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力の使い方  作者: やす
三年の春
120/474

#119~力の失態~

遅れました…

01(エース)率いる法力警察特捜課・実戦隊前線班の半数が、清瀬小学校で黒ジャージ土色仮面の男達&紺ジャージ黒色仮面の女達と攻防を繰り広げられた少し後

小学校の周りにある住宅地の南西で『ブフォォオ!!』と音をたてて火炎が舞った。


清瀬小学校の正面玄関目の前にある『日差し公園』には、01(エース)達が乗ってきた指示車が緊急時として進入し、駐車している。

特捜課の実戦隊・前線班は普段しない行動として、一つの班を分けて二か所同時に活動、をしており、

変則的に分けられた班の動向を整理・土曜の昼に住民が外に出ない様に始動すること・交通規制を行う一般警察との連絡

等の為、指示車には09(リザーブ)が残っていた。


『ふぅ…次は……『ブォ…』…ん?』

09(リザーブ)が近くの警察と連絡し、端末片手に一息ついた頃であった。

車内後方のリアガラスから、空に上がった火の粉を確認する。

『あっちは…清虹公園の方か!』

清虹公園へ向かった02(アシスタント)達の使う指示車弐サブへ、車に備わる通信器のマイクに向かって声を飛ばす。

『ガッ、こちら指示車壱の09(リザーブ)、そちらの方から大規模な火炎を確認、進捗状況を願います。どうぞ。』

本来ならば、署のサーバーに上げられた操作記録を照合するのだが、データが更新されていない事を見たばかりである。


09(リザーブ)の通信を受け、指示車(サブ)との通信が『…ガガ、ギッッ…』と嫌な音をたてて繋がる。

『…………っ!…………か!?…!……!……ーっ!…………………か、…………!…っ!……れ!』

『ん?なんだ?』

『……………する!……………た!…………………です!……あっ、女が……す!………だ!……っ、』

09(リザーブ)は、通信の不自然さに疑問を覚え、もう一度マイクを持つとマスクから声を出した。

『ガッ……こちら指示車壱の09(リザーブ)、そちらの状況を教えて下さい。どうぞ。』

『ガギッ…から通………ました!、………から……てる模様!………………あり!………!』

音声通信は繋がるも、09(リザーブ)の呼びかけに応答している様子では無い。

マイクから離れた所の音で、言葉じりだけがかすかに聞こえる状態だ。

『ガッ…』っとわざわざ鳴る、ワザと付けられた、『通信が繋がり、声が続きますよ』という意味の音もおかしい。

指示車車内後方の空間に居る09(リザーブ)の目の前、通信器の簡易スピーカーからは指示車(サブ)車内の切羽詰まった声が続く。

指示車(サブ)にもあるこれと同じ通信器は光と音を出し、一目でも通信器を見れば09(リザーブ)の呼びかけに気付くはずだが、02(アシスタント)達は一向に気付く様子はない。

09(リザーブ)は呆れた様に声を出す。

『んっ?……ガッ………、聞こえますか?聞こえたら応答してください。………んー…、あぁ!…今日は通信手(ヴィジュ)が居ない?から…か?…』

いつもは05(ヴィジュレン)が通信に応答するのだが、今日は05(ヴィジュレン)が居ない指示車弐サブの状態を考える。

02(アシスタント)達は苦戦している様で、指示車壱からの通信に応答する様子は無い。

『…これ…ヤバ…ぃ?…………っ!?ガッ、緊急事態を1230(ヒトフタサンマル)に確認。緊急応援要請っ!』

09(リザーブ)は何気ない様子の中に、事態の深刻さを見つけると、慌てふためき、通信器に備え付けられた赤いボタンを押す。

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法力警察では、通信が繋がるも、人の応答がなく、通信が無視された場合、それが例え些細な呼びかけの場合でも、『通信が繋がるも、応答が無視された』という状況が出来上がれば

『規定業務の怠慢』として、少しの減給と規定違反の謝罪・違反の改善書(つまりは始末書)の提出が必要な罰則行為である。

勿論だが、『やむを得ない場合は例外』等の救済措置もある

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09(リザーブ)は流れる様にして”危機的状況による、やむを得ない通信応答無視”とした。

通信先の02(アシスタント)は真面目な法力警察官であり、”通信応答無視”等は、するはずもない失態だからである。

『自分が居ない地点への応援要請』は本来、通信、要請を受ける、判断、緊急事態発令、は確認する事が多い作業であった。

だが、その面倒なプロセスをせず、ある程度予想して先に処理するのは、”積み上げられた実績”・”平時の行動との相違点”からなせる事であり、引いてはそれを”組織力”や”機転が利く行動”としている。

勿論『間違った、応援要請・緊急事態発令』をしても始末書物であるから、失敗のリスクと機転が利く評価で判断が揺れるのだ。



09(リザーブ)が赤いスイッチを押すと、タイムラグなしに別の通信が繋がる。

『『ガチャ、こちら法力警察署通信室。緊急応援要請の信号を確認、状況説明と必要な物をどうぞ。』』

『ガッ……緊急要請は指示車壱の09(リザーブ)が代行して発令・代理応答中。指示車(サブ)の02、03、08が班員の非番による欠員の為、劣勢の模様、火系法力を確認、適した者の応援を要望します。』

