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力の使い方  作者: やす
三年の春
102/474

#101~力の背後に~

遅れて申し訳ありません…

朝、小学生が登校する頃の時間である。

清虹市の北部、清虹市が出来た初期の頃から人が住まう、土旗地域の中ではそれなりな規模を誇る民家:雨田家の朝から始まる。


家の前で女子児童が一人、息を切らせながら、何かを待っている。

今日は自宅:『土旗で一番の豪邸』で母親に言われる事を言われ(・・・)そうになり、色々(・・)していたら遅れ、普段より気持ち遅めで着いた所だ。

『ガチャン!』と鍵の施錠が開き、玄関ドアが開き、馴染みの顔が出て来た所である。待ち時間は一分も無い正確さで、危うく遅れる所だった。


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「…じゃあ、行って来ます、凪乃おねぇさん。ほら、厘も。」

「行ってきます!凪ノン!」

「…はい、二人とも車に気を付けて……あ、勝也君、恐らく外に……ので勝也君(・・・)が先に声を……」

雨田家に手伝いに出ている、女子大生が玄関まで見送りに来ていた様で、”外に『待ち人』が居るので、些細なお願い事”を言う様だ。


実は、このお願いを言う為に今日はわざわざ玄関まで見送りに来ている。

お願いの途中、凪乃の声が遮られる。

『……う゛、う゛ん…行って…しゃーい……って!凪乃ちゃん!こっち!お料理が!早くしないと焦げ…あぁ!早く!次はどっち…って、お願ーーーーい!』

だが、家の奥からも女性・澄玲の送り出す声だ。女子大生をキッチンに呼んでいる。

どうやら、金山家秘伝、料理のレシピ・調理法を聞き出しているらしい。


澄玲は料理を”普通にそつなくこなす”主婦と、天才法力女医。な兼業主婦だ。

だが、幼い頃から培ってきた料理の腕・金山家秘蔵の調理を駆使する、風間凪乃に子供たちの胃袋を掴まれ、少し焦っている。

しかし、”金山家秘蔵の味”を一般家庭の澄玲はおいそれと聞くわけにはいかず、代替案として澄玲が行っているのは味を舌で覚え、それをそのまま調理で再現し、凪乃の表情・視線・味の感想等を見て無理やり聞き出している。



『今日はいつも以上に見送られているなぁ…母さんも素直に頼んで、聞けば良いのに…』と男子児童は思うが、キッチンからの声で惨状を思い、玄関で固まっている凪乃に慌てて言う。

「ま、まぁ、言う事は言います。それより、母さんが大変みたいなんで…行って見て来てあげて下さい。母さんは凪乃おねぇさんから『バラした』って言わせない為に、ああいう方法でやってるみたいなんで……」

「え?い、いや、で、でも…い、いやしかし…これは大事な事で…それに比べると料理は私のスキを付いて聞き出しているみたいで……い、いや、でも…こちらにお世話になったお礼と考えればっ……ぐっ…知恵お母さん……私はどうしたら……」

と玄関、ドア一枚隔てた向こうで女子大生は困った様に右往左往すると、この場に居ない・地方の金山家別荘の管理を任されている母親へ無意味にも聞いている。

「うぅん?凪ノン。私も春香姉様に『おめでとう』言ってあげるから、忘れないよ?勝にぃよりも”先に”言ってあげるモン!」

そんなやり取りを聞く、男子児童の隣で玄関で靴を履いた、小さい女子児童が大声で言った。


それを玄関の外で聞く女子児童・金山春香は動きを止めて考える…


勝也と厘がドアから外に出るとそこは快晴で、雲一つない青空だった。


家の奥から澄玲の声が響く。

『………あれー?凪乃ちゃーん?……お願いだから………料理を………………』


勝也と厘はその声を聞かず、背後に人影を伴って登校していった。

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朝の清瀬小学校の敷地内を歩く、幼い男女の児童達。

低い塀に囲まれた門と玄関の間は、歩いて十秒もかからない空間だが、ひっきりなしに登校中の児童・誰かが居る時間帯である。

その空間に丁度入って来た男子児童・雨田勝也は連れの女子児童に声をかける。

「…なぁ、今日の夕方の予定、春香には、厘から言うか?」

「うん!勝にぃが言ったら、来てくれないかもしれないから、厘が言う!」

それを”聞く”春香は顔を曇らせる。


最近は雨田兄妹の仲は良好で、前ほどではないが、話をするようになっている。

凪乃が家に手伝いに来てくれるお蔭である。かれこれ、ひと月程度の時間は経つ。


勝也達は小学校前の児童入り口、登校時間は常時空きっぱなしなガラス張りのドアをくぐり、児童達が使う下駄箱・学年毎のスペースへ向かう。勝也は話の続きを再会させる。

「うーん…俺が言っても、そんな事にはならないって…凪乃おねぇさんから”春香の予定は無い”って教えて貰ってるんだから……………まぁ、別に良いか、じゃあな厘、帰りに()春香を連れてくるから、厘が言わなきゃ駄目だぞー」

