#121~力は働く~
清敬高校の校長・清田三郎は、くたびれつつも良い味が出ててきている藍色の和服を纏い、清瀬小学校北の道路を西向きに、清虹自然公園へ向けて歩いていた。
白髪の頭はそのままに、顔はやや疲れた様な表情だが、サングラスで目元を隠している。
姿をパっと見た感想は、雰囲気が悪いと言うよりも、ハイカラな雰囲気をかもしだしつつ、威厳に満ちた姿である。
白い顎髭が良い味を出しているのだろう。
和服は彼の普段着で、いつも同じ服だが何着も同じ服があるのか清潔で、特別な時はスーツだが、これが清田校長の着る服である。
手持ちぶたさ解消としてしか機能しない木製の杖を手に、背中には小ぶりなポシェットをたすき掛けしている。
清田校長を清敬高校以外で見るのは稀で、ある清敬高生は『道端で会うのはツチノコ並に珍しい』と言う程だ。
清田校長は土曜の昼に運動を兼ねて、清虹川を見に向かっている所であった。
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彼が校長を務める清敬高校の生徒達が囁く、清田校長の噂でこんな物がある。
”清敬高校校長の職務が終わる夜半過ぎ、職員含めた皆が帰った頃に黒塗りの高級車が学校に訪れ、清虹市の北にある豪邸へ帰る。朝は誰も来ない早い時間に先の車で学校に出勤する。”という噂。その心は超絶金持ちお爺さん。
であったり。
”帰りは一番遅く校舎を後にし、歩いてすぐ近くにある大学生用の寮へ移動。朝は一番早く校舎に出勤する。”という噂。その心は見栄っ張りのものぐさじじい。
他の噂では、
”勝手に増設した清敬高校の地下又は、誰も立ち入れない校舎屋上の物置に住む。”という噂。その心はエキセントリックな変わり者じいさん。
他には、
”いつも居る学校・清敬高校に住んでいる妖精さん・もとい妖精Gさん”
等と言う生徒まで居る始末。
清田校長は一日の大半を清敬高校の校長室で過ごし、校長としての所要か何かがあれば、清敬高校の手の空いている職員の車で運転を人に頼み移動する。
その為ではないが、清敬高校の売店と食堂は土日祝日であろうと休みなくやっていて、高校の売店をスーパー代わりにしている者も少なくない。
とは言っても、価格では引けを取らないが、商品の種類が少なく、スーパーと食堂代わりに使うのはもっぱら独り暮らしの学生となっている。
清田校長はその売店と食堂の常連だ。”清敬高校の食堂一押し品、日替わりランチメニュー決定権を持っている。”という噂も立った程。
しかし、
法力の腕はその存在が発見された当初から目覚ましく、水系と土系法力を得意とする。その二つを同時に発言する事で、木々を成長させたり、特殊な木材を操る力は絶大である。
但し、木々を急成長させた場合はその反動の為か一日を待たずして枯れ果て、枯れ果てた木々は病原菌の温床になる為、緑化には使えない。多くの木々を一度に生成するには行政の許可を必要としている。
過去には法力医師や、自警団の創設、会社経営、教師と様々な職を得て現在は、清敬学校の運営顧問・清敬高校の校長を務めている。
年齢・住居は先の戦闘により紛失。個人情報保護の為、割愛する。
清虹市の開放運動終結に尽力したその姿は、昔から人格者として親しまれている。
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そんな雑多な走り書きの資料を、清虹署・通信室で見る女性オペレーター。手には電話の受話器が握られている。
彼女は応援要請の電話を掛け始める。
『ピ、ピ、ピ、ピ、ピッ、ピッピピッピ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピ―…』
清瀬小学校を通り過ぎた清田校長から電子音が鳴り響く。
「ん?電話電話……」
清田校長はどこからともなく携帯電話を出す。
気軽に画面を見ずに、通話ボタンを押すと、携帯電話を耳に当て、話し始める。
「はいはい、どちら様で?…」
携帯電話からは女性の声が紡がれる。
『こちらは法力警察です。清田三郎様でいらっしゃいますね?今、清田さんの近くにある清瀬小学校周辺で立て続けに襲撃事件が発生しております。問題が無ければお力添えをお願いします。民間法術師への応援要請です。』
電話から聞こえる内容は、民間人に戦闘を頼む依頼であった。清田校長は勿体付ける様に言葉を返す。
「…うむ、そうか。先程法力警察の恰好をした飯吹君を空に見たぞ。何か話していたようだが……、…彼女程の者が居るのに手が足りんのか?」
清田校長は飯吹を知った様に言った。ぼやく様に言葉を続ける。
「飯吹君程の使い手でも手こずる相手なら、私が力を貸してもどうにかなると思えんが………―ん~…最近よく眠れなくてのぉ……咄嗟の事に意識を変えられん…」
清田校長は軽い言葉で言った。電話口から声が帰って来る。
『………えー…法力警察官の個人情報に関わる事はお答え出来ません、いえ、ともかく!事件解決の為、お力をお貸しください。襲撃犯の人数が思ったより多く、被害を抑えるのに苦労しております。清瀬小学校近くの日差し公園に手の空いた法力警察官が居ますので、可及的速やかにその法力警察官に接触し、その指示の下で御協力をお願いします。…若しくは襲撃犯に直接対処して貰えませんか?緊急を要する案件です。』
清虹署通信室の女性オペレーターは流れる様に言葉を重ねる。清田校長が言葉を発しない隙にお決まりの言葉を続ける。
『損害保証については当初の取り決め通り、指定病院における今年度これからの治療費を全面補助、その他の損害は所定の金額まで保証致します、ご協力いただければ……、…お礼金として報奨金が出ますので、お力をお貸し願います。』
女性オペレーターは歯切れの悪い声で言った。
だが、それに清田校長はブレずに対応する。
「うむ。じゃからして、最近あまり眠れんくてのぅー………身体も凝り固まっておる。荒事は気を抜いた者から怪我して死んでいくのだよ…」
そんな言葉を言われるが、尚も電話から声が続く。
『えっ…っとー…で、では…安眠グッズや、快適な睡眠が出来る様なマッサージ等は如何でしょうか?…後日、知識があるスタッフを向かわせますので…』
清田校長は電話の相手が困っている様子を堪能すると、口元に笑みを浮かべ、返事をする。
「かかっ!いやいや、冗談じゃ、緊急であろう?…何、眠れん理由は運動不足じゃよ…ある程度疲れた方が良く眠れる。…勤労だよ、健康の秘訣だな。応援要請を引き受けよう。」
清田校長は踵を返し、清瀬小学校の敷地を見る。
電話からは『ありがとうございます。ご武運を』と流れていた。
清田校長はそのまま返事をせずに『プッ…』通話を切ると歩き出す。
「…さて、久しぶりに働くとするか。…あぁ、”お礼金”だから働く訳ではないかな…」
清田校長は清瀬小学校へ向かって行った。
サブタイトルの割に話が進まず申し訳ありません…
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