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力の使い方  作者: やす
三年の春
103/474

#102~力のしたい事~

双子の妹・朱音は”今日が春香の誕生日”だと言う事を聞き、『えっ!』っと驚いている。

さらには、アマチ―こと雨田勝也の主催する誕生パーティに誘われ、戸惑いながらも言葉を発する。

「きゅ、きっ、今日!!………なっ、なん、ん゛っ……」

朱音はあまりの驚き様に、口をもつれさせる。咳ばらいをして息を整えて喋り始める。

「……言ってくれれば……プ、プレゼント”ぐらいは”用意っ………しっ、したのにぃ…………、うぅん………今日は、キの予定が悪い……かなぁ…」


朱音の思った以上の戸惑い振りに、ハテナマークを浮かべる勝也は理由を思いつけない。

”(時)期の予定が悪い=何か予定がある?”とはずいぶん迂遠な言い回しである。


実はそれ以上に『かっ…』や、『はぁっ…』とテンパっている人物がもう”二人”居るのだが、勝也はそれに気付かない。

勝也は気楽に言う。

「ん?プレゼントって言っても…皆大した物は用意してないよ?”皆”って言っても、俺の妹と母さん・春香のお姉さん二人で、六人しかいないし…」

勝也の気楽な様子に、朱音は理由の半分と言った面持ちで言葉を返す。

「ふ、ふぅん?春香ちゃんのお姉さんが二人?……それはそれで……部外者の私は行きづらい感じだけど……ん~……今日か……」


そんな二人の会話を『え、えぇ…』と特に言葉を挟まないで聞く春香は、冷や汗を流す。

勝也は朱音の言った事に対し、『部外者ってそんな……』と軽く見て言っている。


テンパっている人物・春香は気を撮り直し、気をしっかり持って言った。

「まっ、まぁ…そんな事よりも早く教室に行きましょう?朱音ちゃんは知らないかも知れないけど、清瀬小学校の避難訓練はサイレンの鳴る時間が決まってないんだよ。私たちが教室に着いて、すぐサイレンが鳴ったら面倒だし…その話の続きは後で……ね?それに、朱音ちゃんの予定があるなら無理して来る事じゃないし…ひとまず、教室に行こう…」

下駄箱にいる、三年の児童三人は教室へ向かう為、下駄箱部屋から中ドアを開け、憩い場を正面に、右の階段へ向かう。


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清瀬小学校は三階建てである。

下駄箱の正面に『憩いの場』という、木製の昔ながらのおもちゃや、児童本、ソファ等が置かれ、来客用に見取り図・お知らせボード等がある。

小学校の校舎、入って見える正面は基本的に学校の顔であり、校舎を作った者の思想が反映されやすい。

向かって右側に階段があり、一階に一年教室と保険室、二階に三年教室、三階に五年教室が置かれ、

向かって左側にも階段があり、一階に二年教室、二階に四年教室、三階に六年教室と第二音楽室が置かれている。

『憩いの場』の上、二階部分には職員室、放送室、図書室があり、三階には音楽室、図工室、科学室等の特別教室が置かれている。

体育館は二年教室のさらに左側に置かれ、一階の階段横から渡り廊下が伸びている。『憩いの場』の壁向こう側に広がるのはグラウンド・校庭だ。

清瀬小学校の校舎は扇状の形である。


清瀬小学校の建築・構想を練った者の考えは”『児童たちの遊ぶ姿・教育場面の全容』をオープンに”というスタンスの様で、学校に居る者が何をするにも、急な来客が来ようとも、清瀬小学校の中心、『憩いの場』を目に出来る作りとなっている。

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朱音は春香の言う事に、少しの理解を示しつつ、靴を履き替える。


そこで朱音は今日、誕生日を迎える春香に、言うべき事を言う事にした。

「あ、春香ちゃん、ともかく、今日は誕生日なんだよね。誕生日おめ『ピュュュュゥゥウーーーー』『ピシャん!!』うわ!」

朱音の祝いの言葉を遮るようにして、不自然にも、”突風”が吹く。その後、常時開きっぱなしになっている、玄関扉が閉まってしまった。

人影がない事を見ると、強風で閉まったらしい。

「………あ……あれー?強い風が吹き込んで扉が閉まるなんて…あ、危ないなぁ……ほ、ほら、勝也が教室に行っちゃうから、行こう?去年は登校時間終わってすぐサイレンが鳴ったから、急がないと…」

「う、うん…なんでそんな説明口調なの?春香ちゃんは……」

朱音は春香に生返事をした後”不自然な突風”と”不自然に閉まるドア”に、『今のは…嵐の(ストーム)種?誰が……』と漏らしながらも走り出した春香の後に急ぐ。

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清瀬小学校の校舎、すぐ目の前の公園内に二十歳前後の女性が一人。独り言を漏らす。

「ふぅ……春香お嬢様……誕生日のお祝い、初めの一人を選ぶのは、かなり難しいですよ……いくら四期奥様と賢人旦那様の馴れ初めを夢見たからと言って…」

服装はスーツ姿で、軽い身のこなしである。主に脂肪が少ない故だ。

ちなみに春香が勝也の前に姿を現した時、背中に張り付けた草と同じ物を肩から払い落としている。







そんな一連の様子を遠くから伺う黒ジャージに土色仮面の男達。

今日は勝也達と同じぐらいの児童を伴っている。

清虹市はずれの廃ビルで『この手』のリーダー宮西渉・サブリーダー国近麻美を襲った児童である。


男達の中で一番体格の良い男・『弓使い(アーチャ―)』が仮面の中の口を開く。

『ふん、郷派の赤山がしくじったかと思ったが…『乃』は何をやっている?……』

その言葉へ返答するのは三十を思わせる体に、理知的な仕草が垣間見える男・『知識(ノウレッジ)』だ。

「問題ない。奴らは『ここぞ』の時以外は動かない。”取り決め”だ。郷派の奴らは動かん。動く意味が無いからな…」

知識(ノウレッジ)の言葉に思うところがある弓使い(アーチャ―)は皮肉と発破を交えて年少の者に向けて言葉を紡ぐ。

「ふん、我ら”園派”と言っても、今では樹を植えられん。”波”。お前は我ら、園派の目に見える最後の希望だ。抜かるなよ?」

「おい、お前ら、黒土仮面だな?渉からの指示で来たんだが……」

そんな黒土仮面達の会話に割り込み、集団に声をかけるのはサングラスにマスク・帽子を目深に被った男性一人。

哀れにも『”死んだ”宮西渉』の連絡を受け、のこのこと、この場にやって来た男だ。歳は二十代半場を過ぎた頃である。

『この手』No2・国近麻美とその側近・県外に居るメンバーは法力警察に一網打尽された訳だが、清虹市内に潜伏するメンバーは『待機』のままだった。

『力の持つ集団』が崩壊しても、その崩壊の仕方一つで『残った集団の力』はとんでもない方向に向かってしまう。


つまり、『この手で出来る事』は”解散の仕方”が非常にマズかった。

リーダーの宮西渉だけの気分・指示で動いていた集団で、その宮西が急死したのだから当たり前だ。

『この手で出来る事』解散しようとしまいが、”人の迷惑”しか出来ない様だった。

力の頂点に立つ者は取り返しのつかない責任を負う必要がある。



「はい…弓使い(アーチャ―)……その力のままに…」

”波”と呼ばれた児童は、少し遅れながらも、淡々と返事をするのだった。

(ry

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