09(リザーブ)の声に、清虹署通信室の女性オペレータは告げる。

『……GPSで適合者を測定しました。09は非戦闘の下士官の為、最終決定には班長の許可が必要です。応援は近くの一般警官では対処が出来ません。近くの民間人、…………さんに応援交渉となります。』

『ガッ、すぐに01(エース)の通信を要望します。』

事務的で面倒なやり取りの後、つつがなく応援要請は進む。


法力警察は、まだ発足から年数が浅い組織である

”戦闘に使える程の法力を持つ警官の絶対数が足りない事”と、”清虹市設立の経緯から、治安がまだ悪い事”の為、緊急時には民間人の応援を要請している。

法力はまだ『私的な利益の為に運用する事』・『運用されずに眠らせておく事』の割に”力が大きく、無駄にするには惜しい力”であった。

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『ブフォォオ!!』

07(アタッカー)がコスプレモドキな男女の二人組に声を掛ける。

と、女は突然火系の法力を発現し、炎を振りまかれていた。

火系の技は発現するだけでも武器となるが、日常的に様々な事で活用できる系統である。

それ故、人が近くに居る状態で火系の法力発現するのは取り締まる対象となる系統だ。

だが、不意を打つ技にしては規模が大きかった。


『うわっ!』

離れた路肩に停車する、指示車(サブ)の運転席に居る03(バックパッカー)は狼狽える。

『ググゥ、グっ…』

突如生成された炎は突風を作り、風速40メートル程の風で指示車(サブ)は揺れる。

指示車は軽自動車以上に軽量な車体だが、面積は大型ワゴン車並にあり、強い突風には弱い。

積まれた電子装置は頑丈な物が選ばれているが、想定以上の揺れには調整や点検が必要であろう。

『っ、煤か!?…ま、前!!ウォッシャーとワイパー!!』

、十分な酸素が無い大きな炎で炙られた為、指示車の表面は黒く煤汚れてしまっている。

大きな炎と言ってもそれは指向性のある炎では無く、突然の大火力で空気を押し出す形の物であった。

指示車(サブ)は大きく揺れ、ホイール車の発電に使う管や、金属の骨組み・機材等が『ギシギシ!』ときしんでいる。


『は、はい!』

運転席の03(バックパッカー)は一瞬遅れるも、慌ててハンドル裏のレバーのボタンを押し、レバーを下げる。

『ビャシャァアーヴィ……ガ…タタ…』

指示車(サブ)のフロントガラスは黒く煤汚れただけでは無く、熱波を受けた衝撃と、プラスチック繊維のワイパーが熱で僅かに溶けた影響か、正常に動作しない。

軽くて速い車体は熱風で煽られた衝撃で、多くの機能を失ってしまっていた。

『くっ、駄目か!?…周辺確認、06(アタッカー)に無線で呼びかけ、車体はこっちで何とかする!』

02(アシスタント)はすぐに07(アタッカー)への呼びかけを03(バックパッカー)に命じ、自分は車体の損害を確かめ始める。

『ガッ、06(アタッカー)、応答願います!!』

運転席の03(バックパッカー)は自分の胸に下げた無線に声を出しはじめ、

操作(オペレーション)

02(アシスタント)が発言すると、指示車(サブ)の管にある液体や、フロントガラスに残るウォッシャー液が動き始め、ガラスの洗浄や、破損した個所の確認をする。


『………』

……

沈黙が続くと、03(バック)が先に声をあげる。

『繋がりました!!民家の庭に退避し、直撃は避けられたそうです、…ですが、無理な”動き”の拍子に下半身を負傷、思う様に動けないそうです!…”腰をヤラレた!”……との事。』

03(バック)07(アタッカー)の無事を、”一応”でも確認すると『はぁ』と息を吐き、視線を前に向けた。

何気なくやった目線の先を見て、自分に指示された”周辺確認”をまだしていない事に遅れて気付く03(バック)

フロントガラスは02(アシスタント)の水操作で大分視界が戻っていた。

『……あっ!二人組が消えてます!』

03(パックパッカー)が見ると、コスプレ…もとい、手が付けられない女と魚の様な男がそこに居ない。

07(アタッカー)からの情報、清瀬小学校上空の班長を見ていたそうです。言動から清瀬小学校に向かった模様と…』


『っ!!公務執行妨害と、危険な法力使用の現行犯だ。確保するぞ!』

02(アシスタント)は水操作で一通り指示車(サブ)を点検し終えると、続けて独り言を漏らす。

『……流石は先の”大戦で”無事だった車体だ、後から置いた電子機器は再起動再設定が必要だが、走行機能は生きている……』

指示車の制作された時期を踏まえ、元から積まれていた機構の頑丈さに驚くと、これまでの失態を晴らす様に指示を飛ばす。

『…ホイールを回す。モーターを起動して発車!…通告なく法力の使用で良いだろう!追うぞ!班長に合流する!清瀬小学校だ!』

02(アシスタント)が声と共にホイール車に管の液体を回し始めると運転席の03(バックパッカー)がモーターを点火させ、『プゥゥゥゥゥゥ…』とモーターが回り、勢いよく走りだす。

目的地は清瀬小学校だ。

(ry

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