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魔王と呼ばれた女剣闘士を買った少年の物語(完成版)  作者: 飯塚ヒロアキ
第一章 侵略者と復讐を誓う少女
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戦いの準備 

 数日後、ルベア率いる部隊がレブソン城塞に到着した。城塞の近くにはすでに多くの部隊が幕舎を居並べ、集結していた。


 レブソン城塞――――――平原が広がる場所に一つの湖がある。その湖の近くには小高い丘がありそこに築かれた城塞は、今から三百年から四百年の間で、土地を治めていたアングレロス侯爵という貴族の居城であった。しかし、今ではそのアングレロス侯爵は自らの務めである土地と城の守りを放棄し、シェールから逃亡した。城主が居なくなったレブソン城塞はすぐさま山賊の根城になっていた。


 数日前にシェール軍の討伐隊六千からなる精鋭部隊によって、攻城戦が実行され、三日で奪い返すことに成功する。山賊によって城内は荒れ果て、城壁は崩れ落ち、蜘蛛の巣がいたるところにある。まるで廃墟同然だ。これでは防衛には向いていないこと考えたアングレロス侯爵が逃げ出す理由もわからなくはない。だが、それで許されることではない。残された民が路頭に迷い、暇を持て余したドラゴマ兵の暇潰しの対象になったのだから。



 そんなレブソン城塞の一室で古くてかび臭い作戦室で軍議が開かれた。当然、ルベアとイェルグもそこに参加していた。


「――――――――諸君。敵の包囲網からの苦難と無事にここまで、生き延びた事、ご苦労じゃった。この場を借りて感謝するのお」


 長机の真ん中に座っていた老将軍ラーバスが見渡すように武官らを労った。


「将軍。部隊は全部で、六部隊。約一万弱の兵力が集結しました」

「うむ。城攻めには、兵力不足ではあるが相手も同じ。戦線の拡大に疲弊しておると聞く」


 そんななか、作戦室に兵士が駆け込んで来る。息を整えたあと、ラーバスに敬礼し、持ってきた情報を報告する。

 

「閣下、朗報です! 先ほど、早馬が来ました。伝令によると現在、ドラゴマ軍は帝国軍と海岸沖で交戦中との事」

「「「おぉ!」」」


 軍議室が沸きあがった。


「ドラゴマ軍の目は帝国に向いているか……」


 ルベアは顎に手を添えた。そのタイミングでミネルヴァが扉から入ってきて音も立てず、ルベアの背後に控える。それに、気がついたルベアが目だけを動かし、ミネルヴァに小声で尋ねる。


「……一週間、どこに行っていた?」

「少し、私情をはさんでいました。……申し訳ありません」

「いいや。ミネルが帰って来たんだから問題ないさ」


 両肩を上げてそう言ったルベアは目線をラーバスへと戻す。ミネルヴァと小話をしている間に軍議の話が進んでいた。


「――――――ということで我々は守備部隊が留守の時を見計らい、総攻撃を仕掛けます。それに伴い、堅く、厳重に閉ざされた城門を開かなければ、なりません」

「さて、どうするかのう……」


 ラーバスは目頭を押えた。年齢もそうだが疲れているようである。誰もが良い作戦が無いものかと、腕を組み考え込んで沈黙する。唸る声と誰かの独り言しか聞えてこない。そんな静寂した軍議の中、一人の武官が手をあげる。それにラーバスが気がつく。


「ルベア殿。何か妙案でもあるのかな?」

「はい。私に案があります」

「ふん。お前に頭があるとは思えんが。閣下。聞くだけ無駄です」


 イェルグが小馬鹿にしたように言た。それに数名のシェール側の武官らが同意するかのように頷く。外部の人間が指揮官であることが、不愉快なのである。ましてや国が滅んだ、哀れな女将軍など、信頼もされていない。


「まぁ。そう言うな。イェルグ」

「しかし、この女はあのプルクテスの女です。滅ぼされた国の将官に何を教わる事がありますか。同じ、失敗をするだけです」

「イェルグ殿。嫉妬は止めていただきたいでござる」


 ずっと黙り込んでいたアドルが口を開いた。


「俺が、嫉妬だと?!」

「その通りである。連戦連敗している貴殿と、我々は違う。それが、気に喰わないのでしょう」


 ドンタールがアドルに続いて言い放つ。ルベアに対しての嫌味に腹を立てたように見えた。


「貴様!! もう一度、言って見ろ」


 イェルグが椅子から立ち上がると、それにアドルとドンタール達が立ち上がる。座ったままなのはラーバスとルベアだけたった。ミネルヴァは無言のまま茶色の双眼を向けるだけだった。口論が続き、一触即発の状況になってしまう。ラーバスは両側で喚き争う武官らに呆れてしまい、何も言わなかった。ラーバスの直属の女兵士らが彼を守ろうと庇うように身を挺する。


「はぁ……ミネル」


 ルベアが呆れるようにミネルヴァの名前を呼んだ。ミネルヴァは勢いよく剣を抜く。それを見た瞬間、全員が静止し自分の席にゆっくりと座った。イェルグも眉間をピクつかせながらも怒りの籠った表情で同じく座る。彼女の恐ろしさは誰もが知っている。例え、百戦錬磨の武官らでも口を引っ込めてしまう。


「……諸君。友軍同士の争いは見苦しいのう」


 ラーバスは身内の情けない姿に頭を抱えながら、ため息を吐いた。そのあと、切り替えるように言葉を続ける。


「まぁよい。それで、ルベア殿、その案とやらを、わしに聞かしてもらおうのう? 聞くだけなら誰も文句は言わせんぞ」

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