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力の使い方  作者: やす
三年の春
108/474

#107~力の向き~

荒地となった清瀬小学校の校庭は普通ではありえない状態だった。

学校の校庭は、ただ土が敷き詰められている訳では無く、水はけはより良く・土埃が舞い上がりにくい・滑りにくい表面・地割れが起きにくい、等と工夫されているのが一般的だ。

今は基礎から考えて作られているので、地震・災害時等でもそんなに簡単には割れない・下地の地面が外に晒されない様に出来ている。

それぞれに耐性を持った土が敷かれている事が現状では多い。

しかし、土系の法力が加わればそれは簡単に打ち破られてしまうのが現状だ。そんな事を想定して作られる程治安も悪くない為である。


今の校庭には一年生全員・二年生全員・三年生は四組までの全員・校庭に出てきているクラスの担任教師全員・その他十人程度ずつの四年生・五年生・六年生・守衛や、その他学校にいる大人数名が校庭で行く末を囚われている。


黒仮面集団リーダー各の体格が良い男、弓使い(アーチャ―)が声を張り上げる。

「三年生の女子児童、金山春香に用事がある!ドコにいる?居場所を教えろ。さもなくば、近くに居る者から痛い目を見るぞ?」

『えっ!』「なっ!…誘拐!?」『バカな!』「ちっ……さっさとしろ!我々には水の法力と言う武器があるんだぞ!!」『………』

弓使い(アーチャ―)の隣に控える細身の男、知識(ノウレッジ)が舌打ちしてから怒鳴ると、誰もが口を閉めた。

先生方大人も、先程の水の弾丸(ウォータバレット)を目の当たりにして、動くに動けないのだ。

襲撃してきた集団を刺激出来ない。


三年生の春香を知る児童達数人は、呼ばれた人物・現清虹市長の父を持ち、清虹市を初期の頃から資金面で援助していた金山家の母を持つ女子児童・金山春香に視線を集めている。

それに気付いた神田教諭は携帯電話から視線をそらし、児童達に絞った声を出す。

「み、皆……、すぐに警察が”飛んで”くるから、あの人達の言葉に反応しない様に……静かにしてるんだ……」

『…ウン…』と言う様にクラスの皆は口を引き縛って顔を縦に振る。

勝也も無言でその案に乗るが、一組の勝也達は校庭に並び始めた児童の中に居る。


「……ふん!聞き分けのねぇ奴らのだな…」

弓使い(アーチャ―)が静まった来た校庭を見て愚痴を漏らす。

そのやり取りを見飽きた様に知識(ノウレッジ)は代わりに次の言葉を投げ込む。

「三年生は何処だ?三年生を見た奴は助けてやる。次に金山春香を見ろ。見てない奴は水の弾丸(ウォータバレット)を撃つ。」

『あれ?三年生って…』『いやいや、まだ来てないしょ~』「うーん?皆見てる?」「えっ?これってゲーム?」「おいー!!知らない人の言う事聞いちゃ駄目って?」

そんな事を言われても児童達は互いに目を見合わせるばかりで知識(ノウレッジ)の思惑は実現には至らない。


勝也は顔をどこにも向けず、ただ正面を見つめ、視線だけで黒土仮面の集団を伺っていた。

「そんな事で居場所がばれてたまるか…このまま時間を稼いで警察が来るまで逃げてれば…」

「居たぞ。弓使い(アーチャ―)、今列を作り始めた所に見覚えのある男子がいる。その近くに目標がいるぞ。」

『なっ…』と驚く勝也は知識(ノウレッジ)と視線を合わせてしまう。

どうやら児童達を言葉で揺さぶり、顔を動かさない勝也を見つけたらしい。

言葉の内容では無く、言葉を聞いて動かない顔を中心に据えて探していた様だ。

「ふん!行くぞ、金山の子女を見つけた者・捉えた者が評価されるのだからな、急げ。」

仮面の者達が歩を進め、勝也達を目標に動き出す。


「ま、まて、金山は私の受け持つ児童だ。お前らの好きにはさせない!」


そこに体を割り込ませるのは三年一組(僕ら)の担任教師・神田圭介先生だ。

弓使い(アーチャ―)は前に進みながらその雄姿に声をかける。ちなみに神田先生はヒョロく、今年で三十四歳になったばかりで、趣味・魚釣りぐらいでしかアウトドアな事をしない、インドアよりの人間である。

(ry

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