#11~力の強さが一番大事じゃない~
勝也が春香の様子を見ていると、母親の澄玲と四期奥様が言う。
「危ない勝也(春香)!!」
勝也の後ろで、存在を消すようにし、勝也を見ていた男が動く。
玄関の前に張り付いていた男だ。澄玲達からは建物の陰になって見えていなかったが、動いた事で視認して声を出し、それを聞く秋穂が最後は一対一で睨み合う、体格が良い男から勝也達へ眼光を飛ばし、危険な強刃に対処する為に跳ぶ。
「危ないっ!!」「うわぁっ!!」『スッ…』『キンッ!』
秋穂はジーパンのベルトに差す、木刀を左手で抜き、またも何処からか飛来してきた透明な鳥にぶつける。右手に持つ竹刀は勝也に近づく男に当てた。
「なっ!!」「ほぅ…」
秋穂は自分でした事に驚愕する。秋穂と対峙していた男も始めて声らしい声を出した。木刀が割れていないのだ。それよりも気になる事に言及する秋穂。
「!!貴様は喋るらしいな…何が目的だ!?」
残る一人となった男に尋ねる。男は他の男と違って喋り出す。
「なに、経過の確認とどうなったか、そして将来の苗を見に来ただけだ…」
男の声は低く、誰も意味が解らずに居た。
『何を言って…?』と秋穂が訝しむと、玄関から男が一人、靴を履きながら現れる。
勝也が気絶させた男だが、気絶から自力で回復した様だ。
この男、襲撃する家にわざわざ靴を脱いで上がり、今覚醒して靴を履いて来たようだ。実は春香が玄関で転んだのはこいつの靴に躓いたせいである。
金山家廊下の靴跡は春香と勝也だけでこの男は几帳面の様だ。理解出来ないが…
春香に一矢報いてはいる。
家から出て来た男は喋る。
「弓使い…『木の剣』は今も生きている…硬度は解らん…」
言った男は今も尚、ふらつきながら脱げ掛けの靴を履きつぶして言う。
「硬度は俺が今確認した『真空の鳥』を直撃して無事だ。おまけにお前が受けた水爆発に巻き込まれてもコレだ。作戦は終了。人形を廃棄して直ちに帰投する。」
弓使いと呼ばれた男は秋穂に向かって顎をしゃくりながら話した。
秋穂が今した行為、飛んできた透明な鳥・真空の鳥に木刀を当て、防ぎ、この際、思い出の品の木刀が壊れたかと思えば、今見返しても傷一つ無い。自分の持ち物だが、かなりおかしな木刀だ。もしかしなくとも真剣より頑丈だろう。
秋穂は『帰投』という言葉を遅れて飲み込んで言う。
「逃がすと思っているのか!!まだまだ私はやれるぞ!!」
秋穂は血気盛んに男達を睨んで怒鳴る。弓使いと呼ばれた男は答える。
「いいや?時間切れだ…私も『烈土の鬼女』とは真剣で戦いたいとは思うがな…」
男は右手に力を蓄えたかと思うとその手を地面に殴りつけ、発言する。
「土の落とし穴!!」
すると庭の地面が所々に『ググゴォ…』と陥没し、庭に居る人間を中心に足場が悪くなる。
「母さん!厘!!」「おぁぁさふぁ!」「お母様!風間さん!!」
勝也、春香、秋穂は玄関前の足場に居るが、玄関の足場はコンクリートで変わりない。
『ッ…』『ッ!なん…』『厘ちゃん!』『ほぇ…?』
風間と四期奥様、澄玲と目隠しされたままの厘は簡単には動けそうではなかった。
「貴様!!人の家を何だと思って!!」
秋穂は憤怒の形相で弓使いと呼ばれた男に詰め寄ろうとするが、勝也が声を割り込ませる。
「あ、秋穂お姉さん!あれ!危ないですって!!」
「なん…」「ほぅ?」
秋穂が水を差される事についイラつく様に応え、弓使いと呼ばれた男が関心した様に応える。
勝也の指指す方にはコンロが二つ、地面が崩れた拍子に倒れ、中の赤い炭等があたりに散らばっている。もう少しで庭にある草木や、ひいては建物に引火寸前だ。
「なっ……き、貴様!!…くっ…お、お母様!!コンロが大変です!!水生成で!!消火を!」
