強敵、バターン騎士団 その3
ボアラが率いる守備隊がロレンヌの城門から出撃して行く。部隊構成は迎撃の陣形で先頭列は騎馬隊で構成されている。その後ろに軽装槍隊、そして剣士隊である。もちろん、ボアラは先頭列で指揮を執るようだ。これが、ルベアの作戦とも知らずに。
「全軍! 俺様に続けぃ――――――――!!」
ボアラの号令の下、兵士らの喚声と共に馬蹄が地鳴りの音を立てて、砂埃を舞い上げた。城門をくぐる守備隊を城壁の通路から眺めるバターン騎士団の一人がつぶやいた。
「あーあ。手柄、取られちゃったな……」
この残念がる少年の名前はライズ。バターン騎士団所属、攻撃隊隊長である。彼はまだ、騎士になったばかりで、経験は浅い。だが、剣術はそこらの一般兵よりも優れている。数日前の任務では、魔獣でも有名なコカトリスをたった一人で倒している為、騎士団の一部の指揮を負かされている。優秀ではあるが、昇進と、報酬金にかなりの執着心があり、任務の内容よりも報酬金の額で任務に対しても、やる気が違う。
「機会なら、いくらでもあるよ。それに、この任務は重要だよ。ライズ」
そう慰めるこの娘は同じく、バターン騎士団所属、調査隊隊長、名前はニコラ。彼女の職務は騎士団の支援である。例えば、任務の対象となる人物、魔獣などを事前に調査し、その特質、生態、どこにいるか、何をしているかなど、詳細かつ正確に騎士団の団長らに報告する事をしている。今回は先行して、謎の女の調査をしていたのだが、その女が出現する地域しか特定することができなかった。その為本隊である、バターン騎士団に合流する事にした。
「よく、そんな呑気な事を言えるよな。お前は。俺には理解が出来ないね。大金が手に入るのに、狩りに行かないなんて。団長はどうかしているぜ」
ライズは城壁に頬杖をつくとため息をついた。
「もーそんな事、言わないの。団長に聞かれたら、怒られるよ」
「へーへ。わかりましたよ。二コル」
「ニコル。こんな所にいたのか」
「えっあっ。は、はい!」
ニコルは不意に声を掛けられたせいか、てんぱりながらも敬礼した。
「ニコル……敬礼が、反対だぞ……」
少し呆れた顔でジーンが言った。
「あっ! その、申し訳ありません! 団長殿!!!!」
急いで、団長に対して正しい敬礼をする。
「いつになったら、落ち着くんだ。お前は」
ライズが小さくささやくと、ニコラはイラついたのか、肘でライズの横っ腹を突いた。
「いってぇーなこの!」
「おい。ライズ! 団長に挨拶をしないか!それでも、騎士か?!」
「はぁ? 俺は騎士になりたくて、なったんじゃねぇーよ。俺は金払いが良かったから、ここにはいったんだよ」
「ライズ! 貴様ッ!!」
一歩前に出たジーンを団長であるグレバスが止める。
「まぁ。落ちつけ。ジーン」
「しかしー」
「ライズは俺達の仲間だ。そして、俺達の大切な家族でもあるんだ」
「はぁ。団長は、甘いですね……」
ジーンは諦めたのか怒りの表情を緩めた。
「それより、二コル」
「あっはい!」
「例の女について、最新の情報はあるか?」
「はい。奴の名前を断定しました。その女はどうやら、ミネルヴァと、呼ばれているようです」
「なるほど。他は?」
「なにも得られませんでした。周辺調査に行った部下は全員、殺されました。恐ろしいほどの察知能力です」
「やはり、ルベアの部隊の主戦力はその、ミネルヴァという事か……」
「とすると、そのミネルヴァさえ、殺せば、ルベア隊は烏合の衆終という事……ですかね?」
「あぁ。そういうことだ。運よければ、シェール軍の主力を削ぐ事が出来る」
「これは、大仕事になりますな」
トムが厄介そうな相手だと両肩を上げて両腕を広げた。それにグレバスも小さく頷く。




