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犬猿の仲 その4

 それから、数分の後、探索隊に事情を説明しミネルヴァとハルトは彼らと別れた。坑道の奥へ行くことに反対されたがミネルヴァが、文句があるならご主人様の邪魔をする者と見なし容赦はしない、言い残し本来の目的であるソリアの花を探しに坑道の先に進んだ。それにしても坑道の長さは不気味なほどだった。薄暗く、空気は重たい。歩いても歩いても、終わりが見えなかった。しかも、落盤事故がよくあると噂された通り、岩などに押し潰された遺体がそこらに転がっている。ハルトも薄気味悪がっていたが、とある事に気が付いた。


「ちょっと待てよ。そう言えばここは、金鉱山だったなぁぐへへへ……」


 怪しい笑みを見せると、ハルトはよからぬことを考えつく。早速、近くに落ちていた麻袋とつるはしを手に取って辺りを見渡す。それに気がついたミネルヴァだったが彼に何も言わなかった。それよりも彼女には最優先するべき重要な目的があったからである。歩き続けて、やっとの思いで、坑道が徐々にひらけている場所にまで辿り着いたが、そこで、行き止まりだった。ミネルヴァが目を細め、いぶかしげな顔をする。ハルトは落胆な顔をしながら肩を落とす。


「え―――マジかよ。ここで行き止まりじゃん……」


 ミネルヴァも悔しいが流石に諦めようと考えた。


「……」


 無言で方向転換し、帰ろうとした時、どこからか風が通り抜ける音がした。それに反応したミネルヴァは行き止まりだった岩盤を凝視した。


「何? どうしたんだよ」

「うるさいです。黙っていてください」


 と言うと、ミネルヴァは何かを確信したのか岩盤を足で蹴る構えをした。そして、回し蹴りを入れる。その瞬間、行き止まりだと思っていた岩盤があっさりと崩れ落ちたのである。


 崩れ落ちた先から眩い光があふれ出る。それまで、暗闇に慣れていた二人は思わず、目を手で覆った。光が弱まり、その先をようやく見る事ができたとき二人は驚く。その先に現れたのは、洞窟の様な場所で中央に大きな泉があった。幻想的な風景に思わず、二人は感動し言葉を忘れる。その泉の前には古びた銅像が一つぽつりと寂しく立っていた。


 そればかりではない。ミネルヴァが探していたソリアの花がその銅像の周りを飾るかのように咲き誇っていたのである。少しだけ時間を忘れてしまった。


(―――――――――なんて、美しいのだろうか……。こんな美しい花を直接、ご主人様に見せてあげたい……)


 ミネルヴァはソリアの花が本当にあるのか分からなかった為、主に無駄足をさせたくなかった。だから待機してもらったのだが今、それを後悔してしまった。二人は、謎の石像に歩み寄る。石像の下にある石に文字が刻まれていた。当然、ミネルヴァにはそれが何の意味であるか分からないので、ただ、見下ろすだけ。彼女は悔しそうに口を尖らせる。


 ハルトがミネルヴァに気を使ってその刻まれた文字を読み上げた。


「えぇどれどれ―――――我が偉大なる王の子よ。ここに眠らん。安らぎと安息を求め、ここに辿り着く。そして王の花と共に眠れ――――――愛しき我が子よ。そして、この大陸の平和を祈る者として、後世に祈り続けん―――――アナスタシアより愛を込めて…」


 その後、ハルトの眉が寄り、難しそうな顔をした。


「ん~ダメだ。あとは読めない。多分この石像の名前主だと思うんだけど……風化が激しい」


 ハルトが指差している部分は確かに薄くなっていた。ミネルヴァが小首を傾げる。


「でも何故こんな僻地へきちにあるのでしょうか? 街とか城とかに置けば良いのに、どうしてそれをしないのですか?」とミネルヴァは疑問した。


 ハルトは両肩を上げて、腕を広げる。


「さぁーまぁ予想だけど、恐らく、敗軍の王族か貴族あたりだろうね。そうじゃあなければ、こんな場所になんかに置かねぇよ」


 ミネルヴァはそれに納得したのか、石像の前で跪いてお辞儀する。


「――――ソリアの花を少しだけ分けて下さい」


 そう言うとミネルヴァはソリアの花を摘み取る。ハルトの目の前には黄金に輝く装飾品が供えられている事に気がついていた。が、それを取ろうとはしなかった。どうやら、気が引けたようだ。ミネルヴァはある程度のソリアの花を摘み取ると、立ち上がり、石像に対して、再び一礼をしたのであった。





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 ヨハンネの前にソリアの花がミネルヴァの手から差し出された。ヨハンネは思わず凝視する。絶滅していたと思っていたソリアの花が目の前にある。それもたくさん。それは紛れもない証拠である。ヨハンネは嬉しくなりニコッとした。


「二人とも、ありがとう!」


 それにミネルヴァは少し、嬉しそうな素振りを見せる。ハルトはミネルヴァの背中しか見ていなかったので彼女がどんな表情をしたのかわからなかった。


「ご主人様。実はこの花の種も拾って来ました」


 そういうと、小さな麻袋の口に結んだ紐を緩めて、ヨハンネに中身を見せる。


(―――――――いつの間に、取ったんだよ…)


 ハルトは心の中でツッコミを入れた。ヨハンネは中身を確認した瞬間、目を輝かせ、ミネルヴァの手を両手で包む。


「おぉッ!! 凄い!!! こ、これを庭に植えたらどれだけ綺麗な事だろうね?! じゃあ今度、一緒に植ないかい?」

「え、わ、私とですか?!」

「う、うん。そうだよ?」


 ヨハンネが当然でしょ、とそう言うとミネルヴァがなぜか頬を染めた。


「はい。ご主人様。二人で!!」


 ミネルヴァは声音を強めてそういうと、ヨハンネへ一歩前に近づく。唇と唇が触れそうなぐらいに近くに。それにヨハンネは優しく微笑む。


「えぇーあーあの……おいらは……? 無視? 放置なんですかね?」


 盛り上がる二人の後ろでそうつぶやいたハルトの声は誰にも届かなかった。

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