「っ…え、えぇ…水生成!!」
……………
四期奥様が発言しても水は少ししか生成されず、消火が出来そうにない。澄玲が推論を言う。
「お、恐らく…私たちで水生成をやりすぎたのでしょう…湿度を集めて水を作る方法ですから…今日はあまり風が無いですし…水道水で消火するしか…」
しかし、無慈悲にも燃えている炭から火が登り始める。
庭にも水道の蛇口はあるが、穴が所々に開いている庭では今から準備していては消火出来そうにない。
弓使いと呼ばれた男が力を抜くと庭・玄関前で悶絶していた男達が土くれになっていく。
「『泥人形』だったのか…こんな奴らに…私は……悶絶する演技までさせて…」
と秋穂が悔しがっていると男は話す。
「目的は達成した。やはり苗としてあいつは非常に楽しみだ。成長を待つぞ…いち早く苗木として力になってくれる事を祈るばかり…」
と捨て台詞を残し。『ブォン…ブォォォォォォォォ……』
門の前に止まった車に乗り込んでいく。玄関に居た、勝也が気絶させ、木刀を報告をしていた男も乗り込んでいる。男が話していた『あいつ』という時の仮面越しの目線に秋穂は義姉として心配する目線を送る。剣道で培った感覚で男の目線を推測していた…
見ると男二人が乗る車は急加速で発進していった。
秋穂が気が付くと勝也が近くに居ない。さっきまで居た所には春香のみ。
春香は勝也の言いつけを守って舌を伸ばし、出している様だ。
「勝也君は何処に行ったの!?消火しないと…」
秋穂が疲れた体に鞭打って動き出すと既に火が回り始めている。
今消火出来ればまだ簡単だが、準備していると間に合わなくなってしまう。
消防に連絡を入れようと高校進学から持たされた携帯電話を持つ秋穂。
画面を見て鎮痛な顔をする。見ると、電波状況が『圏外』となっている。さっきの男達が細工しているのだろう。
秋穂はらしくもなく途方に暮れた。
『バシャン!シュー………』
音がして倒れたコンロの方を見ると、勝也が金山家の倉庫にあった園芸用のバケツを持って中の水を掛けていた。タイミング、水のかけ方も良く火は消火される。
「どうしたの?その水!!」
秋穂が『信じられない!』と聞くと勝也は事もなげに答えた。
「用意してた水ですよ。あれ?始めから用意してたの知りませんでした?」
勝也の事もなげな返答に一つ思い当って秋穂は言う。
「まさか…勝也君のおしっ…」「いっ、いやいや、違いますって!!用意してたんですって!!」
秋穂のお嬢様らしからぬ思考を食い気味に否定する勝也。
「ほ、ほら…春香のお母さんと風間おねぇさんが何かを言い合っている時に…緊急消火用の水は用意しないのかな?って…勝手かもしれないですけど…空いてるバケツに水を汲んでおいて、終わった時に水を捨てて戻しておけば良いかなって…」
「そうかそうか、良いんだよ。万事解決だからね!!お手柄だよ!勝也君。君の機転の良さに…」「いえいえ、本当に水を汲んでおいたんですって…」
『解ってる解ってる』と優しく秋穂に理解されるのは一番勝也にとって嫌であろう…
この時勝也は一つ勘違いをしていた。
実は勝也が本当に水を用意していた時、その場には『秋穂も春香もいなかった』のだから…この姉妹の前では疑惑をぬぐえないのだ。
秋穂は『お嬢様』では無いと、身をもって体験した勝也だった。春香の姉である。
しかし、春香はお嬢様の様に、話に関わりたくない時は黙る。よっぼど『お嬢様』らしかった。
一応『一部完』的なストーリー内一日が終了です。
不定期に続きます。
※仮面を付けているのに目線を読む秋穂さん。マジパネェっす…
その事で捕捉しました…改稿をお許しください…




