調査報告 その2
調査報告二日目。今日の朝は昨日と同じ動きで、なんの問題も無く時が流れていった。だが、少し時間が経った頃、どこかに行く様子が見えた。どうやら今日の晩食を買う為に、市街地に行く様だ。馬車は使わず、歩いて行くと思われる。それは私的にありがたい。なぜなら、追跡が可能だからだ。
対象者とヨハンネは仲良く会話をしている。ヨハンネが積極的に話しかけており、それに頷いたり、返事する対象者。
(――――――――あれ? これ……デートなのか?)
グラリスは自分の両目を擦った。それは自分が夢を見ているように思えたからだ。グラリスが過去、監視を命令された奴隷は極端にわかりやすい者ばかりだった。例えば、主人の後ろ姿に憎悪を込めて睨む者。反逆を目論む動き。ましてや一度、奴隷が主人を殺した事もあった。
グラリスはこの場に居たが何も出来ず、プルクテス都市守備隊に通報した。
(―――――――そのあとは、まー言わない事にする。あまりにも、酷すぎるから……)
プルクテスでは拷問機が多く発明されている。それらを使って―――――――話を戻すことにする。
グラリスは追跡を始めてから直ぐに気がついた事があった。そして、あまりにも驚き、固まってしまう。と言うのも、対象者は腰に立派な長剣をぶら下げて、その主人は手ぶらだったからだ。そのヨハンネの背後を常に歩いている。
(―――――――――これは、斬りかかる機会を窺っているのではないのか?!)
グラリスは焦り、腰にさげてある、監視兵専用剣をいつでも、抜くことができるようにした。もし、対象者が人通りの少ない路地に入った瞬間はとても危険だ。そんな時には、自分がヨハンネを守らなければならない。この身が傷つこうとも、職務を全うせねば、降格処分もあれば、名誉も失ってしまう。
その後、無事に市街地にある市場にたどり着いたようだ。グラリスは見つからないように彼らの視覚に隠れて、監視を続けた。対象者が振り返り、あたりを見渡し始める。
(――――――――――それはまるで、誰かを探しているように……なんなのあの対象者は……薄気味悪い)
そして、その対象者と目が合った気がした。グラリスは直ぐに身を縮めて、隠れた。
(―――――――――い、今、完全に目が合ったよね?!)
グラリスの心拍数が急に上がった。自分でもその心音がわかるくらいだ。人通りの多いこの路地で。
(―――――――――嘘でしょ?)
グラリスは確認する為、こっそりと覗き込む。対象者はまだこちらを向いている。
「ご主人様?」
「ん? なんだい」
食材を選びながら、ヨハンネは彼女に耳を貸した。
「どうやら、追跡者がいるようです」
「へ~多分それ、奴隷監視委員会だと思うよ。あっこれ下さい」
商品と手にし店の人に言っていた。ヨハンネの反応は薄かった。と言うのも奴隷監視委員会がこのプルクテスにわんさかと存在し、監視される事なんて珍しくもない。
「例の方々ですね? どうしますか」
ヨハンネに歩み寄る。
「気にしなくていいよ。大丈夫。君は何も悪い事はしていないから」
「そうですか……」
グラリスの居た方向をじっと見つめた、対象者は完全にグラリスを察知していたようだ。ヨハンネはそれほど、気にしていないが、彼女は違っていた。もしも、ヨハンネに危害を加えるのならそれを確実に排除すると対象者は決めていた。
「……ミネルヴァ? 行くよ」
不意に言われた彼女はすぐさま、ヨハンネに振り返り、頷く。
「はい。ご主人様」
そして二人はその場を後にしたのであった。今日はこれ以上の追跡及び監視は危険すぎると判断し、任務を一時断念した。これはまだ、大隊長には報告しない事にする。やはり、最後まで監視する必要性があるからだ。あまりにも、対象者の行動が謎に満ちている。明日、改めて監視をする。以上。
奴隷監視委員会、第十一保安部隊所属グラリス・アレイシア。
(―――――――――この命、国に、国王陛下に、尽くさん。プルクテス国万歳!)




