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強敵、バターン騎士団 その4

―――――――――その頃、ルベアの一団は囮作戦をするため、ロレンヌの付近まで進軍していた。横隊に展開するルベアの部隊は敵部隊の接敵に備える。すると前方から颯爽と少数部隊が向かって来るのが見えた。兵士らが身構える。ミネルヴァが目を細めた。


「ドンタールさんです」

「ちゃんと、連れて来ているか?」


 ルベアの質問にミネルヴァは何かを見通すかのように見入る。そして頷く。


「はい。かなりの数です」


 ミネルヴァはルベアに目線を送る。そのとき、ミネルヴァは自分の首飾りが無いことに気がつく。


(――――――――ゾス様が居ない?)


 ミネルヴァがキョロキョロと見渡しゾスを捜す。


「何を捜しておるのだ?」


 ゾスがミネルヴァの後ろから現れた。


「ウロウロしないで下さい。邪魔になりますから」

「わかっておるわ」


 ゾスはそう言ってニヤリと笑う。


 ドンタールがルベアの目の前にまでやってくると、馬の手綱を思いっきり引く。馬の方向をルベアの部隊の向きに合わせた。


「ルベア様! 二万の敵軍が追撃してきました!! 大漁であるぞ」

「二万かぁ……予想より、少し多いな。まぁいっか」

「ルベア様。そろそろ、目標地点に到着するでござる!」

「よし! 合図しろ」

「全隊、大樽を降ろし準備せよ」


 アドルが自分の後ろにいる部隊に向かって大きく手を振り合図を出す。それに荷馬車の護衛兵らが俊敏な動きで、大樽を部隊の目の前に運び始める。


「もたもたするな! 急げ」


 荷馬車の護衛兵らの部隊長が声を荒げる。ルベアの兵団の前に大樽が横二列にずらりと並べられ、異様な光景になった。ゾスがそれに怪訝する。


(―――――――なんだ、この樽は? こんなのは初めて見る………このルベアとやら何を考えている……?)


 ゾスが疑問するのも無理はない。通常の戦場ではこのような光景はないだろう。横隊であるならば、長槍をすきまなく揃えて騎兵に備えるのが、この時代の戦法である。


 大樽の準備を完了した事を確認したルベアは深く頷き、次の指示を出す。


「剣士隊前へ! 三列横隊っ!」


 その言葉に剣士隊が前に整列し始める。


「指示があるまで待機するでござる!」


 アドルが部隊に待機の命令を出す。それに、兵士らは従順に従う。この剣士隊はとくに、長槍や盾を持っているわけではない。ましてや、腰にぶら下げる剣一つである。これでは敵の攻撃を押し返せるとは、思えない。もしも、敵の騎馬隊が突撃されたら、ひとたまりも無いだろう……では、なぜこのような陣形にしたのか?それは後の戦いで、明かされる事のなる。


 数分後、遠くの方から土埃があがっているのが確認できた。視線に映った大軍に剣士隊の全員が息を呑み冷や汗を流す。ルベアは敵軍の動きを見入る。


「おぉ~お、真っ直ぐこっちに来てるわ」

「ルベア様? まだですか」

「もう少し、近づいてからだ」


 敵軍の角笛や馬蹄の音がはっきり聞え始めたとき、ルベアが右手を真っ直ぐに上げた。それは準備の合図である。


「樽の蓋をあけろ! 前列が装備し後列が次弾装填の補佐! 最後列はやられた所に入り隙間を埋めろ!」


 ドンタールがその指示を出している間にも剣士隊は樽の蓋を開け装備していた。


「奴らに思い知らしてやれッ!」


 ルベアがアドルに振り向き、そう言う。


「構えぃ―――――――ッ!!!」


 アドルが剣士隊に射る姿勢に入らせた。


(――――――――なるほど。誘き寄せた理由はこれだったか。初めてみる戦術……こやつ、面白い発想をする)


 ゾスはルベアを下から見上げた。










 その動きはドラゴマ軍にも見えていた。ボアラは不思議に思った。騎馬隊が突撃陣形で突き進むにも関わらず、相手部隊は横三列に兵を並べているからだ。大盾も持たず、長槍も持たず、ただ、やられるのを待っているように思えた。それには、笑いが止まらなくなる。


「ガッハッハハハ―――――――っ!!! 戦場での戦い方も忘れたのかっ?! 老いぼれめ!!」


 不審に思う部下がボアラに質問する。


「ボアラ卿!! どうも不自然です! 我々の部隊に対してあの陣形!! 何か策でもあるのでは?」

「そんなもの、あったところで、我が騎馬隊はやられはせん!突撃し敵を踏み潰せばよいのだ」


 ラーバス将軍と見られる部隊から何かが放たれ太陽の光にキラりと輝く。謎の黒い物体が空を覆い尽し、風を切る音を鳴らし弧を描いた。自分たちに真っ直ぐ向かってくる。

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