「うーん!バイバイ、勝にぃ!」『あー厘ちゃん!おはよーー……』『おはよー……行こう!』『あれ?お兄ちゃん?……あ、待ってー厘ちゃ……』

厘は一足先に下駄箱で靴を履き替えると、厘の同級生と朝の挨拶を交わし、二年生の教室に向かって走って行った。


下駄箱に残る者は、勝也”一人”。独り言を漏らす勝也である。

「凪乃おねぇさんも、たまには間違った事も言うんだな……『春香が家の前で勝也君を待ってますっ!…”今日はっ”絶対ですっ!』なんて言って…」

そんな事を考え、口に出して言いながら、勝也は自分の下駄箱で靴を履き替える。


…と、その後ろに姿を現す女子児童の姿。勝也のクラスメイトだ。

「おはよ、アマチ―君?」

「おはよう……って、アマチ―は辞めい!あれ?”一緒”に来るんじゃないの?」

「ああ?あの”バカ”は風邪。いつも一緒って訳じゃないよ。」

転校してきた双子の妹、山郷朱音だ。

いつも一緒に居そうな双子の兄、山郷純一の姿はない。どうやら、いつも一緒ではないらしい。朱音は言葉を続ける。

「それより、今日は変な感じ。…全学年が『全校集会』と『避難訓練』だけって……、前にいた学校じゃ、そんな事無かったけど…」

荷物は何も持っていない様子の朱音だ。学校の違いに付いて感想を述べている。

もっとも、私立と市立で違うのだから当たり前だ。

ちなみに、『私立』は区別するために『わたくしりつ』と読んでも良い。


「清瀬小学校じゃ春の終わりに毎年だよ。昔からやってるらしいけどね。」

『ふぅん?…』とキの無い返事をする朱音。靴を脱ぎ始めている。


そんな勝也と朱音の後ろに、さらにもう一人、女子児童が現れる。

顔は偶然を装っているが、若干の引っ掛かりを覚えている様子だ。

「お、おはよう、朱音ちゃん。…と、勝也?……も居たの?今日は遅れちゃって……私たちが下駄箱を使うんだから、アマチ―はさっさと退いて。」

そこには金山春香が草を少し背中に張り付けた様子である。聞かれても居ないのに『遅れちゃった』と言うのは少しおかしい。

今日はいつもより少し登校時間が遅く設定されているため、まだまだ時間に余裕はあるのだが……


そんな些細な事を気に止めず、いち早く挨拶を返すのは朱音。

「おはよー春香ちゃん!この前の本がさー……」「ああ、あれはね、二つの解釈があってその………」

三年一組の女子二人は本の話題で盛り上がり、勝也を無視する様に盛り上がっている。

春香に指摘された事に、若干の申し訳なさを出しつつ、『アマチ―は辞めれ…』とこぼす勝也は二人に下駄箱の前を明け渡した。


二人の女子が話しをしているが、勝也は”確認したい事”を聞く。

「あのさ、春香?」『ん?アマチ―君まだ居たの?』「な、なに?勝也?」

「今日はウチで”パーティ”をするけど、秋穂お姉さんから聞いてるよな?風間おねぇさんかもしれないけど…」

『なっ、なんの?』とそれに食いつくのは春香と話ていた朱音だ。

春香は驚いて『いっ…い、今言う?』と慌て、言葉を返せないでいる。


勝也は気軽に、朱音へ答える様だ。

「今日は春香の誕生日なんだよ。その誕生日会をウチで開こうと思って……良かったら朱音もウチ来る?四、五人なら、人が増えても大丈夫だけど…」

『きっ…今日!!』と朱音は驚いた。

春香は『かっ、勝手にぃ!…』と付き合いの長い者にしかわからない程度で、少しだけ声を荒らげる。

(ry

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