええ、警察の方が来たから、……はい、じゃ、気を付けてね?……ええ。』

その女性、金山四期が通話をやめ、テレビをリモコンで消すと男性に向き直る。



『ドサッ!』

「この度は申し訳ありません!大事なお嬢様が連れて行かれるのを許したのは我々の不徳の致すところでして、言葉もございません……本当にっ、申し訳ございません」

その男性は四期の顔を見るや、足を揃えてひざまずくと頭を深々と下げる。The DOGEZAだ。


「えっと、……斉木、さん?でしたよね、頭をあげてください。謝るのは春香が戻ってきてからでしょう?私も賢人君も急な事に情報が錯綜していて、わからない事だらけなんです。……まずは貴方の知っている事を洗いざらい教えていただけますか?」

嵐の前の静けさとはこの事なのだろう。彼女の顔は平静だが、拳になっている手は病的なほど白くなっている。


斉木は持ってきた紙袋からファイルを取り出し、それを四期奥様の前に差し出してから口を開く。

「申し訳ありませんが、私も部下からの報告しか把握しておらず、これが現場で情報を集めた部下の報告を集めた物です。ただ集めただけで重複していたり所々手書きで読みづらいかもしれませんが」

四期奥様はファイルを受け取る。と言うよりも奪うと、中をあらため始める。ファイルは分厚く、写真や、供述のまとめ、現場の見取り図や人の動きが事細かく記されていた。

『パラ、パラ、パララララ、パラ……』

ファイルをめくる指は証言から書き起こした事件時の人の動きをまとめているページで止めている。


『あの……』

四期奥様の目は真剣で一心不乱に文字を追っている。斉木は軽々しく言葉をかけられない。

「ええと……貴女は?春香さんのお姉さん?ですか?」

斉木は四期の隣に座っている、門を開けてくれた女性に声をかける。

「はい。春香の姉の秋穂です。」

斉木は疑問を吐き出す。

「ええと……病院で確認したのですが、こちらに住む女性が現場で倒れていて、救急で搬送中に意識を取り戻して病院では検査もままならない内に無理を言って帰ったそうですが、今どちらにいるか聞いてませんか?彼女の証言も欲しいのですが……」


「え?……は、はい、それは風間さんです。彼女は今部屋に居ます。居ますが……」

頑張ります。

某有名作品の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースを軸に据えた映画のオマージュでも模倣等でもありません、参考にした等も一切ありませんのであしからず。

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