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魔王と呼ばれた女剣闘士を買った少年の物語(完成版)  作者: 飯塚ヒロアキ
第一章 侵略者と復讐を誓う少女
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魔王再臨 その4

 戦局は黒髪の女によって流れが変わり、シェール軍の巻き返しが始まる。今までなかった反撃にドラゴマ軍が戸惑っている間に、ハニアに展開する第一軍が突破され、瓦解する。それによりドラゴマ軍は浮き足たった。軍隊の規模では圧倒的に優位に立っていたのにそれが覆された。それもたった一人の黒髪の少女によって変えられたのである。単純に言えば、その黒髪の少女がその戦場に居るか居ないかで、戦いが決する。この黒髪の少女の出現で、気分を損ねた者がいた。


 第二軍、第三軍の後方、丘になっている場所に本隊として陣を敷く、豪傑の男が傷だらけの手を拳にし、振るわせる。


「何をしておるのだ。余の軍は?! たった一人の女も倒せん腰抜けどもめ」


 端を発しているこの者はドラゴマ国の王、ドラゴニス・ニッヒである。彼は犠牲をなんとも思わない冷血な人物であり、独裁者である。彼に逆らうものなら、一族血祭りにあげたこともあった。その為、その傘下にいる貴族たちは怯えながら、絶対服従を誓っている。


「陛下! 第二軍の陣形が崩れましたッ!! またあの女のせいです」


 味方がいる方へ指を差した。


「例の指揮官も有能のようです。戦場の流れを見抜いている。確か……アルバニス・ルベアとかいう名の女です」


 この男は地方貴族の男で名はロンレンスと言い爵位は男爵でまだ若い。


「プルクテスの死に損ないめ。余はそんな雌狐には惨敗などせんぞ」


 そう言うと馬の手綱を強く握り締め、歯軋りをした。自分の思い通りにならない事が、不快なのだろう。


「ハハハ。ご安心下さい。今日は陛下直々に来られたのです。陛下の采配がさえあれば、必ず大勝利になるでしょう!」

「そうでなければ困る。余の主力部隊を導入しておるのだからな」


 部下たちの士気の高さを見て少し落ち着ついたのか誇らしげに自慢の髭を擦り始めた。しかし、ロンレンスの考えは違った。自分の兵士がやられていく惨状を見て、黙ってはいられなくなり浅はかにもドラゴニス王に撤退するように具申した。


「陛下。このままでは本隊が危ないかと思います。どうか撤退の命令を」

「……ロンレンス卿? 貴様は何時から余の指図をするようになったのだ? ん?」


 ロンレンスは畏敬するように頭を下げる。


「も、申し訳ありません。しかし―――――」

「第三軍を前に出せ。その後、弓矢隊を両側面に挟むように配備せよ」


 そう合図を出した。ドラゴニスの号令と共に兵士の手によって角笛が鳴らされる。


「第三軍! 前へ進めぇぇぇ―――――――!!!」


 掛け声と同時に第三軍が敵軍へ前進する。それを見て、ロンレンス卿が目を真っ赤にして訴えかける。


「恐れながら、申し上げます! この状況下での戦力投入は自殺行為です!!! どうか、ご撤退を」

「かまわん。第二歩兵隊はウィンランド人の集まりだ。我が軍にとって、痛くも痒くもない」


 ウィンランド人とはドラゴマ国により征服された国であり、その生き残りで奴隷とされ、以前まではプルクテス国の商品として、交易していた。が、そのプルクテス国は商品の奴隷らが内乱を起こし、全面的に交易が途絶したのである。


 年老いた貴族がドラゴニス王に恐れることなく話しかけてきた。


「そういう問題ではありませんぞ! 陛下」


 それにドラゴニスは不機嫌そうにその老貴族を睨みつける。 


「黙れ。フレル卿」

「何をお考えかは、既に察しております」

「流石だ。余のやり方をよく知っておる。ならば止めても無駄ぞ」

「なりませんぞ。それこそ周辺諸国から反発を受けまする」


 ドラゴニス王に撤退を促している間にドラゴマ軍の第二軍がシェール軍と接触し、激しい攻防戦を開始していた。








 その頃、シェール軍側では――――――


「ルベア様! 敵部隊が新手を出してきたでござる」


 走り込んでくる敵部隊に指を差す。それにルベアは直ぐに反応した。敵兵と闘いながらも余裕を見せてこう言った。


「アドル! そんぐらいわかってんだよ! このハゲ! あードンタールは居るか!」

「えっ!? ハゲじゃないでござるよ」

「うるせぇ! お前じゃあねぇよ」


 アドルの横っ腹を蹴りつけた。


「なんであるか! ルベア様」


 近くで闘っていたドンタールと言う騎士が自分が呼ばれた事に気がついて、近寄ってきた。ルベアはある方向に顎で指差した。


「あれをみろ。敵の弓兵が両側面に囲むように展開している」


(――――――この形は恐らく、敵味方関係なく蜂の巣にするつもりだな。下衆の考えだな)


 ドンタールは言われた通り、目を細めて、味方と敵との距離を確認してみると、かなり入り混じっていた。それにも関わらず、敵の弓隊が前線に出てきて、こちらに弓を構えるのがわかったのである。


「こりゃあ、まずいであるな。どうするであるか?」

「前線の部隊を後退させろ。それにミネルもだ。あいつは敵と接近しすぎている」

「承知!」


 ドンタールは声を張り上げると直ぐ馬に鞭を打って早々と駆けていった。

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