#9~応酬する力~
前の8部のBパートみたいなものです。
男の位置に抜けている部分があったため少し直しています。
ほとんど変化はありませんが…
改編をお許し下さい。
ブレイクスルーって誤用でした…
時は少し遡る
春香と勝也が秋穂の言葉を碌に聞かず、玄関扉を開け放ちながら家に入ると
「春香!!……」「勝ちゃん!!」
と母親達が声を掛け、身じろぎをする。
それを黙って見過ごさない黒ジャージ男達は機能的に動く。
秋穂、風間達二人には風間に三人、秋穂に四人付き、玄関前に三人。四期奥様と澄玲の母親二人と厘一人には誰も付かない。玄関前の三人の内一人が開いたままの玄関から堂々と家に侵入しようとする。もう一人が四期奥様達に迫る
四期奥様はすかさず、『水生成!』と発言し、空気中の水分を結露させて水を作る。と、そのまま息継ぎをしない様に『水の矢』と手を振って続ける。技の発動には僅か四秒程。
空気中に作られた水が矢の形になり、家に入ろうとする男に向かう。
矢に狙われる男は無視するかの如く動き、矢は男の背中に突き刺さった。
『ジュワ……』
だが、まるで気付かない様に右わき腹に水が染み込むだけに終わる。
「流石は土装甲……系統では不利だけど……私の水系攻撃じゃまるで歯が立たない、か…」
母親二人の目の前に居る男は無視されている事に何を思うか解らないが、黙って棍棒を振り上げる。狙いは四期奥様だ。
「生成!矢!」
厘の目を両手で隠し、お腹に押さえながらもクイックの宣言だけ。という一瞬の荒技をしたのは澄玲だ。
恐らくこの場では法力を扱う技術:法術のレベルが違う。四期奥様が四秒でやった一連の動きを一秒も掛からずにやってのける。
問題の水の矢は振り上げた棍棒に当たり、『ゴンッ!』と砕け散った。
棍棒が粉砕した事でさすがに『んッ…』と唸った男は目の前に居る相手の力量を見誤っていた。
ーーすると玄関ドアが開いている家から音がする『ゴ……、…シャ…ン!』何事かと外に居る一同は顔を見合わせるが続く『ゥ…タ…ェ…』で澄玲は理解し、事が起きる前に四期奥様へ言う
「ごめんなさい…修理費は」『ブワァォォォォン!!』
盛大な爆発音を聞き、とても民家から聞こえるハズがない音がした。
映画館か、ウーファースピーカー等でしか聞いた事が無い爆音である。静寂の後、少しして不明瞭に声が聞こえる。
「…のぉ…いた…じゃな……ぉバカ!…………………秋穂…ねぇ…みた…に!……じゃない!」
「あら?この声は…春香ちゃんの声ね、良かった…水爆発に巻き込まれていないわね、あの子もまさか……あんな大技を使うなんて……春香ちゃんを守る騎士にでもなったつもりなの……?」
笑いをこらえる様にかなり物騒な、屋内で使えるはずもない、ましてや勝也の様な幼い子供が使うという、危険な事を聞き、四期奥様は仰天顔だ。
『な…い…の…けるあいて………いたい……い………い……じゃ…い………………………………………………………………………………………ずっといっしょ…、…い…しょ…、…からね…………しぬまで…………いって…やるんだからぁ!!』
春香の大声を部分的に聴き、聞こえない部分を適当に補完して聞く。外の面子は赤い顔をする。
「全く…春香は大声で、はしたない…『ずっと一生一緒に居たい、死ぬまで言ってやる』だなんて……あの子は一体何を考えているんだか……」
四期奥様の言葉を否定するわけにもいかず、澄玲はあたりさわりない返事をする。
「まぁ……子供の言う事ですから……大人になった時に本当かどうか聞きましょう……」
それを聞きつけた厘は無邪気に言った。
「春香お姉様が一緒になるの?ヤッター!春香お姉様が家に来るー!!」
四期奥様に襲いかかっていた男は興味を無くしたように秋穂達に向かい、
一人で五人を相手に秋穂は次々と波状攻撃を受け、自分の棍棒が半分程度に折れてしまった時、極度の疲労と脅威的な集中力で疲れた精神が擦り切れそうになっていた。
家からの爆音、春香達の声がした事で起きた、わずかなブレイクタイムが終わる。
すぐに続きます




