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調査報告 その4

――――――――グラリスはそう心に誓った。


 ニブラスの市街を徘徊したあと、ヨハンネは急になにかを思い出したかの様に足早に自宅へと戻る。ヨハンネは父親であるグレイゴスの仕事の手伝いをすることを忘れていたのである。


 ヨハンネがグレイゴスと共に、商談へ出向くことになった。グラリスの目的はあくまで、ミネルヴァの監視である為、キンブレイト邸に残ることにした。ミネルヴァは今日、買った本やら絵巻物やら古文書やらよくわからない物をヨハンネから預かり書庫へ運ぶ。その後ろをグラリスは付いて行く。


 ミネルヴァは荷物を持ち直した時、一枚の折りたたまれた紙が地面に落ちた。しかし、ミネルヴァはそれに気がつく事無く歩いて行く。それをグラリスは歩み寄り、拾い上げた。


「落としたぞ。黒髪」


 それに振り向くミネルヴァはあっとした顔をして、近づき、それを手に取る。お礼は言わず、会釈するだけで、すぐに歩き去って行く。


(―――――――――何、今の態度!! ヨハンネ殿の時より、愛想悪過ぎでしょッ!!)


 ミネルヴァを追いかけ、彼女の背後から話しかける。


「それにしても、ヨハンネ殿は変わり者ですね?太古に書かれた書物なんか集めてさぁ。冒険家にでもなるつもりでしょうか」


 すると、私にはわかりません、と前を向いたまま述べた。


「なるほど。わかりませんですか。まー私には関係ありませんから良いですけどね。ただ、謎の多い人だ」


 それにミネルヴァは足を止め、振り返ると睨みつける。


「言っておきますが私に付きまとうのは構いません。しかし、ご主人様に迷惑をかけたら許しませんので、そのことはお忘れない様に」

「おぉ、おキツい言葉だね……」


 グラリスは苦笑いする。久々に恐怖を感じた。


(―――――――――あの目つき……あれは、殺人鬼の目だ……)


 グラリスは今の態度を報告書に書こうとしたが、手がまたもや止まってしまう。この時、少しだけこの黒髪の心がわかった気がしたのだ。それはミネルヴァがさっき、自分は何をされようとも、文句は言わないが、自分の主人にしたら、許さないと言った台詞に引っかかったからだ。これは正しく、騎士道に準ずるものではないか?、と思った。ヨハンネのことになるとミネルヴァは過剰な反応を見せる。


(―――――――やはり、忠実なる奴隷なのか。いや、普通なら主に仕える騎士と同等の役目をしている……)





==============================================================================================





 ミネルヴァは邸宅の掃除をしながら主人の帰りを待っていた。それをグラリスがジッと見つめる。


(―――――――――なぜ、メイド服まで来ているのだ?)


 そんなとき、キンブレイト邸の前にある門が錆びついた音を立てながら開いた。どうやら、ヨハンネが仕事を終えて帰って来たようだ。それに反応した、ミネルヴァはいち早く、主を迎えようと外へと出て行く。どこかミネルヴァが主の帰りを待ちきれなかったようにみえた。


(――――――他の者より反応が速いし?! しかも、階段を降りるのも速いし……)


 小走りで出迎えにいくミネルヴァは無表情だったが、そこにグラリスは疑問に思った。



(――――――どうなってんのよ?)


 ミネルヴァが馬車の近くに立ち、手を差し出す。ヨハンネは彼女の手に取って馬車から降りる。


「お帰りなさいませ、ご主人様」

「うん。ただいま」


 ヨハンネはニッコリと笑った。続けてヨハンネが話し始める。


「あそうそう、実はね。今日の交渉は上手く行ったんだ。だからでは無いんだけど、君にお土産を買ってきたんだ」

「私に、ですか?」


 ミネルヴァは目を見開く。ヨハンネはその驚きに微笑みながら頷く。


「あ、ありがとうございます。ご主人様」


 そう言って、ミネルヴァは深くお辞儀した。


「じゃあ後で渡してあげるよ」


 と言うと、二人はグラリスを素通りし、キンブレイト邸に入って行く。グラリスはそれにイラついたのか報告書の隅っこに、ツッコミを入れる。軽い殴り書きで、お前ら、私の存在を忘れるなよ!!!、と記した。

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