#106~力の蛮行は~
清瀬小学校の西、清虹公園を割って流れている清虹川は住宅街を潜る様に、半地下に押し込められるようになっていく。
地形やコンクリートで川を地面より低くする様にして、この地域は作られているのだ。
川のある場所を住宅で作り込まれている形となっている。
と言っても、川の通っている場所は狭く、川の上に建物が建っている場所は無い。
そのほとんどが道路脇の地下で流れていて、用水路の様な塩梅だ。
雨や、地震などの自然災害程度では水かさが増える事はない。
ここ半世紀程の生活では周知の物である。
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清虹川のほとり、清瀬小学校から見れば西に位置し、清虹公園の手前である。
川はこの先、清瀬小学校近くではコンクリートで覆われた金網に飲まれ、人の手で作られた用水路と言った形になる。
それを南東に少し行った所・清敬高校を過ぎたあたりで人工の川として姿を現すのだ。
清虹公園の近く、清虹川がまだ自然に出来た様相をうかがわせる場所に人影が二つ。
一つは二十歳近くの女性の物で、もう一つが男の”様な”様相を呈している。
「ぐぐぐぅぅぅぅ……」
男の様な影は、青く光る肌を持ち、魚の鱗を思わせる質感で、背中に水滴を張り付けた者・『この手で出来る事』の残党・飯角耕哉は『魔人』として立ち、静かに唸っている。
数日前に清虹公園で暴れていた魔人は背中に炎を背負い、知性を持たない様に暴れ回り、周りの木々を焼いていた姿とは別物である。
隣でキリッ、とした表情で暗い青色のジャージに袖を通す女性は、その小奇麗な顔を歪め、唸る魔人に声をかける。
「あんた……喋れんの?学校まで動ける?」
「ぐうぅぅ……」
魔人は何処からか息が漏れるのか、常時唸り声を上げ続け、女性の声に反応するそぶりを見せない。
二十歳程度の女性・山岡紅樹が独り言を漏らす。
「ちっ!”品神先生は”また面倒な配置を……こんな狂犬の面倒を私に見せんなよな…まぁ…最低限の役目は果たしたし?……折角のチャンスだけど、襲撃班に回されないだけマシだと思わなきゃ…”無暗やたらに、危ない橋を渡る”必要はないか……」『ぐっ?……う゛ぅぅん?”わ゛だる”っ?』
魔人は紅樹の独り言に反応して見せる。
『……あ?』と今度は紅樹が驚く番だったが『あぁ…そういや…』と何かを思い出すと、続けて魔人に言葉を続ける紅樹である。
「『そうだ、渉だ。』えーと…『耕哉、清瀬小学校に行け、黒土仮面野郎に力を見せてヤレ。さらに良い物が貰えるぞ?』」
紅樹はダミ声で魔人に語り掛ける。
『この手』のリーダー『宮西渉』の声音を真似して喋っているのだが、全く似ていない。…誰が聞いても可笑しな声色だった。
『ん゛っ、わ゛だるが言うな゛ら゛っ…う゛ぅ゛ん!!』
魔人は『デチュ、デチュ…』と重い、湿った足音を鳴らして移動を始める。
「ふーん?品神先生もやるじゃん、口だけじゃなかったんだ……って!誰でも同じ様に命令して、言う事聞くなら失敗作この上ないけど……ま、良いか!」
と紅樹はこの場に居ない、自分の上司を褒めて貶すと魔人の後を追う。
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勝也達が清瀬小学校の校舎から校庭に出て来る。
其処はいつもの様子とは違い、校庭の6分の1程度、敷地の南西に置かれる体育館は薄い水が張る程度に水浸している様だ。
しかし、水源は特に見当たらず『もしかしたら水道の蛇口や、水道管が破裂した?』と勘違いする者がいてもおかしくない状態である。
校庭には一年生児童・二年生児童・校庭とその近くでサイレンを聞いたと思われる様々な学年の児童達若干名・既に移動を終えた低学年の担任教師達、が居る。
勝也達三年生の児童が校庭姿を現せ始める。既に暑さが垣間見せ始めた頃の気温だ。
そこに、体育館側の出入り口から『バシャ、バシャ、パシャ……』と水を踏みしめる音がやってくる。
その音源達は立ち止まると、校庭に声を張らせる。
「聞けっ!!!大人しく従えば悪い様にしない!!」「言う事を聞いて貰うよ!!」
そこには靴を水に濡らす、同じ形のジャージに顔を仮面で覆う集団だ。
『あいつらって…ん?』と勝也の知る者達と違う点は、屈強な男達の間に、少数の暗い青色のジャージ姿の女性が混じっている点である。
体育館の様子を伺っていた男性教員が近くに居た事で、すぐに言葉を飛ばす。
「なん…っ!誰だ?!警察を『ちっ、うるせーな!水の弾丸』『ピシャン、ヒュン!』『ドン!』うっ!くっ……何をぅ…うっ!…つぅ……」
暗い青ジャージ姿の女性一人が相対すると、発言し、体育館周りに張っているいる水を跳ねらせた、その跳ねた水はパチンコ玉程度の塊を作り、立ち塞がろうとした男性教員に殺到する。
「なっ…法力で水をっ……」
男性教員は呻きながらも、胸を押さえ、その場にうずくまってしまう。命に瀕する程かは解らないが、出血は無さそうである。
『『わぁ!』』『『えぇ!』』『『っ!』』と学校の一同は声を合わせ上げ、起こった事に理解が及ばず一瞬の恐慌を表面化させる。
「何を…」
その場に居合わせる大人達が駆け寄ろうと、始めの一歩を踏み出す。
合間に言葉を挟む者が一人、
「静かにしろぉ!『土の落とし穴!!』」
黒ジャージ男の一人、体格の良い男・弓使いが声を出し、『ゴォン!』と地面を殴りつけた。
すると、勝也と春香が前に見た光景がその場にもう一度広がる。
学校の校庭に出来るハズの無い段差が生まれ、一瞬にして校庭は荒地となった。
一瞬で平坦な校庭は畑もかくやあらんかぎりで咄嗟に足を止めてしまう。
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